特別区の論文試験の基本から対策までトコトン解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
writing

論文試験の対策は何から手をつければいいかわからない、そもそも論文の勉強なんて必要なの?と感じている人もいるのではないでしょうか。

特別区に限らず多くの公務員試験では論文試験(小論文や作文といった呼び方をすることもある)が課せられますが、このような悩みがある人は非常に多いものです。
論文試験は他の筆記試験に比べぞんざいに扱われる傾向にあり、あまり対策をせずに本番に臨む人が多いのも事実です。

しかし、論文試験は決して他の試験よりも配点が低いわけではなく、しっかりとした対策をしないと不合格になることは十分にあります

ここではそうした対策の難しい特別区の論文試験についての傾向や勉強方法について解説していきますので参考にしてください。

1 特別区の論文試験の傾向

特別区の試験(大卒・事務)では一次試験として、択一試験(教養と専門試験)、性格検査そして論文試験が出題されます。

特別区の論文試験は法律などの専門的な内容のものではなく、①高齢化や災害対策などの社会問題や、②観光客の増加やオリンピックの開催に向けて、「区の職員として」どのように考え、そうした課題をどう解決すべきかという思考を見られるものとなっています。

つまり、択一試験では知識の有無を判断し、面接ではその人の考え方やコミュニケーション力を見ますが、論文試験では受験生の思考力や表現力などが評価されます。そして、区の職員として問題意識(課題)を把握しているかということも問われます。

特別区の試験では教養論文について配点が公表されておらず、巷では「教養試験や専門試験で高得点でも論文が書けなければ落ちる」という噂もあります。実際に、択一試験の素点が高いAさんが不合格となり、Aさんより素点の低いBさんが合格するというパターンも毎年存在します。そのようなことから、「論文試験の配点が実はかなり高いんじゃないか」などと言われています。

しかし、公務員試験は論文の才能を見る試験ではありませんので、出題意図を間違いなく把握して、論理的に文章を書くという基本がなっていれば合格答案となります
高いレベルを目指すのではなく、普通レベルの論文を書ければ十分なのです。

この普通レベルの論文は、基本的な解答方法を理解し身につけることができます。では普通レベル(合格レベル)の論文の書き方を確認していきましょう。

2 合格レベルの論文の書き方

2−1 文字数について

特別区の論文試験は次のような内容で実施されます。

制限時間 1時間20分
課題式(当日、2題の中から1題選択し解答する。)
字数 1000字以上1500字程度
内容 社会事案への関心、思考力、論理性等を問う。

ここで受験生からの質問で多いのは、文字数についてです。1000字以上1500字程度と原稿用紙でいうと1枚以上の幅があるわけですが、実際には何字書くべきなのか、ということです。

まず、少なくとも1000字「以上」となっているので1000字は書かないと不合格となります。内容以前の問題なので、絶対に注意しましょう。
そして、1000字以上書けば1000字であっても合格答案となりますが、一般的には8割以上、つまり1200字以上書くとよいとされています

これは形式面というより、1200字程度書けば論点をもらすことなく出題課題に沿った内容の充実した論文に仕上がるという考えからです。実際に書いてみて、1000字くらいにしかならない場合は、何か書き忘れていないか確認してみるとよいでしょう。

2−2 論文の書き方の基本について

論文と作文の違い

そもそも論文とは何なのかということですが、論文は論理的な文章を書くということであり、根拠や理由をもとに自分の意見を主張していきます。
作文はただ単にこう思います、と自分の感想を述べるだけのものですのでこれは論文とは違います。ですので、論文を書くうえでは作文にならないように気をつけてください。

原稿用紙の書き方を守る

昔、夏休みの宿題で読書感想文を書かされた人も多いかと思いますが、そのときに原稿用紙を使って文章を書きましたよね?
論文試験でも原稿用紙を使い論文を書いていくのですが、間違った書き方をすると減点されてしまいます。
たとえば、①内容が変わるときは1マス下げてから書くことや、②句読点は基本的には1マス使うが、行の頭にきてしまうときは頭に書かずに前の行の最後のマスに文字といっしょに書くことには注意しておきましょう。

誤字・脱字に注意

そして、誤字脱字でも減点されてしまうことも注意してください。当たり前と思われるかもしれませんが、誤字・脱字は驚くほど多く見られます
今はパソコンやスマホなどで文章を作成することが多くなっているのでどうしても手書きで字を書く機会が減り、特に漢字は忘れやすくなっています。

いざ論文を書くと、「あれ、どう書くんだっけ?」という瞬間によく出くわします。とはいえ今から漢字ドリルなどをやるのも時間のムダですので、自信のない漢字はひらがなで書くか、別の言葉で表現するという方法があります。

漢字で書くべき部分をひらがなで書いた場合、形式面で減点になることはありませんが、採点者に「大卒なのにこんな漢字も書けないのか」という悪い印象を残し、全体の評価が下がってしまったり、表現力の面で減点される可能性はあります。
よって、そうした場合は別の表現をした方が無難でしょう。

ていねいにはっきりと書く

また、論文を書くときには採点者に読んでいただくという意識を持つことです。
字が薄いものや殴り書きで汚いものなどは採点する側としてもあまり読みたい気持ちにさせるものではないですし、単なる精神論ではなく、そもそも読めなければ採点のしようがないということに注意してください。

