この記事の目次
1.はじめに
公務員試験は、民間企業と同じ筆記試験を課すことも増えてきました。しかし、この試験方法による選抜は、倍率が高めですから、やはり公務員試験用の筆記試験を勉強しなくてはと考えている人も多い事でしょう(詳しくは、下記の記事です)。
そのとき、たくさんの時間を公務員試験に割いたのであれば、多くの試験種を併願しようかなと思われる人も多いのではないでしょうか。
本シリーズでは、そのような方に向けてあまり知られていない公務員試験職種をいろいろ紹介していこうと思います。第三弾は、警視庁警察行政職員です。
警視庁警察行政職員は、「事務」と「技術・技能・専門」に大別されます。後者は、通訳・土木・建築・機械・電気・心理・交通技術・鑑識技術・自動車運転免許試験官・自動車整備・保健師・臨床検査技師・体育指導などを指します。
記事の趣旨(色々な試験を公務員試験の学習で受けるため)を考えると、「事務」が叶うため、本記事は「事務」について解説をしていきます。
2.警察庁と間違えないようにしましょう
具体的に、警視庁警察行政職員の事務職について話す前に、よく間違えてしまう点を説明しておきます。具体的には、「警察庁」の事務と何が違うのかということです。
「警察庁」は、国の行政機関で、日本全国の警察を管理・運営している機関です。ここでの職員は、国家総合職や国家一般職で合格後に、官庁訪問して、警察庁から合格をもらうのが、採用の一般ルートです。
一方、本記事の「警視庁」は、東京都内の警察署を束ねる「東京警察本部」のことを指しています。したがって、愛知県なら愛知県警、京都府だったら京都府警と対応するものが警視庁といえるわけです。そして、警視庁警察行政職員は、身分としては東京都の地方公務員というわけですね。
3.仕事内容
警視庁警察行政職員の具体的な業務は、次の3部門があります。
(1)警務のお仕事
来署者や電話での問合せへの対応、犯罪統計資料の作成、表彰、行事の運営や署員への各種手当支給のための手続き事務などを行います。警察署での業務ということで、いわば民間企業における総務の役割を担う仕事です。
(2)会計のお仕事
警察署の予算執行や設備・備品の管理、遺失届・拾得届の取扱い、車庫証明などの警察手数料の徴収、署員の給与支給、福利厚生に関する事務を行います。
(3)本部でのお仕事
警視庁本部において、総務部・警務部をはじめ各部門の所属で活躍します。一般行政に関する知識・経験に基づいて、企画・経理・予算管理・情報管理・福利厚生・広報などの事務のほか、鑑定や自動車運転免許事務など様々な警察業務を担当します。
4.給料・働き方・福利厚生など
(1)給料
給料については、令和6年1月1日情報によると、大卒程度のレベルに合格して採用されたⅠ類の初任給は235,400円、高卒程度のレベルに合格されて採用されたⅢ類の初任給は192,100円です。
令和6年3月「新規学校卒業者の求人初任給調査結果」(東京労働局)によると、大卒が216,500円、高卒が189,200円ですので、それを上回っています。
また、Ⅰ類の実務2年目の年収が4,445,000円です。日本の令和5年の給与所得者の平均値が460万円ですから、もう2年目でこの額にいくのは大変恵まれているといえるでしょう。
【出典】
もちろん、「主事」→「主任」→「副主査」→「係長職」→「副参事」→「参事」とキャリアアップをしていくことで、給与も上がっていきます。
(2)働き方
最初は、警察官と同じように警察学校へ入校し研修を受けます。ただ、警察官は、Ⅰ類の場合は6か月、Ⅲ類の場合は10か月と長期ですが、行政職員は1か月です。
その後は警察署に配属され、警務や会計の実務につきます。実務をしながらも、ときどき警察学校で研修を受けスキルアップをしながら、自身の任された業務のプロフェッショナル化に励むことになります。ちなみに、1000を超える研修が用意されているため、研修は大変充実しているといえるでしょう。
(3)福利厚生
