公務員試験でミクロ・マクロ経済学を苦手にしてしまうと大きな失点となってしまいます。しかし、これらの科目は勉強量も多く、また計算を要する問題もあり苦手とする人が多いという特徴があります。
しかし経済学はいずれの試験にも多く出題されるため、苦手なままで本試験に挑むのは合否に左右されてしまいます。
経済学は勉強方法のポイントさえつかんでしまえば苦手な方でもそれなりに得点できる科目でもあるので、自分は苦手だからと諦めるのは非常にもったいないです。また、捨ててしまうのはなおのことでしょう。
私も経済学は苦手でしたが、最終的には苦手を克服し、本試験ではある程度得点することができたのでその方法をお伝えしますので経済学に苦手意識がある人は参考にしてみてください。
この記事の目次
1.公務員試験における経済原論(ミクロ経済学・マクロ経済学)の特徴
1−1.経済原論の出題数
公務員試験において、経済原論は合否の鍵を握る科目の中の一つです。ミクロ経済学とマクロ経済学を合わせて経済原論と呼ばれますが公務員試験受験者の間では「主要五科目」とされているのはご存知かと思います。
そのため、試験勉強の中心となる科目のうちの一つとされており、経済学のできによって合否が決まると言っても過言ではありません。
2015年度の国家公務員試験の場合、出題数は以下のとおりでした。
国家一般職・・・80問中10問(選択科目)
裁判所・・・30問中10問(刑法と選択可)
財務専門官・・・76問中14問(必須回答。財政学・経済事情も含む)
このように、経済原論は専門科目の出題数の中でもかなりの問題数が出題されます。
また、地方公務員でも、特別区は55問中10問出題され、一部の地方上級試験では専門試験の40点分のうち10点を経済原論が占める出題形式の地域もあるように、国家公務員、地方公務員問わず経済原論の出題数はとても多いといえます。
ちなみに、経済原論でのミクロ経済学とマクロ経済学の出題数は、各試験においてほぼ半々となっています。
国家一般職や裁判所職員試験では経済原論を選択せず他の科目で得点することも可能ですが、地方公務員試験など各試験を併願することを考えた場合、きちんと経済原論を選択する方がよいでしょう。
こうしたことから、公務員筆記試験を突破するには一部の国家公務員試験の専願者を除き経済原論を得点することは避けては通れないと言っても過言ではありません。
1−2.頻出分野
経済原論にはそれぞれ頻出分野があり、よく出る分野については確実に得点しておきたいところです。
ミクロ経済学は、消費者理論の中では最適消費、価格弾力性、生産者理論では最適労働供給、市場理論は完全競争市場、不完全競争市場がよく出題されており、逆に国際貿易理論の分野は頻出度も低く、受験生が対策が手薄になりがちな分野です。
マクロ経済学は、やはりIS-LM分析、AD-AS分析は必ずといっていいほど出題されます。また、景気変動論においては、ハロッドドーマーはあまり出題されないのに対して、新古典派成長理論はかなり出題されています。
IS-LM分析とAD-AS分析はマクロ経済学において本当に大事な分野ですが、苦手にしている人も多いことと思います。
地方上級試験ではミクロ経済学では市場の失敗(外部効果・公共財・費用逓減産業)、国際貿易理論・政策が、マクロ経済学については、国際収支と外国為替の分野が多く出題されており、これらについては国家公務員試験ではそれほど出題されていません。
1−3.問題形式
問題形式としては、ミクロ経済学、マクロ経済学どちらにおいても、文章題(理論を問う)、計算問題、グラフを絡めた問題の、大きく三つに分かれます。それぞれについては以下のような問題が出題されます(いずれも平成27年度特別区試験より抜粋)。
次の項目でも述べますが、計算問題はパターンさえ覚えてしまえば解けますが、文章題やグラフ問題については、根本的な理解ができてないと太刀打ちすることができません。そのため経済原論の学習はしっかり理解しながら進めていかなければいけません。
3.経済学の勉強方法
ここではミクロ経済学およびマクロ経済学の具体的な勉強方法について説明していきます。苦手な人はもちろん、自分は苦手じゃないと思っている人も本番で得点するためにはこれからの内容を意識していきましょう。
3-1.「理解」して解くことを意識しよう
先述の通り、ミクロマクロを問わず、経済原論の試験は文章題(理論を問う問題)、計算問題、グラフを読み取る問題の三つの出題形式に分けられます。
出題形式に関わらず経済原論は理論や理屈を「理解」して学習を進めていくことが大事になります。
