現在民間企業で働いている社会人の方「公務員になりたいな」となんとなく考えている人も結構いるかと思いますが、意外と「公務員=楽」だと思われているようで、今の職場がきついから楽な公務員になりたい、と思っている人もいるのではないでしょうか?
しかし、「公務員=楽」という考えは捨てるべきです。
近年は公務員への風当たりがきつくなってきており、予算も削減されるなか苦しくなるのは現役の職員です。
今回は公務員になることは果たしていいものか、そして公務員に転職するためにはどうすればいいのか解説しますので、公務員への転職を考えている人は参考にしてください。
この記事の目次
1.社会人経験者が受験すべき公務員試験とは?
まず、民間から公務員に転職を考えなければならないことは当たり前ですが、「公務員試験に合格する」ということです。
社会人が受験する公務員試験=経験者採用試験、となりがちですが、実はそうでありません。
経験者採用とは、「民間企業などで培ってきた経験や知識を業務に活かせる人材を確保するための採用方式」であり、近年、特に地方公務員では採用数が増えてきています。
とはいえ、現在社会人の方であっても、年齢が若い方や社会人経験が短い方は大卒程度試験(場合によっては高卒程度試験)を受験することをおすすめします。
もちろん、そもそも社会人経験が短くて経験者採用試験を受けられないという場合もありますが(経験者採用試験は何年以上勤務したという条件が必要です)、経験者採用試験は大卒程度試験に比べ、倍率が高く、また経験者論文や多くの回数が行われる面接など、これまでのキャリアや人物が非常に重視される傾向にあるので、非常に難しい場合が多いからです。
もちろん、そうしたものに自信がある方であれば、筆記試験が大卒程度試験よりも楽なので受験されると良いでしょう。
まずは、受験要項から条件をよく確認し、そもそも自分に受験資格があるかどうかをチェックしましょう。
社会人が受験できる試験については社会人が受験できる公務員試験の内容と採用後の待遇についてで詳しく解説していますので、ぜひ目を通すようにしてください。
2.働きながら受験する人はとにかく勉強時間を確保しよう
通常、公務員試験は大卒程度試験であれば教養試験と専門試験があり、論文試験や面接試験も実施されます。経験者採用試験は専門試験がないことがほとんどで、論文と面接だけというケースもあります。
多くの方が受験する行政系(事務職)であれば以下の科目が出題されます。(試験科目の詳細は公務員試験に出題される科目まとめ(行政・事務系)も参考にしてください)
文章理解・・現代文、古文、漢文、英文
数的処理・・数的推理、判断推理、資料解釈
人文科学・・日本史・世界史・地理・思想・文学・芸術
自然科学・・数学・物理・化学・生物・地学
社会科学・・政治・法律・社会・経済
法律系・・・憲法・民法・行政法・刑法・商法・労働法
経済系・・・経済原論・財政学・経済史・経済事情・経済政策・経営学
行政系・・・政治学・行政学・社会学・国際関係・社会政策
先にも書きましたが、経験者採用枠であれば専門科目がなかったりしますが、多くの大卒程度試験は教養試験と専門試験について20科目以上もの勉強をしなければなりません。
もちろん全ての科目を学習する必要はなく、受験する試験によって科目や出題数が異なるため、併願状況などを見極めながら選択科目を決めて学習を進めていく必要があります。
民間から公務員への転職を考えている人は、特に経験者採用枠でない場合、これらの科目を仕事をしながら勉強しなければならないということが最も大変でしょう。
公務員試験に合格のための必要な勉強時間は1000〜1500時間といわれています。これは大卒程度の場合であり、また大学受験のときにどれくらい勉強したかで大きく左右されます。
とはいえ、1年間勉強するのであれば単純に1日3〜5時間程度の勉強が必要となります。そのため、民間企業に勤めながら勉強している人の多くは、平日は2〜3時間、休日は8時間というように休みの日にまとめて勉強をする傾向にあります。
現在の職場によっては残業の有無により確保できる時間が大きく変わってくる人も多いでしょう。
毎日終電近くまで残業の方や、普段は定時近くに帰れるけれど繁忙期は遅くなるなど、普段勉強時間をどれくらい取れるかは様々だと思います。
もちろん、今の職場を辞めて勉強に専念することができればいいかもしれませんが、収入の面などを考えるとなかなか難しい人も多いでしょう。そうなると普段から「いかに勉強時間を確保するか」が重要になります。
