元大手予備校講師が教える公務員試験の法律科目の完全攻略法

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公務員試験において法律科目は出題数も多く重要科目であることはご存知のとおりかと思います。
また、労働法や商法のようなマイナー科目については手をつけるべきかどうか迷う方も多いのではないでしょうか。

この記事では法律科目(憲法・行政法・民法・労働法・商法・刑法)の学習方法や科目の選択についてお伝えします。
行政・事務職の試験は科目も多いことからやるべき科目、捨ててもいい科目を知り、あなたが対策すべき方法を知りましょう。

1 公務員試験の法律科目

1−1 各試験の専門科目

公務員試験(行政・事務等)では専門科目の1分野として法律科目が出題されます。例年の各試験の出題科目(専門)は以下の通りです。

国家公務員試験

■国家総合職(H28大卒程度・法律区分)
(択一式:1次試験)
必須:憲法7、行政法12、民法12の計31題
選択:商法3、刑法3、労働法3、国際法3、経済学・財政学6の18題から任意の計9題解答

(記述式:2次試験)
次の5科目から3科目選択
憲法、行政法、民法、国際法、公共政策

■国家一般職(H28大卒程度・行政)
(択一式)専門16科目・各5題から8科目=40題を選択
憲法、行政法、民法(総則及び物権)、民法(債権、親族及び相続)
政治学、行政学、ミクロ経済学、マクロ経済学、財政学・経済事情、経営学、
国際関係、社会学、心理学、教育学、英語(基礎)、英語(一般)

■裁判所職員(H28一般職)
(択一式)
必須:憲法7、民法13
選択:刑法10又は経済原論10 ※当日選択可

(記述式)憲法1

■財務専門官(H28)
(択一式)
必須(2科目28題解答)憲法・行政法、経済学・財政学・経済事情
選択(次の8科目・各6題から2科目=12題選択)
民法・商法、統計学、政治学・社会学、会計学、経営学、英語、情報数学、情報工学

(記述式)次の5科目から1科目選択
憲法、民法、経済学、財政学、会計学

■国税専門官(H28)
(択一式)
必須(2科目16題):民法・商法、会計学
選択(次の9科目・各6題から4科目=24題選択)
憲法・行政法、経済学、財政学、経営学、政治学・社会学・社会事情、英語、商業英語、情報数学、情報工学

(記述式)次の5科目から1科目選択
憲法、民法、経済学、会計学、社会学

■労働基準監督A(法文系)
(択一式)
必須:労働法7、労働事情5
選択(次の36題から28題選択)
憲法、行政法、民法、刑法16、経済学、労働経済・社会保障、社会学20

(記述式)
労働法、労働事情

地方公務員試験

■東京都特別区(H28Ⅰ類事務)
(択一式)
55題中40題選択解答(各科目5題出題)
憲法、行政法、民法①(総則・物権)、民法②(債権・親族・相続)、ミクロ経済学、マクロ経済学、財政学、経営学、政治学、行政学、社会学

■東京都庁(H28Ⅰ類B・行政一般方式)
(記述式)10題中3題選択解答
憲法、行政法、民法、経済学、財政学、政治学、行政学、社会学、会計学、経営学

■地方上級(全国型) 必須40題
憲法4、民法4、行政法5、刑法2、労働法2、
経済学9、財政学3、政治学2、行政学2、社会政策3、国際関係2、経営学2

■地方上級(関東型)50題中40題選択
憲法4、民法6、行政法5、刑法2、労働法2、
経済学14、財政学4、経済政策1、政治学2、行政学2、社会政策3、国際関係3、経営学2

注意①:地方上級試験では問題が公表されていないため受験者情報に基づいています。実際の出題数と異なることもあり、また年度によっても出題数が若干異なります。

注意②:地方上級では上記の他、中部北陸型、全国変形型、関東変形型、独自型などと呼ばれる様々なタイプで出題されています。したがって各自治体の受験案内で必ず確認することが必要です。

1−2 刑法・労働法・労働法・商法の考え方について

1−1で見たように、いずれの試験も憲法、民法、行政法の出題数が多く、法律科目の主要科目といえます。公務員試験の場合は併願することが多いと思うので、まずはこの3科目は全力で取り組んで下さい。

刑法について

刑法についてみてみます。
裁判所事務官はその職種性から、行政法の代わりに刑法が出題されます。
しかし、刑法の代わりに経済を選択することもできます。公務員試験では経済も主要科目の1つになりますので、裁判所事務官でもあえて刑法を勉強せずに経済で受験することも可能ですし、実際に経済を選択する受験生も多いです。

刑法で問題なのは地方上級です。独自型をとる地方自治体では刑法を出題しないことが多い一方で、全国型や関東型ではたった2題だけ出すというパターンになっています。この2題のためにどれだけ力を費やすかは4−3で後述します。

