消防士になるには?試験内容について最低限知っておきたいこと

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火災の現場で消火活動や救助を行う消防士。
あの姿に憧れて消防士を目指す人も少なくないでしょう。

消防士は警察と同様に「公安職」と呼ばれ、治安維持のために従事する公務員です。
どちらも体力が勝負の仕事と思われているのですが、実際になろうと思うと筆記試験の勉強をしっかりとしなければならず意外と大変です。

また、消火活動や救助だけが仕事ではない、ということも知られていないのではないでしょうか。

ここでは、消防士になるための試験について到底すべて紹介することはできませんので最低限知っておきたいことについてご紹介します。
これから消防士を目指す方はぜひ参考にしてみてください。

1 消防士になるには公務員試験に合格しなければならない

消防士(消防官。正確には「消防吏員」)が普段消防署で勤務しているということはご存知かと思います。
その消防署は市町村の組織だということは意外と知らない人も多いのではないでしょうか。

市町村の組織ということはつまり消防士は「地方公務員」であり、消防士になるには地方公務員試験に合格しなければならないのです。

地方公務員試といっても、試験自体は各自治体で行われているので、そこで行われる消防士の採用試験を受験し、合格すれば消防士となることができます。

例えば、千葉市の消防士になりたければ千葉市が実施している採用試験の消防士区分を受験します。これはさいたま市でも名古屋市でも神戸市でもどこでも同じです。
東京都だけは市町村ではなく、「東京消防庁」という都の組織の採用となり、稲城市と島しょ地域を除く東京都全域での消防防災業務を担っています。

また、自治体によっては、「広域事務組合」「消防組合」で採用を行っているところもあります。
それぞれ「組合」とついていることから、複数の自治体が共同で業務を行っている組織をいいます。1つの自治体が単独で行うよりも複数の自治体が共同で行うことで財産面や効率面で効果的な場合にこうした形で運用されます。実際には規模の小さい市町村が行っています。

いずれの自治体においても採用試験を受験し合格することで消防士として活躍できるということをここでは抑えておくとよいでしょう。

※総務省の「消防庁」では消防士を採用していない

東京消防庁と似た名称のものとして「消防庁」というものがあります。
これは総務省の組織であり国の機関です。ホームページを見ると「総務省消防庁」とされており区別できるようになっていますが、総務省の消防庁では消防士の採用は行っていないので注意しましょう。

2 消防士試験を受ける前に「受験資格」の確認を!

消防士になるには公務員試験に合格しなければならないのはわかったから勉強しよう!と思っている方。少しお待ちください。
試験を受ける前に、そもそもあなたが受験できるのかどうか(受験資格)を確認しなければなりません。
受験資格がなければ消防士になりたくてもなれません。ここでは試験勉強をする前に知っておくべきことをご説明します。

2−1 受験資格とは?

消防士になりたいと思っても誰でもなれるわけではありません。まずは受験案内で「受験資格」を確認するようにしましょう。

受験資格として定められているもので注意が必要なのは「年齢制限」「身体要件」です。それぞれについて解説していきます。

・年齢制限に引っかかると受験できない

年齢制限は自治体によって多少の差はあれど、おおよそ21〜30歳くらいまでとしているところが多いです。

ちなみに、この年齢制限については採用区分によって定められています。
採用区分というのは、例えば東京消防庁の場合、「1類」「2類」「3類」と分類されており、それぞれの区分ごとに採用試験が行われます。

ここでいう1類、2類、3類というのが採用区分であり、自治体によっては「上級」「中級」「初級」としているところもありますが、それぞれに年齢制限を設けています。

東京消防庁ではそれぞれの区分ごとに以下のような年齢の要件を設定しています(平成28年度試験)。

1類 ・昭和62年4月2日から平成7年4月1日までに生まれた人
・平成7 年4月2日以降に生まれた人で、学校教育法に基づく大学(短期大学を除く)を卒業している人(平成29年)又は同等の資格を有する人
2類 昭和62年4月2日から平成9年4月1日までに生まれた人
3類 平成7年4月2日から平成11年4月1日までに生まれた人