計算問題は微分さえできれ解くことができる問題も多くありますが、文章題やグラフの読み取り問題については、「なぜそうなるのか?」という理屈が分かっていないと太刀打ちできない問題が多いのです。また、理屈を知っていないと専門記述試験では何も書くことができません。
なぜそうなるのか?という理屈が分かっていないと、たとえば、ミクロ経済学で「消費者理論→生産者理論」、マクロ経済学で「IS-LM→AD-AS→IAD-IAS」と勉強を進めていくなかで、それぞれで何を言っているのかが分からなくなってき、分からないまま学習を進めていくと結局つながりもよくわからず全体的に理解することができないという悪循環に陥ってしまいます。
それぞれについて、グラフの縦軸と横軸が示すものが変わっただけで、理屈は同じであると分かることができれば、経済原論の内容はスムーズに進めることができます。
つまり、一度しっかり理解してしまえば、得点率は安定するというわけです。そのため、順当に勉強が進んでいる場合、経済原論は直前期の勉強は楽であると言われています。
「理解」しながら勉強する上で意識していただきたいのは、「グラフとリンクさせながらながら学習する」という点です。
グラフとリンクするとは、一体どういうことかというと次のような質問に答えられるかどうかがポイントとなります。
ミクロ経済学を例に挙げると、これを見ている受験生の皆さんは、ボックスダイアグラムにおける二つの曲線が交わっている箇所はどのような状態であるか、説明できますか?
無差別曲線と等生産量曲線の縦軸と横軸は何を示すか、即答できますか?
経済原論を苦手とする人は、これらの質問に即答できないと思います。これらの基本事項を自分で説明できるようになるために、おすすめの勉強方法は、グラフを白紙にゼロから書きながら過去問を解いていくことです。
たとえば、ミクロの複占についての問題を解く時に、ただ、クールノー均衡・シュタッケルベルク均衡といった用語を抑え、計算問題をただ解いていくのではなく、グラフを自分の手で書く作業も行うのです。特に、線同士が交わってる部分はどのような状態なのか?縦軸と横軸は何を示すのか?と言ったことを丁寧に抑えていきましょう。
少し面倒に感じるかもしれませんが、経済原論はグラフを理解することが重要です。専門記述対策にもなるため、グラフをゼロから書きながら理解して勉強を進めていくことが経済原論を得点するための近道になります。
3-2.問題集をこなすときに意識すべきこと
「過去問を制する者は公務員試験を制する」と、受験生時代よく言われていました。まさにこの通りだと思います。経済原論に限らず、どの科目においてもこれは当てはまります。
しかし、経済原論においては、他の科目と違いそこまで「過去問をひたすら回す」ということを意識しなくてもいいと思います。
これはつまり、過去問をある程度回すことも大事だけども、「理論が分からないまま、ただ問題集を回しても意味がない」ということなので、まずは理解をしっかりした上で問題集を回すことを意識するべきなのです。
これまでも何回も述べているように、経済原論は理論の理解が何よりも大切なので、理論が分かっていないのに問題集だけひたすら解いても、経済原論の点数は伸びないからです。
そのため、特に年内は予備校の講義をしっかり聞く、あるいはレジュメや参考書等の読み込みをきちんと行い、理解したことを自分の口で説明できるレベルにまで理解を深めることが重要となります。
予備校によっては、生講義やWeb講義を何回も無料で受けることができる場合がありますので、講義を二回聞くこともオススメです。年内に理論の理解を確実にして、年明けからは問題演習をしっかりと行えるように年内は講義やレジュメ・参考書の読み込みなどもしっかり行って下さい。
予備校に通っている方はとにかく予備校の問題集をこなすようにし、独学の方は過去問集についてはクイックマスターかスーパー過去問ゼミ(スー過去)を使うといいでしょう。
クイックマスターもスー過去も評判の高い過去問題集なのでどちらでもしっかりとこなしていけば間違いなく実力はつきますが、スー過去には載っているのにクイックマスターには載っていない問題があったりするので、広範囲をカバーするならスー過去の方が収録問題数も多いためおすすめです。
4.経済原論が苦手な人の対策の仕方
経済原論は、得意とする人と苦手とする人の差がかなり開いてしまう科目です。しかし、上記のように、経済原論はどこを受験するにせよ多く出題されます。
国家一般職などでは経済原論を選択しないという手もありますが、国家一般職は近年、学系科目(いわゆる政治学、行政学等)の難易度が上昇しており、経済原論を捨てるとなると、これらの学系科目を多く選択せねばなりません。そのため、かなりリスキーな戦略であると言えます。
