薬剤師の公務員を目指す際に知っておきたい基本情報 | ASK公務員 - 個別指導/論文・面接カード添削の公務員試験対策塾

薬剤師の公務員を目指す際に知っておきたい基本情報

  • 2017年8月17日
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ASK公務員 編集部
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薬剤師で公務員を目指す人の中には、大学を卒業してすぐに公務員になりたいと思っている人だけでなく、現在病院や薬局などの民間の機関で働いていて何となく公務員になりたいと思う人さまざまかと思います。

しかし公務員になってもどんな仕事をするのだろう、給料はいいのかな、など気になる部分は多いのではないでしょうか。

薬剤師の仕事と言えば病院や調剤薬局で調剤・服薬指導などの業務を行ったり、製薬会社などで新薬の研究をするのが一般的ですが、公務員は公務員ならでは仕事があります。また、給料は民間に比べて低かったりするなど事前に知っておくべきことは多々あります。

この記事では薬剤師が公務員になった場合、どのような仕事をするのか、給与はどうなのか、また公務員試験対策についても解説していきますので、薬剤師の公務員として活躍したいと考えている人は参考にしてみてください。

薬剤師の公務員として活躍できる場所と仕事内容

国家公務員(薬系技術職員)

国家公務員の薬剤師は厚生労働省を始めとした中央省庁で総合職として働くことになります。
業務内容はとても幅が広く、医薬品・食料品の安全を守る部署、麻薬の取り締まりを行う部署、健康保険に関する部署、医薬品の開発に関する部署など様々な部署があります。
詳しくは厚生労働省の資料を参考にしてください。
(参考:http://www.mhlw.go.jp/general/saiyo/kokka1/kokka1-yakugaku/05.pdf
http://www.mhlw.go.jp/general/saiyo/kokka1/kokka1-yakugaku/06.pdf

どの部署でも基本的に企画立案や監査などの事務仕事を行うことになります。
調剤業務など実際に薬を触る仕事はないため、薬剤師らしい仕事とは程遠いかもしれません。現場での仕事より、大きな仕事をしたい方に向いているといえるでしょう。

薬の知識だけでなく、法律や化学の知識などかなり幅広い知識が求められるため、常日頃の勉強は欠かせません。
国全体に影響力のある責任重大な仕事なので、やりがいは大きいでしょう。

ちなみに異動は全国各地になります。
厚生労働省だけでなく、他の省庁の機関へ出向となることもあり、出向先によっては海外赴任となる場合もあるようですので転勤が苦とならない方やアグレッシブに仕事をしたい方には向いているかと思います。

地方公務員

都道府県や市区町村といった地方公務員の職員になった場合、配属される可能性の高いのが衛生部局(保健所など)か環境部局(環境関係の部署)です。

ただし、自治体によっては採用枠や配属先の種類が異なるため、ここに挙げているものが必ずしもすべての自治体に該当するとは限りません。また、仕事の内容も多少異なることもありますので自分の志望する自治体のホームページなどで薬剤師としてどのような職場に配属されどのような仕事を行うのかを確認することをおすすめします。

また、特定の部署に希望して受験するのではなく、いずれも都道府県や市区町村に採用されたあと、異動先としてこれらの職場に配属されることになります。そのため、どこに配属されどのような仕事を任されるかは採用されるまではわからないということに注意しましょう。

以下では地方公務員として採用された際、配属される可能性のある部署での仕事について説明していきます。

保健所

保健所で行う薬剤師の業務は大きく分けて3つあります。

1、薬事衛生に関する業務
薬局に対しての立ち入り検査、薬局立ち上げの認可などを行います。
また、麻薬取締りも担当し、薬物乱用防止の啓発活動、指導などを行っています。

2、食品衛生に関する業務
飲食店の立ち入り調査、新店舗の認可や、管理栄養士などに対して食中毒予防に関する指導などを行います。

3.環境衛生に関する業務
多くの人が利用する施設(美容院、公衆浴場、プール、旅館)などの監査・認可を行います。
その他、動物や水からの伝染病を防ぐための衛生管理、廃棄物処理に関する指導・監視なども行っています。

調剤などの薬剤師らしい業務はなく、許可・監視などの行政仕事がメインとなります。
お店などに指導する立場になるため、嫌われ役となりがちですが、地域の安全を守る大事な仕事です。

環境関連部署

大気汚染対策や騒音対策、土壌汚染など環境対策に関する仕事を行います。

大気汚染対策や騒音対策については住民から問い合わせや苦情が来た際に測定を行うなどし対応を行います。
また、クリーニング店や美容室、公衆浴場といった特定の施設や工場を建築する場合は事前に自治体に申請を行う必要があるため、職員は振動や騒音、大気や土壌に問題がないかを確認し認可します。

これらの仕事は事務職の職員が行うこともあるため、実際に採用された自治体によって異なる可能性があることを知っておきましょう。

衛生研究所

食品を製造しているメーカーなどの商品を検査し、それが安全なものかどうかを確認します。
また、水、医薬品、食品などについても検査を行い、細菌やウイルスを調べ、住民がそれらのものを安心に摂取できることを目標とします。