これらはつまり、1類は大卒、2類は短大卒、3類は高卒の人たちを採用しようとしていることがわかります。
実際に試験によっては「大卒程度試験」「短大卒程度試験」「高卒程度試験」と言われたりしますが意味は同じです。

ちなみに、消防士に限らず公務員試験において「程度」としているのは必ずしも大卒や高卒である必要はありません。これは問題のレベルの目安であり必要な学歴ではない、ということは知っておくと良いでしょう。
そのため、高卒の人でも年齢の要件さえ満たせば受験できるのです。

消防士試験で課せられる教養試験は内容が高校で学習する内容なので大卒レベルというと語弊があるかもしれませんが、要は大卒レベルのほうが問題が難しいと思っておくとよいでしょう。
文章理解の文章量が多かったり、数的処理の条件が複雑だったりと求めらえるレベルは高くなる傾向にあります。

このように、採用区分においては要件さえクリアすればいいのですが、逆にいうと年齢制限に引っかかってしまうと一切受験することができなくなってしまいますので、まずは案内でそもそも自分が受験できるのかどうかを必ず確認するようにしましょう。

・身体要件も要チェック

身体要件は消防士ならではのチェック項目といえます。
消防士は肉体的な仕事であり、不規則的な勤務であることから以下のような「身体要件」が定められています。これは他の行政系の公務員では見られない特徴ですので、注意が必要です。(以下は東京消防庁の場合であり2次試験で検査【平成28年度試験】)

・身長…<男性>おおむね160cm以上<女性>おおむね155cm以上
・体重…<男性>おおむね50kg以上<女性>おおむね45kg以上
・胸囲…身長のおおむね2分の1以上
・視力…0.7以上かつ一眼でそれぞれ0.3以上であること(矯正視力含む)。赤色、青色及び黄色の色彩の識別ができること
・聴力…正常であること
・肺活量…<男性>おおむね3,000cc以上<女性>おおむね2,500cc以上

身長や体重について「おおむね」となっているのは、必ずしもこれらを満たしていなくても前後1cmや1kg以内ぐらいであれば誤差とする、ということです。
他の項目に「おおむね」と入っていないのは、必ずその条件は満たさなければならないということなので要注意です。

以上のように消防士になるためには必ずクリアしなければならない受験資格がありますので、まずは希望する自治体の採用案内で確認してください。
クリアしていることが確認できたら次に筆記試験の勉強を始めましょう。

3 試験内容について

受験資格があると確認できたら試験内容を見ます。

消防士の採用試験では「教養試験」「論文試験(作文試験)」「体力検査」「適正試験」「面接試験」といった試験が実施されます。
自治体によって内容は様々ですが、概ねこれらの中から組み合わせてで出題されます。以下でそれぞれの詳細を見ていきましょう。

3−1 教養試験

教養試験は5つの選択肢から正しいもの、または間違っているものを選ぶ「五肢択一式」で行われます。
すべての自治体で実施され、一定以上の得点を取れないと二次試験に進むことができません。

出題される科目は以下のとおりです。

【一般知能分野】
・文章理解(現代文・古文・英文)
・判断推理
・数的推理(数的処理・判断推理)
・資料解釈

【一般知識分野】
<社会科学>
政治、経済、社会、法律
<人文科学>
日本史、世界史、地理、思想、文学・芸術
<自然科学>
数学、物理、化学、生物、地学

高卒試験・大卒試験いずれもこのように教養試験では多くの科目が出題されます。いずれも高校で学ぶ内容ですが科目数が多いため過去に勉強しなかった科目も対策が必要となり大変です。
特にこれまで受験勉強などをしてこなかった人にとってはとてもハードルの高い試験となるでしょう。

受験する自治体や試験によって出題科目や科目ごとの出題数が異なります。しかし、その差は小さいものであり、重要な科目は共通しているため、文章理解や数的処理などの出題数が多い重要科目をしっかりと対策し全体的にまんべんなく得点できるようにすることが大切です。

また、試験日については、一次試験日で大別すると、大卒程度の試験は「A日程(6月下旬実施)」「B日程(7月下旬実施)」「C日程(9月中旬実施)」となりC日程で実施される自治体が最も多くなっています。
また、政令指定都市はA日程と同日、東京消防庁は独自の日程で行っています。(※政令指定都市とは、札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市の20市をいいます)