私自身も受験生の時、経済原論は苦手な科目でした。模試などでは得点率が半分切ってしまうこともありましたが、なるべく苦手な人でも最低6割は得点できるようにしたいところです。その代わり、6割の得点率だと、その他の科目や教養試験でカバーしていく必要はあります。
算数や数学が苦手な人は経済原論を不得意だと感じがちで、特にミクロは微分が出てきますが、苦手意識を持たずに取り組んでいくことも意外と大事なことです(ちなみに、微分自体は全く難しくありません。苦手だと思っている人は経済原論の微分を簡単に理解する方法をご覧ください)。
また、ミクロでは生産関数・費用曲線、マクロでは乗数理論・投資理論の分野での計算問題はパターンがあることが多いので、パターンを意識して問題を演習することは大事です。
数的処理のように、問題を見てパターンがひらめくようになるぐらい問題をこなし体に覚えさせることが理想的です。
経済原論は数学的な考え方よりも、理論や原理の理解を徹底することの方が重要ですので、苦手な方はまずしっかり理論を理解をする!ここを意識して取り組みましょう。
そのためにも、最初のうちは頻出度の低い問題や、発展・応用問題には取り組む必要はありません。
これは経済原論に限らず全ての教科で言えますが、苦手な教科ではとにかく基礎を固めるために、頻出分野の基本問題をまず確実に得点できるようにしましょう。
なお、基本を固めるには予備校に通っている方はテキストをしっかりと読み込みわからない部分は講師に聞くようにすることは必須です。あまり他の参考書などに手を広げないよう利用できるものは利用するようにしましょう。
独学の方であれば、やはりわかりやすい参考書で学習を進めていく必要があります。個人的におすすめなのは最初につまずかない経済学ミクロ編、マクロ編です。全くの初学者でも理屈抜きの内容から入っていき、本試験に必要な知識を徐々に身につけていくことができます。
5.専門記述試験で経済原論を選択するべきか?
国税・財務専門官試験や東京都などでは、専門記述試験があり、その中の選択科目の一つとして、経済原論もあります。
国税・財務専門官(特に財務専門官)を第一志望としてる方は、経済学部出身の方が多く、経済原論が得意な人が多いイメージです。
専門記述の科目として経済原論を選ぶべきかについてですが、経済原論が得意な人は経済原論を選ぶ方が勉強が楽でしょう。併願することを考えると、経済原論か憲法(裁判所の試験で出題されます)の記述対策を行うのが効率が良いです。
しかし、憲法は論点を30個くらい覚えなければならず、法学部出身でないと少し大変かもしれません。また、2014年までは、国税・財務専門官の憲法記述の問題は事例問題で、難易度が高めでした。
一方で、経済原論の場合は択一の勉強で理解している知識をそのまま記述すれば良いため(答案の書き方はありますが、一度要領を掴むことができればうまく書けるようになります)、憲法の記述対策よりは、新しいことを覚える必要はありません。
ただし、択一ではあまり出題されないテーマ(ハロッドドーマー成長理論や、IAD-IAS分析など)が出題されることもありますので、それらの範囲が出題されると少し難しいかもしれませんが、択一試験対策にもなるので、マイナーなテーマは直前期に一気に詰め込むなどで対応すると良いでしょう。
経済原論が苦手な人は、しっかり理論をできていない人が多いため、そのような人は経済原論の記述問題は難しいため個人的には憲法の選択をオススメします。
経済原論の記述問題は理解していることをそのまま文章とグラフで説明できればとりあえず形にはなるので、普段の択一の勉強の時からとにかく丁寧に勉強していくことが対策となります。
頻出テーマを20~30論点抑えることができれば十分対応できるでしょう。各分野について必ず書かねばならない内容がありますので、それを記述対策用のテキストで知り、実際に自分でアウトプットしながら書いてという方法が良いでしょう。
専門記述対策については都庁の専門記述対策と科目選びのポイントについても参考にしてみてください。
まとめ
経済原論は苦手な人も多いですが、出題数が多いため捨てるのはとてもリスクが高いです。
ここで説明したやり方をしても無理な方や、一部の経済原論を選択せずに受験できる試験しか受けない人以外はしっかりと勉強をしたほうが良いでしょう。
苦手な人はまずは基本を理解することです。難しい問題は後回しにして、とにかく手を動かして、「なぜそうなるか?」をしっかりと理解しながら学習をすすめていきましょう。
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