労働法について

労働法については、労働基準監督 Aを受験する場合はそれを中心に勉強することになります。しかし、労働法を出題する試験は他には、地方上級で2題出題される程度です。

そもそも労働基準監督官を志望する受験生は、労働法の負担からそこが本命の場合が多いと思うので、割り切ってしっかり勉強してください。しかし,労働基準監督官を受験せずに労働法の出題される地方上級を受験する場合については、4−1で後述します。

商法について

商法については、国税専門官で必須問題となっていますが、実は問題数は例年2題程度しか出題されません。この2題をどうするか、4−2で後述します。

なお、国家総合職(法律区分)の択一の選択科目は公務員試験ではいわゆるマイナー科目ばかりです。しかし基本〜標準レベルも出題されますので、万遍なく学習し取りこぼしのないようにする必要があります。大学での履修状況や取組みやすさを考えて、早めに科目をしぼりましょう。
また、記述式はかなり高度な長文形式で出題されます。こちらも早めにどの科目で受験するかを決めて学習してください。法科大学院の入試と司法試験の中間くらいのレベルだと考えるとよいでしょう。

2 憲法は満点を目指すが落とし穴に注意

公務員試験の憲法は1番簡単と感じる受験生が圧倒的に多いです。学問的には非常に難しい科目ですが、公務員試験の範囲に限ると、たしかに専門科目の中で1番学習しやすく得点源になるのは間違いありません。
なので、満点を目指して完璧を目指して学習して下さい。

勉強方法として、基本書を読まずに最初から過去問を解きまくる!という受験生もいますが、これでは遠回りになります。

憲法は他の専門科目と異なりボリュームが少ないので、予備校のテキストや受験用の参考書をひととおり学習してから過去問を解くようにしてください。

まず憲法は、①人権編と②統治編に分かれます。①人権編では判例の理解、②統治編では条文の暗記が学習の中心となります。

①人権編
人権の主要判例は数が限られており、同じ判例が全ての試験種で繰り返し出題されています。たとえば薬事法事件や小売市場事件、第三者所有物没収事件など。

ただ、主要判例はだれもが知っているため、結論(合憲/違憲)だけでは解答できず、なぜその結論に至ったかの判断基準を問う形式が多くなってきます。その際、問題文では判決文を抜粋して出題してくるので、判決の言い回しに慣れましょう。

判決文を詳細に読む必要はありません。抜粋部分は限られるので、過去問を繰り返し読んで慣れてしまいましょう。

近年は重要な判例も続いています。たとえば国籍法違憲判決、非嫡出子法定相続分違憲判決など。まだ過去問が非常に少ないですが、今後も繰り返し出題されるので、過去問集の解説をていねいに読み込んでおきましょう。模試でも出題されるので、正解したとしても解説は読んでおきましょう。

また、人権では人権規定の背景や理解を問うものも多くなっています。特に地方上級と裁判所事務官がその傾向が強いので意識しておいてください。
たとえば、「生存権には、社会権的側面があるが、国民が自らの手で健康で文化的な最低限度の生活を維持する自由を有し、国家はそれを阻害してはならないという自由権的側面が認められることはない」(H27特別区)という選択肢は、生存権の性質について問うています。

これは間違い肢です。生存権が社会権というのは初学者でも知っている常識です。では自由権的側面もあるのか?そもそも社会権的側面と自由権的側面の違いとはなんなのか?といったことは基本的に知っておかなければなりません。
(もっとも、この問題では別の選択肢が超易問だったのでほとんどの人が正解したと思います。)

このように、憲法は簡単!と思えるようになったら、次は一歩すすんで、上記のような選択肢も過去問を通じて理解できるようにしておいてください。ここまでして初めて満点が見えてきます。

②統治編
統治では条文がそのまま出題されることがよくあります。特に国会の分野が頻出なので、その部分の条文はなんども繰り返し目を通して、数字などを覚えておきましょう。国会は、教養科目でも出題されるので統治編でも最重要になります。

つぎに統治では学説もよく出題されています。しかし学説といっても、統治の分野では出る学説が限定されているので、決しておそれる必要がありません。たとえば国政調査権の法的性質であったり、地方自治の法的性質の学説がありますが、同じ学説が何度も繰り返し、ほぼ同じ言い回しで出題されています。過去問を2、3回解けば完璧に得点できるでしょう。

統治で気をつける点は、条約や予算、地方自治といった分野です。国会・内閣・裁判所については頻出分野であり過去問も多いのでほとんどの人が正解してきます。

しかし、条約、予算、地方自治はテキストでも後半に記載されており手を抜いてしまう受験生がいます。テキストによってはかなりあっさりとした解説しか無い場合も多い。その結果、憲法で満点をとれなくなるわけですが、この後半部分も大事な分野ですから、ていねいにテキストを読み込み,過去問も後回しにしないようにしましょう。