公務員試験は試験日さえ被らなければ併願可能です。そのため、できれば少しでも合格の可能性を上げるため併願することをおすすめします。

なお、すべての自治体が採用を行っているわけではありませんので、志望している自治体がどういう状況なのか事前に確認するようにしましょう。

・独学で勉強をする人はレベルにあった問題集を選ぼう

これから教養試験の勉強を始める方は予備校に通うか独学で勉強するかのどちらかだと思います(通信もいるかもしれませんが少数なのでここでは割愛します)。

もし独学で勉強を進めるのであれば問題集選びに注意が必要です。

公務員試験対策の問題集の定番といえば「スーパー過去問」「クイックマスター」です。
しかし、これらの問題集は基礎がそれなりにできている人が問題をこなしていくためには有効的ですが、まだ基本も分からない状態で取り掛かるのは時間の無駄といえます。
というのも、こうした問題集は問題は豊富ではあるものの、その分解説が親切ではないためいきなり取り掛かるには敷居が高すぎるのです。

まずは基本的な参考書から始め基本を理解しましょう。その上で、一通り学習したら「消防士専用」の過去問題集を使うようにしましょう。国家公務員や地方上級試験対策のものではレベルが高く無駄な時間を使ってしまうことになりかねません(消防士試験は公務員試験の中では易しめです)。

自分が受ける試験のレベルにあった問題集を使うことが重要ですので、以下のような消防士の試験に特化したものを使うようにしましょう(クイックマスターは警察官試験向けですがレベルは同様なので対応可能です)。

[大卒程度]警察官・消防官 新スーパー過去問ゼミ 数的推理 改訂版
[大卒程度]警察官・消防官 新スーパー過去問ゼミ 数的推理 改訂版

警察官試験テキストゼロからはじめる! クイックマスター 社会科学 第2版
警察官試験テキストゼロからはじめる! クイックマスター 社会科学 第2版

3−2 論文試験(作文試験)

消防士の試験では論文試験(作文試験)も行われます。
論文試験は大卒程度、作文試験は高卒程度の試験で実施されるのが一般的で、試験時間は60〜120分、字数は800〜1200字程度という形式が多いです。
論文と作文に厳密な違いはそれほどありませんが、作文試験のほうが日常的で平易な課題で書く字数も少なめであることが多いです。

論文試験(作文試験)は課題に対する思考力、表現力、文章構成力などの試験を見るための試験であり、主に消防士としても心構えや、災害などの現状に対する認識や意見などについて論述します。
時間は60〜120分、字数は800〜1200字程度という形が一般的です。
東京消防庁の平成27年度の採用試験ではそれぞれ以下のような内容で出題されています。

Ⅰ類
「住民の防災への意識を高めるための現状の課題をあげ、消防職員としてのどのような取り組みが必要か、あなたの考えを述べなさい。」

Ⅱ類
「消防職員として働く上で信頼関係の重要性をあげ、信頼関係を築くためにあなたはどう取り組んでいくのか述べなさい。」

Ⅲ類
「あなたが目指す信頼される消防職員像について述べなさい。」

大卒程度試験では課題があり、それについてあなたがどう考えているかを問われることが多く、高卒程度試験では自分が普段どう考え消防士として何ができるか(したいか)を問われる傾向にあります。
高卒程度試験のほうがやや抽象的な課題が多いため、自分自身の経験や考えなどを洗い出して整理するとよいでしょう。

対策としては、ある課題を設定し(他の自治体の過去問でもいいです)、時間を測り実際に手を動かして書くことが重要です。解説だけ見て分かった気になっても実際に書こうとしても筆が進みません。必ず自分で書いてみるようにしてください。

そして、自分が書いたものを第三者に見てもらい添削をしてもらうことも重要です。人に見てもらうことで自分では気づかない内容を指摘してもらえるため、予備校などを活用してみるとよいでしょう。

なお、論文試験は「900字程度」というように字数の指定があります。これよりもあまりに少ない場合(できれば8割以上)は足切りとなってしまい、それだけで不合格となってしまうので注意しましょう。