ワークライフバランスを考えて、福利厚生も充実しています。まず、休暇については、育児や介護のための休暇や年次有給休暇など約20種類もの休暇制度があります。例えば、記念日休暇が5日あったり、永年継続休暇で10年や15年永年となると3日ずつもらえたりします。
次に、警察共済組合に入ることで、いろいろな福利厚生を得られます。例えば、組合直営の「ホテルグランドアーク半蔵門」での結婚式や宿泊、各種パーティーなどを格安な組合員料金で使用できるほか、直営保養施設の「シャレー奥多摩」を格安で利用できます。その他、全国に100以上ある宿泊施設も割引価格で利用することができます。
また、警視庁職員信用組合が用意している共済・団体保険、「住宅資金」「教育資金」の貸付、財形年金貯蓄などが使えます。
5.試験内容
(1)Ⅰ類の試験内容
例年、3月上旬に申し込みがあり、4月3週目の日曜日に筆記試験があります。そして、5月末~6月最初の週に、筆記試験合格者に面接試験・身体検査・適性検査があります。
筆記試験については、一般教養試験、専門試験、論文試験で構成されます。
一般教養試験は、五肢択一式40題必答です(捨て科目などは作れないということですね)。出題科目は、文章理解、英文理解、判断推理、数的処理、資料解釈、空間概念、人文科学系(文化、歴史、地理)、社会科学系(法律、政治、経済)、自然科学系(物理、化学、生物、地学)、社会事情です。
専門試験は、10題から3題選んで書く記述式です。10題とは、憲法、行政法、民法、経済学、財政学、政治学、行政学、社会学、会計学、経営学のことを指します。
論文試験は、課題式(1,000字以上1,500字程度)です。出題例は、「あなたが困難に直面したとき、解決に向けて、どのように取り組んでいくか。これまでの経験を踏まえて具体的に述べなさい」ですので、社会的な内容というよりは、自分の知識・経験と職務につくことの関連を答える形となりそうです。
面接試験は個別面接となります。
令和4年から6年の倍率ですが、7.6→5.2→9.2ということで、なかなかの難関と言えます。しっかり準備をして臨みましょう。
(2)Ⅲ類の試験内容
例年、7月下旬に申し込みがあり、9月1週目の日曜日に筆記試験があります。合格すると、10月の2週目には、面接試験・身体検査・適性検査があります。
筆記試験については、教養試験と作文試験で構成されています。
教養試験は五肢択一45題必答ですので、Ⅰ類と同様に捨て科目はつくれません。Ⅰ類と科目はほぼ変わりません。Ⅰ類が社会事情となっているところが生活常識となっている違いがあるだけです。この科目の出題例は、情報通信技術だったので、高校の科目「情報」を大事にすると良いかもしれませんね。
作文試験も課題が与えられる方式です。字数はⅠ類より減って、600字以上1,000字程度です。出題例は、「物事を継続することの大切さについて触れ、あなたが警察行政職員としてどのように仕事をしていきたいか述べなさい」ですので、Ⅰ類と同じく、自分の知識・経験と職務につくことの関連を答える形となりそうです。
面接試験は個別面接となります。
令和4年から6年の倍率ですが、15.8→19.1→14.6ということで、かなりの難関と言えます。しっかり準備をして臨みましょう。
6.おわりに~目指すなら~
本記事では、警視庁の警察官を支え、警察行政をまわす警視庁警察行政職員を取り上げました。国家系の公務員と日程がずれていることが多いので、受験自体の併願はしやすいものの、最終合格までには、なかなかのハードルがあります。
筆記試験ではできれば7割近くとるつもりで準備しましょう。捨て科目が作りづらい構成となっていますので、早めから取りかかり、万遍なく学習しましょう。また、2次試験では、論作文の練習をきちんとして差が出る評価をもらったり、個別面接で確実に高評価となるよう仕上げたりすることが求められます。
こうした対策に向けて、具体的な動きを知りたい方は、是非、究進塾の個別相談などをご利用ください。