毎日の生活を振り返ると、ボーッとしている時間や無駄にネットをしている時間が多いことに気がつくかと思います。働きながら合格を目指すためには、まずは無駄な時間を全て勉強にあてるぐらいの気持ちが必要です。
スマホでダラダラとゲームをやったりテレビを見てしまったり、付き合いで飲みに行ってしまったりと意外と無駄に時間を使ってしまっている人も多いでしょう。
例えば1日30分、そうした時間を勉強にあてると平日の5日間で2時間半にもなります。それが1ヶ月で10時間にもなるため意外とこうした時間は無駄にはできません、
また、私は電車での勉強は非常に集中できるため強くおすすめしており、通勤での電車だけでなく待ってる時間も有効活用することを伝えています。(電車での勉強については隙間時間を活用!電車内は最高の勉強場所であることを知ろうを参考にしてください)
このように、働きながら合格するためにはいかに「すき間時間」を有効活用するかにかかっているといえるでしょう。
経験者採用試験を受ける場合であっても専門試験はなくても教養試験は課せられることがほとんどですので、やはり科目が多いのでそれなりに時間を確保する必要があります。
さらに、論文と面接試験を突破するための自己分析も非常に重要になるのが経験者採用試験です。
3.公務員はノルマがないから楽という発想は捨てよう
ここからは実際に仕事について触れていきます。
公務員はノルマがないしクビにならないから楽だ、という意見をよく聞きますが、ここではノルマなどの細かい話ではなく、民間と公務員の仕事の性質の違いから見ていきたいと思います(ノルマ云々の話は枝葉末節に過ぎず本質ではありません)。
確かに公務員には民間企業のように売上のノルマや営業目標というものは存在しません(イベントなどの集客ノルマはあることはありますが)。
そもそも民間企業はお客様のために、そして最終的には企業の利益のためにサービスを提供します。ですので、利益につながらないことは行わないでしょう。
対して公務員(行政)というのは、すべての国民や住民に対し公平にサービスを提供することを目的とし、言ってしまえばカネにならないことでも住民にとって必要である(と考えられる)ものであれば事業として行います。
公務員は税金を財源とするため、民間とは違いお金を出してくれる人にだけサービスを提供するのではなく、すべての必要な人にとって「公平に」サービスを提供することができるので、国民や住民にとって必要なことをすることができるというメリットがあります。
しかし、その「公平」にサービスを提供するというのが厄介で、ある住民に対し「本当に困ってるから自分はこの人に対しこうしたい」ということがあるとしてもそれは許されないのです。
特定の人を特別扱いすることは「公平」ではないからです。そして決まり文句としては「それをやってしまうと他の人にも同じことをしなくてはいけなくなる」です。
つまり、住民のためと言いつつも、公平に扱う必要があるので、「これは決まりですので」と何もしてげられないジレンマに陥ってしまいます。それが住民にとっては「杓子定規」だの「融通が利かない」だの言われる所以なのです。
ですので、現在サービス業や営業などをしている人は相手に喜んでもらえるためにどうすればいいいかを研究している人も多いかと思いますが、そうしたことができないということは割り切る必要があり葛藤に悩む人も多いです(もちろん窓口や電話で気持ち良く対応するといった程度のことはできますが)。
このように公務員はノルマがないから楽だという印象があるかもしれませんが、民間では考えられないようなことで悩むことも多く、そうしたことがクレームなどにつながる可能性があるという現実があります。
また、あらゆる民間企業のあらゆる仕事にノルマが課せられているというわけでもないので、「ノルマが嫌だから公務員を目指す」という人はもう少し広い視野で他の企業や仕事についても調べてみることをおすすめします。
4.仕事自体も決して楽ではない
多くの人が「民間はきつい。楽な公務員になりたい」という声をよく聞きますが、先述したとおり公務員の仕事は決して楽ではありません。
2ちゃんねるなどの掲示板でも「民間から公務員になったらめちゃくちゃ楽!」とかいうスレッドもあったりしますが、入ったばかりで決めるのは早計過ぎるでしょう。
というのも公務員と一口にいっても部署によって仕事内容も業務量も全く違います。普段目にする窓口業務などは無数にある中の一つの仕事に過ぎず、通常は3年ぐらいのスパンで職場の異動が行われます。
思いつくものとして住民票や戸籍完成の業務、生活保護、年金や税金関係といったところでしょうか。