こうした調査から感染症の拡大防止や健康被害を防止のための対策を立てていくことになります。

市立・県立病院

市町村や都道府県が病院を経営している場合に配属される可能性があります。
民間病院や調剤薬局と業務的に大きな違いはなく、薬の調剤や服薬指導などを行います。

公立の病院は地方の中核病院となっていることが多く、近隣の医療機関よりもより新しい医薬品に触れやすいというメリットがあります。

公務員薬剤師の仕事まとめ

ここまで読んでいただいたら分かる通り、公務員薬剤師は公立病院での勤務以外ではほとんど民間とは異なった仕事をすることになります。

調剤や薬の研究はほとんどなく、監視や許可、調査といった事務仕事が多いです。
これらの仕事では色んな職種の人と関わる機会が多くなるため、薬剤師としてというより、人間としての見識が広くなるかと思います。

しかし、国家資格である薬剤師の知識を使う機会は配属先によってはほとんどないこともあります。
あくまで住民にとって安心で健康的に暮らしてもらうことを目的とするため、せっかく取得した資格があまり活かせず不満を感じる方も少なからずいますので、こうした仕事が自分にとって合っているのかよく考えてみてください。

公務員薬剤師の給与

公務員は基本給の他、地域手当、住居手当などの各種手当が支給され、全て合わせたものが給与となります。
大卒直後の初任給で言えばおよそ20万前後となるでしょう。これは薬剤師であっても事務職であってもあまり変わりません(院卒の場合や前職がある場合は新卒で採用された場合に比べると少し高くなります)。

公務員の基本給は「棒給表」というものに基づいて決まりますが、民間企業の給与との較差がないよう毎年見直しが行われます。
薬剤師は国家公務員棒給表のうち、医療職棒給表(二)(参考:http://kyuuryou.com/w495.html)というものを基準として基本給が決定されます。

国家公務員の場合はこの表がそのまま適用され、地方公務員の場合はこの表を参考にした、自治体の規定によって基本給が決定します(給与の考え方は複雑であるため詳しく知りたい方は公務員の給料や年収について知っておきたい基礎知識まとめを参考にしてください)。

民間の薬剤師では初任給から30万を越える場合もあり、そうしたところと比べると低めの水準と言えるかもしれません。実際に民間から転職した薬剤師は給料が下がったという話をよく聞きます。

しかし、公務員の場合は上昇幅は少ないですが昇給が毎年ありボーナスも出るため、長く勤めていれば民間の平均以上の給与をもらうことができます。

短期的に転職を繰り返す場合に公務員はあまりおすすめできませんが、公務員の薬剤師として腰を落ち着かせようと考えているならば、給料に関しては良いのではないかと思います。

薬剤師の公務員試験対策

公務員になるためには何と言っても公務員試験に合格しなければならず、薬剤師の国家試験とは違った難しさがあります。

薬剤師として公務員になる場合、受験する自治体などによって募集している職種が異なります。
薬剤師を募集している職種として、「化学」「薬剤師」「衛生監視」というように複数の職種で募集しているところもあれば、「薬剤師」として募集しているところもありますので、職種によって試験科目が異なる可能性もありますので受験要項で必ず確認するようにしましょう。

いずれの職種で受験するにせよ薬剤師も公務員になるためには、公務員試験を受けなければなりません。
「難しい薬剤師試験をパスしたのだから公務員試験など楽勝!」と思う方も多いかもしれませんが、薬剤師の試験とは異なる内容が出題されるため、改めて勉強する受験生が多いのが現状です。

国家公務員試験

薬剤師として国家公務員になる場合、国家総合職の試験を受験する必要があり非常に難関です。
筆記試験で国家公務員総合職試験に合格し、人事院面接、官庁訪問を経た上で採用が決定されます。

厚生労働省の採用ページによれば平成20~27年まで毎年5~7人程度しか採用されていません。
薬剤師免許を持つ人以外でも受験できるため、かなりハイレベルな競争を勝ち抜かなけれ合格は難しいといえるでしょう。

行われる試験は以下の通りです。

・1次試験
教養試験(選択式)
専門試験(選択式、化学・生物・薬学分野)

・2次試験
専門試験(記述式、化学・生物・薬学分野)
政策論文試験(政策について自分の意見を述べる試験)
人物試験(面接)

意外と苦戦するのが、1次の教養試験ではないでしょうか?
薬剤師と全く関係のない分野からも幅広く出題されるため、理系知識だけでは解けない問題も多いです。
政策論文試験もまた、薬剤師とは直接関係のない試験となります。
普段から政治に興味を持ち、それぞれの政策がどういう役割を持つのかを自分の中で理解できていることが重要となります。

また、国家総合職試験では27年度から外部英語試験の活用が導入され、各種英語試験(TOEFL、TOEIC、IELTS、英検)を所持している場合、点数に応じて上記試験に15点~25点のプラス加算が行われるようになりました。
合格を目指す人にとって上記の試験を受験し高得点を取っておけば有利になるでしょう。