3 行政法は最初の苦痛を耐えれば得点源になる

公務員試験では行政法を苦手としている受験生が結構います。しかし行政法は多くの試験で5題前後出題されており、絶対に苦手科目にしてほしくない科目です。同じく出題数の多い民法は、範囲が広いうえに試験種に関係なく難問がよく出題されます。そのためどんなに民法が得意でも満点をとれる保証がありません。だからこそ、行政法でできるだけ得点を稼いでおく必要があるのです。

ところで「行政法」という法律はありません。いわゆる行政法は、①行政組織法、②行政作用法、③行政救済法の3つに分類されます。さらにここから各法律に枝分かれしていきます。たとえば憲法でも勉強する国家賠償法は、③行政救済法の一例です。

この時点で既に分かりにくい法律なのが行政法です。
行政法は憲法や後述する労働法のように「最初から過去問を解く」、というのは絶対にやめた方がよいです。分野ごとに全体像をつかんだうえで、過去問を問いていくことが必要になります。

予備校利用者は基本的に講義で利用している予備校のテキスト・レジュメで概要をつかめばよいです。講義→テキストで復習→該当分野の過去問を解く、というオーソドックスな学習法をくりかえして、とりあえず全講義野インプットを終わらせます。

独学者や予備校で理解できなかった人は、公務員受験生がよく利用している「新谷一郎の行政法まるごと講義生中継 第3版 (公務員試験 まるごと講義生中継シリーズ)」をざっくりと読み通して全体像をイメージすることもよいでしょう。(第3版は2016/4/11出版。※法律書は必ず最新版を購入しましょう。)

◼︎「新谷一郎の行政法まるごと講義生中継 第3版
新谷一郎の行政法まるごと講義生中継 第3版 (公務員試験 まるごと講義生中継シリーズ)
新谷一郎の行政法まるごと講義生中継 第3版 (公務員試験 まるごと講義生中継シリーズ)

ただ法学部生や、文字を読むことにあまり抵抗がない人であれば、司法試験受験生の基本書である「行政法 第4版 単行本 櫻井 敬子 (著), 橋本 博之 (著)」がおすすめです。(通称サクハシの行政法と言われています。)

◼︎行政法 第4版
行政法読本 第4版
行政法読本 第4版

「公務員受験生は基本書は使うな!」が鉄則ですが、この基本書は、読みやすいのにコンパクトにまとまっています。

①まず、よく分からないな、と思ったところは読み飛ばして、とりあえず1度ざっくりと読んでみてください(他の科目の合間に読み進めれば10日前後で読み終えられます)。

②そのあと、分野ごとに読んで→該当分野の過去問題を解く、を繰り返して過去問を一通り解いてみましょう。

③次は過去問を中心に勉強をすすめて、分からないところは基本書に戻って確認してみる。
これでかなり力がつくと思います。もちろん、この基本書に書いていないことが過去問では出題されますが、それは知識問題として割り切って過去問で暗記してしまってください。

行政法は、憲法と同様に判例が多く出題されます。といっても主要・頻出判例は決まっていますので、繰り返して出題される判例は、基本書や過去問の解説をしっかり読み込みポイントをおさえていきましょう。

行政法では憲法と異なり、日常では使わない専門用語の意味も暗記しなければなりません。これが1番の苦痛という人も多いと思いますが、覚えにくい用語はノートにメモする、テキストにラインを引くなどして、繰り返し確認して知識を定着させてください。

行政法では、ある行為を「しなければならない」のか「することができる」のかを問う問題があります。これは知っているか知らないか、です。条文の文末までしっかりと確認しましょう。適当に暗記する、のが一番の害悪になります。予備校の講義では特にこの点は注意して講義してくれるハズです。

行政法は憲法と異なり、特に最初が苦痛です。でも、この苦痛をなんとか乗り切ると、あとは一気に得点が伸びる科目です。それを信じて、最初が肝心だということを意識して学習していってください。

4 民法は頻出分野からつぶしていく

民法はどんなに得意な人でも満点をとることが難しい科目です。司法試験に合格した人でも公務員試験(地上レベル)の民法で満点をとれないこともしばしば。とにかく範囲が広いうえ、重箱の隅をつついたような条文を出題することもあります。特別区などでも、「え?こんな条文あったっけ?」というのが1、2題出題されたりします。

なので、民法では絶対に満点を目指さないこと。民法には頻出分野があります。それを順番にまず基本事項を理解しながらつぶしていくことになります。
具体的な勉強方法については、公務員試験の民法を得点するために押さえておくべきことで確認してください。