3−3 体力検査

体力検査は一次試験または二次試験で実施されることがほとんどです。中には教養試験の成績で受験できるかどうか決まってしまう自治体もあります。
前述のように、消防士は体力仕事であり勤務も不規則になることから、職務に耐えられるかどうかが見られます。

内容としては垂直跳びや立ち幅跳び、握力、上体起こし(腹筋)、反復横跳び、持久走、シャトルランなど種目は様々です。
体力検査は受験案内に実施される種目が載っているので、事前に確認し普段から走りこみや腕立て伏せなど行い体力をつけておくようにしておけば大丈夫でしょう。

3−4 適正検査

適正検査とは、消防士として職務を行う上での適性があるかどうかを見るもので、性格検査や適正試験の名称で行われることもあります。実施しない自治体もそれなりにあるので採用案内で確認をしてください。
適性検査はクレペリン検査Y-G検査と呼ばれるものが課されるのが一般的です。

・クレペリン検査・・・たくさん並んだ1桁の数字を隣り合う数字をその答えの1の位を答えていくというものです。たとえば、「2+7+6=15」となる場合は15の一の位である「5」が答えとなります。これにより作業の能率や正確性を計ります。

・Y−G式性格検査・・・自分の性格や行動に関する120項目の質問に「はい」「いいえ」「わかりません」のいずれかで答えるものです。似たような試験を受けたことも多いかと思いますですが、これにより大まかな性格の特性の分類を行います。

適正検査は特に対策は必要ありませんので、正確に答えることを心がけましょう。

3−5 面接試験

面接試験は教養試験や論文試験では見ることのできない人物像を評価するために行われます。二次試験で実施されるのが一般的であり、すべての自治体で実施されます。

受験者1人に対し面接官が複数人で行う「個別面接」、受験者数人で行う「集団面接」、そして受験者数人である課題についてディスカッションを行う「集団討論」のいずれか、もしくは組み合わせによって行われます。

「なぜ消防士になりたいのか?」「自己アピールをしてください」「今まで何かスポーツはしてきましたか」「そこで大変だったことはなんですか?」「それを乗り越えるために工夫したことはなんですか?」といった内容がよく聞かれます。
これらは一例に過ぎませんが、重要なのは情報収集と自己分析を行うことです。

消防士がどういう仕事をしているのか、どのような組織があるのかについて情報を集め、なぜ消防士になりたいと思ったのか、消防士になって何がしたいのか、といったことを分析することで自分なりの回答を作ることができます。

本やネットの情報をいくら寄せ集めても、あなたが消防士を志す理由や過去の経験はあなたしか分からないはずです。回答例をそのまま言うのではなく、あなたの言葉で回答することで面接官に熱意を伝えることができるのです。

面接対策はしっかり行おう!

面接試験は最終的に合格できるかどうかのカギとなっておりとても重要な試験です。教養試験をパスし、いくら他の試験で得点できたとしても面接試験で失敗してしまうとそれまでの苦労が水の泡となってしまいます。
公務員試験全般に言えることですが、近年は特に人物重視の傾向となっており、いくら筆記試験が良くても面接で失敗して不合格になってしまう人がとても多いのです。

以下は平成28年度横浜市採用試験の消防区分の配点です。

二次試験に実施される面接の配点の高さが分かるかと思います。
横浜市では教養試験は足切りに過ぎず、二次試験では410点満点のものを40点満点に換算されてしまいます。そして面接では300点という配点があるのでいかに面接が他の科目と比べて重要かがわかるでしょう。
つまり、いくら教養試験や論文試験で高得点を取っても面接で逆転される可能性はいくらでもあるということです。

とはいえ、教養試験に合格しなければそもそも二次試験すら受験できないので、一次試験までは教養試験の勉強をしっかりと行い、一次試験終了後すぐに面接対策を始めるようにすることをおすすめします。

5 まとめ

消防士の採用試験は体力仕事とはいえ公務員試験である以上、一定の学力が求められます。
兎にも角にも教養試験をクリアしないことには先に進めませんので、「楽勝でしょう」とは思わずしっかりと対策をしてください。

そして面接対策も重要です。対策は不要だとは考えず、情報収集や自己分析をしながら本番に向けてトレーニングを行っていきましょう。

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