これらは窓口職場であるため目につきますよね。そのため公務員というとこれらのイメージがあるかと思いますが、前述したとおり多くの仕事の一部に過ぎません。
ちなみに、これら窓口職場はそれだけ住民と多く接することや、不満を持って訪れる人が多いため罵声を浴びせられたりいちゃもんをつけられることは日常茶飯事です。なので、公務員になる人はまず「メンタルの強さ」が求められることを知っておく必要があります。
こうした窓口業務以外にも、管理や政策系の仕事があります。
公民館や保育所、学校など公共施設の管理や、公園や緑地の整備、まちづくり計画の企画・立案、観光対策、保健や福祉サービス(高齢者、障害者など)の充実、広報、人事、財政など上げればキリがありませんが、すべての職場を経験することなど不可能なほど数多くありどこに配属されるかは入庁するまでわかりません(技術職など特定の専門分野で採用されればある程度の予想はつきます)。
窓口業務以外の部署は、「何時まで受付」というものがないため、いくらでも忙しくなる傾向があります。
企画系などは花形部署のような扱いを受けることが多いですが、内部は資料作成に追われ連日の残業や休日出勤も十分にありえます。
そして、経験者採用となると通常の新卒採用に比べ責任の重い仕事を任されるのが一般的です。
そうすると当然業務量が増えることで残業もせざるを得なくなります。
予算関係の仕事に携わると帰れないこともありますし、部課長とのやりとりも増えることで必要な説明資料の作成も増えてくるので、どうしても業務量は多くなりがちです。もちろん部署によっては連日深夜まで残業で、残業代もほとんど出ないというところだってあります。
ただし、民間時代に激務な会社で働いていた人にとっては公務員の忙しさは大したことはないかもしれないですし、忙しくても(薄給ですが)給料が保障されているという面では魅力的かもしれません。
ですので、公務員の仕事は決して楽ではないですが、安定性を考えるとやはり転職するだけの価値はあるかもしれません(もちろん給料面だけでなく仕事内容についても十分検討する必要はあります)。
5.やる気のある人にとってはモチベーションが下がることも多い
民間でバリバリやってきたという人は公務員の意思決定の遅さには不満を覚えるかもしれません。
公務員は何をするにも決裁が必要なので(ペン1本買うのにも決裁が必要です)、上司や他の部署にお伺いをたてなければいけないためスピードは遅くなりがちです。
大企業であれば同じようなシステムかもしれませんが、そうでないところで働いてた人にとっては「何をちんたらやってるんだ」と思うかもしれません。
また、文書主義であることからやたらと資料作成をする機会があり、これも「なんでこんなの必要なの?」と思う人もいるでしょう(わたしもよく思ってました)。
公務員の世界では「言った言わない」ということを回避するために何事も文書で残すのですが、これはとてもまどろっこしいと感じたものです。
そして仕事も民間企業とは違い利益を追求するものではなく「仕事のための仕事」が多いというのも事実です。
さらに年功序列という制度から、必死にやっても結局はある程度キャリアを積まないと給料アップはしないですし、先輩職員のやる気のなさや仕事をたいしてしてないのに高い給料をもらっている職員を見るとバカバカしく感じてしまい仕事へのモチベーションが下がってしまうか可能性があります。
特にやる気のある人にとってはこの辺りが妥協できるかがポイントになってくるのではないでしょうか。
ですが、人は人なので、自分がなんとしても達成したい部分と妥協できる部分を考えることが民間から公務員への転職をする上で大切なことです。
民間企業から転職する場合は必ずイメージや憧れで公務員を目指すのではなく、具体的にどのような仕事をしているのかについてしっかり調べましょう。人によっては民間とのギャップが大きすぎて再び転職を考える人がいるのも事実としてあります。
決して、楽だから公務員、ではなく「◯◯をやりたいから公務員」という意思があると転職しても満足できるかと思います。
6.まとめ
思っていたよりも公務員も大変だなと感じたかもしれません。世間で言われているような公務員像はもはや過去のものとなっています。
そして、公務員への転職のためにはまずは公務員試験に合格しなければなりません。
また、公務員試験を受けるにあたり年齢について気になる人は年齢制限はほぼない!30歳以上でも受けられる公務員試験はたくさんあるも参考にしていただければと思います。