5 マイナー法律科目にも手をつける

一部の試験で、しかも2〜3題しか出題されない科目は捨ててしまいたいところですが、完全に捨てるのはもったいないです。各科目の特徴を紹介するので、各自の併願先を考えながら、ぜひ手をつけてみてください。

5−1 労働法は費用対効果が高いので捨てない

労働法が出題される地方自治体を受験する場合、たった2〜3題ですが是非基礎は押さえてください。なぜなら、条文がそのまま出るとか、過去問とほぼ同じ問題が出るとか、イメージがしやすいなど、費用対効果が高い科目だからです。

ではどうやって勉強するか。マイナー科目・刑法と異なり、体系的に学習する必要はありません。
とにかく「過去問」だけの学習でも十分に得点できます!
受験生におなじみの「新スーパー過去問ゼミ 労働法」、これ1冊でのりきれるでしょう。

◼︎新スーパー過去問ゼミ 労働法
公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 労働法
公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 労働法

その際、各分野の「重要ポイント」というページをしっかり読み込む。解説で何度も出てくる条文や知識は、ノートにメモをして復習しやすいようにしておく。
ボリュームが多いので、計画的に少しずつ、気分転換という感じで学習をすすめればいつのまにか実力がついています。

※注意:労働基準監督官の試験では記述試験もあり高度な理解が求められることもあるので、大学で使用する基本書や、予備校などのテキストで体系的に理解する必要があります。

5−2 商法は分野をしぼるor捨てる

国税専門官では必須問題として例年2題出題されています。併願先の1つとして国税専門官を受験する場合が多いと思いますが、他の行政職試験では出ない商法をたった2題のために勉強するのか、という問題が出てきます。

結論としては、この2題を捨てても他の選択科目でしっかり得点できていれば合格します。
しかし必須問題なのに捨てるのは不安な人、みんなが捨てる商法で差をつけたいという人は、まず「会社法」を学習しましょう。

そもそも商法は、①商法総則・商行為、②会社法、③手形・小切手法に分かれます。
国税では2題とも②会社法から出題されることもあれば、①商法総則・商行為+②会社法、②会社法+③手形・小切手法と組み合わされることもあります。※2題とも手形法ということもありました。
ただ、比較的②会社法から1題出題されることが多いので、まずとりかかるなら、会社法です。

しかし、会社法は非常に範囲が広いです。なので全部を完璧に、というのは公務員受験生にはムリがあります。したがって、出題頻度の高い分野から手を出していってください。
具体的には、①株式→②会社の機関(株主総会・取締役・監査役)→③設立を丁寧に学習して下さい。

なお、①商法総則・商行為と、③手形・小切手法は、会社法に比べて範囲が狭いので、過去問や模試に出てきたものだけは暗記しておくとよいでしょう。

※国家総合職を受験する場合は、捨て問にはせずしっかりと時間をかけて学習してください。

5−3 刑法を勉強すべき人、捨てるべき人

公務員受験で刑法を勉強し選択すべき人は次の人です。
「大学で刑法(総論+各論)を履修しており、裁判所事務官を受験する人」

刑法は学説も多く、理解が求められる科目です。出題分野も広く、公務員受験でも万遍なく出題されます。費用対効果の悪い科目なので、裁判所事務官を志望する人でも、刑法の学習をしたことのない人は経済で受験した方がよいでしょう。

刑法が出題される地方上級を受験する人は、捨て問にしてしまってもよいでしょう。そのかわり、4−1で前述したように、労働法で得点できるようにしてほしいと思います。

いや、それでも刑法も勉強したい!1題はとりたい!という人は、イメージしやすい刑法各論に手をつけてみてください。詐欺罪、窃盗罪、強盗、傷害罪などは頻出度が高く、過去問の解説程度の理解+暗記で得点できることも十分あります。また各論の場合は、判例を素材にした事例問題も多く(しかもお同じ事例がよく出題されます)、イメージがしやすく楽しく学習できるような科目になります。

裁判所事務官・総合職以外では、「基本書」なるものは手にとらないようにしてください。

6 まとめ

公務員試験(行政・事務)では法律科目も経済科目も勉強する必要があり、科目数が多いうえに難易度も大学の学部試験より高いことがあります。受験生にとってかなり負担になるのは間違いなく、途中で挫折をして民間の就活に切り替えてしまう人もたくさんいます。まずは、その長い受験生活を耐えることが合格への第一歩です。

さらに、完璧を目指すと自滅します。だからといって、やみくもに捨て科目・捨て分野を作っても合格できません。
これまで述べてきたように、それぞれの科目の特徴を知ってメリハリをつけて学習をすすめていきましょう。

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