繰り返しますが国家総合職試験は非常に難関試験であるため、公務員試験対策の専門学校に通うことも視野に入れておいた方がいいかもしれません。

地方公務員試験

先述のとおり、国家総合職試験は非常に難関試験になるため薬剤師として公務員になる場合、ほとんどが地方公務員かと思われます。

地方公務員は都道府県および市区町村によって実施要綱が異なるため自治体によってかなり試験内容に違いがありますが、一般的に実施される試験内容としては、教養試験(選択式)、専門試験(選択式または記述式)、論文試験、面接試験、適性試験などがありますが、教養試験と専門試験、面接試験についてが大半の試験で課せられることになるためこれらについて詳細に説明していきます。

教養試験

教養試験は必ずどこの自治体でも実施されるため、公務員になりたいと考えているのであれば対策は必須です。

教養試験は、以下の内容の科目が課せられます。

【一般知能分野】
・文章理解(現代文・古文・英文)
・判断推理
・数的推理
・資料解釈

【一般知識分野】
・社会科学
政治、経済、社会、法律
・人文科学
日本史、世界史、地理、思想、文学・芸術
・自然科学
数学、物理、化学、生物、地学

一般知能分野は文章理解は現代文・古文・英文などの長文読解が課せられ、判断推理と数的推理は算数やパズル的な要素がある問題であり、資料解釈は表やグラフを読み取る問題となっています。これらの科目について文章理解以外は公務員試験で初めて学習する人も多く、苦手としている人が多い科目でもあります。
しかし、どの試験でも回答必須としており出題数も多いので早めの対策が必要となります。

また、一般知識分野は社会化学、人文科学、自然科学とあり、これらは高校のときに学習する内容となります。大学受験のときにどれくらい勉強したかが出来不出来に大きく差となって現れてくるでしょう。

受験する自治体により出題科目や出題数が異なってきます。そのため、これら全てを学習する必要はなく、なるべく出題数の多いものや自分が得点しやすい科目を選択しましょう。

ただし、試験によっては与えられた問題は全問必須の場合もありますので、併願する試験とのバランスを見て選択することも重要になります。

専門試験

専門試験は物理・化学・生物、衛生、薬理、薬剤、病態・薬物治療、法規・制度など薬剤師の国家資格で出題される内容について問われることが多いです。

形式については択一式または論述式で出題されますが、自治体によって異なるためどちらの形式で出題されるかについては必ず確認するようにしましょう。

択一式の場合は、薬剤師の国家資格の勉強をしていればそれほど問題ないかと思います。
すでに資格を持っている方は受験する自治体のHPから過去の出題を見てみて、どの程度解けるか確認してみましょう。知識があり7〜8割ぐらい解けるのであれば教養試験の勉強を中心に進めていったほうが良いでしょう。

もし、薬剤師の資格を取得してから時間が経っている場合は内容について結構忘れているかと思いますので、薬剤師の資格取得のときに使っていた参考書を読み直しておき、実際に保健師の国家試験の過去問を解くことが最も良い対策となります。

教養試験もそうですが、公務員試験含めどのような試験もやはり過去問をこなすことが最も効果的です。
薬剤師の資格を取得された方はわかるかと思いますが、同じような問題が形式を変えて他の年に出題されるということは公務員試験でもいくらでもあります。

そのため、ある程度過去問をこなすことでパターンを身につけ、知識の引き出しを多く持つことで対応することができます。ただし、漫然と過去問を解いてもわかったつもりになってしまい本試験で解けないというパターンに陥ってしまうので、必ず理解しながら解くようにしましょう(不安な方は公務員試験合格に必要な正しい過去問の解き方を参考にしてください)。

面接試験

試験が比較的簡単な自治体でも難関となるのは面接試験です。
その自治体を志望した動機や自己PRといった基本的なことに加え、なぜ公務員を目指すのか、薬剤師として自分は何ができるか、といった部分もしっかりと答えられるようにしなければなりません。

公務員試験は筆記試験対策が大変なので面接対策は軽視されがちですが、特に地方公務員は人物重視の傾向となっているため、いくら筆記試験の点数が良くても面接での印象が悪いと落とされてしまうことは当たり前のようにあります。

とは言っても民間企業の面接ほど倍率は高くありませんので、予備校などでしっかりと対策をすれば十分に合格することができます。

せっかく筆記試験に合格しても面接で落とされてしまっては元も子もありません。最後まで気を抜かないようにすることが大切です。

まとめ

薬剤師が公務員になることは、公立病院以外は一般的な薬剤師の仕事とは全く違った仕事に就くと考えた方が良いでしょう。
もし、調剤や患者さんと触れあう仕事が好きであるのであれば公務員の仕事はマッチしないかもしれませんが、住民が安心に暮らせるために働きたいと考えている人には公務員はおすすめできます。

まずは自分が何をしたいのかを明確にし、本当に公務員として働きたいと思うのであればまずは筆記試験に突破できるよう勉強を進めていってみてください。

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