試験時間の1時間20分は長いようで、当日には実際にはとても短く感じると思います。時間に追われ焦る気持ちもわかりますが、下手でもいいので「丁寧にはっきり書く」ことを意識していきましょう。
このようにまずは論文の基本をまずは抑えた上で対策をするようにしていく必要があります。

3 過去問を使った書き方の紹介

3−1 出題内容

では、基本的な内容を抑えたところで、実際に過去問を見ながらどうやって書いていけばいいかを見ていきたいと思います。
ある程度論文の基本を身につけたらあとは練習あるのみです。

とは言ってもまずは論文を書くにあたりどのような構成で文章を作成していかなければならないかを理解しなければいけません。

ここでは実際に平成26年度の問題を書き方を見ていきましょう。前年度と同じ課題が出ることは少ないですが、数年前の課題の類似問題が出題されることもありますので、参考にしてみてください。

2題中1題を選択すること。
(問1) 区民の健康志向や環境への配慮などにより、自転車の利用者が増えていますが、それに伴い、歩行者や自動車との接触事故や放置自転車の増加など、多くの問題が起きています。このような現状を踏まえ、特別区の職員として、地域社会において自転車を安全かつ安心して利用できるまちづくりについてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

(問2) 政府は2030年までに訪日外国人旅行者を年間3,000万人とする目標を定めており、外国人旅行者の誘致に取り組む自治体が増加しています。また、我が国に居住する外国人には地域活動への参加などが期待されています。一方、都内の中小企業は海外に販路を広げるなど、地域を取り巻くグローバル化の流れは一層加速しています。 今後、オリンピック・パラリンピックの開催に向けて海外からの東京に対する注目度も一層高まっていく中で、グローバル化の流れを積極的に施策に反映していくために、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

どちらも最近話題になっている時事的な内容について、「特別区の職員として」どのように取り組むか、ということが問われているのがわかります。特別区ではない他の公務員試験では、「職員として」ではなく一般的な社会人としての理解を問う課題もありますが、特別区ではあくまで特別区の職員としての目線を忘れないようにしなければなりません

少子高齢化や環境問題、災害対策などについては引き続きホットな話題であり、今後出題されることが予想されますので、普段からニュースはチェックしておくとよいでしょう。結果的に択一の時事問題や面接でも役にたつことがあります。

また、時事的な内容以外にも、24年度は説明責任(アカウンタビリティ)についてどのように果たすべきか、23年度は地域コミュニティの活性化について考えを論ぜよ、という自治体としてのあり方を出題しています。

このような課題は公務員試験の教養論文では頻出のテーマになり、今後も出題されることがあるでしょう。

3−2 論文作成の流れ

論文を作成するにあたっては、思いつきで書いていくのではなく必ず「構成」を考えなければなりません
どのような問題であっても基本的には「①現状→②課題→③解決方法→④まとめ」という流れで書けば問題ありません。

上の問1について、解答の流れを具体的に確認してみます。

まず、
①現状として、自転車は健康志向や省エネ意識を背景に自転車の利用が増加している。

②課題として、自転車の交通マナーなどが悪いので歩行者などに危険・迷惑がかかっている。さらに、駅周辺の放置自転車は歩行者の安全性だけでなく、まちの美観も損ねる要因となっているので自転車を安全に利用できるまちづくりをしていかないといけない。

③解決方法として、
第一に自転車利用の環境の整備をする。 駐輪場の整備だけでなく区のホームページなどで地図情報をアップし、リアルタイムで空き情報も把握できるようにすることで放置自転車対策と駐輪場の利用を促進していく。 さらに、地下を活用した駐輪場は用地の確保が難しい都市部では有効である。

第二に、自転車利用の適正化の促進をする。 放置自転車撤去の強化を図っていく。放置自転車を減らすためにレンタサイクルの導入も有効であろう。貸出しの拠点を駅周辺の駐輪場や商業施設に確保すれば観光目的としても利用することができる。

最後に、自転車の安全利用のための広報と教育を行う。 区としてルールやマナーの周知を図る必要がある。自転車は車両であるということを利用者に認知させ、交通マナーを守ることの重要性を認識させる。そのために交通安全教室の他、区民などと協働に学習プログラムを開催し、広報していく。こうしたルールやマナーを啓発を図ることで利用者の意識の変革を促すことができる。さらに優良自転車ドライバーについて表彰するような制度があればよりよいかもしれない。

④まとめ
以上のように、駐輪場の整備とともに、ルールやマナーの向上を図ることで、区職員として自転車を安全かつ安心して利用できるまちづくりを進めていくべきだと私は考える。

このような流れで文章を作成することで、「起承転結」がはっきりとし読みやすく説得力のある論文になります。

それではそれぞれの構成についてどのように考えていき文章を作っていけばいいのかを見ていきましょう。

①現状
自転車の利用が増えているという現状は問題文に記載されているので、そのまま拾ってこればいいでしょう。全体のバランスを考えてくどくどと長くなりすぎないように注意してください。

②課題
自転車利用が増えることによる事故の危険性や歩行者の安全性、放置自転車により美観を損ねるといった課題をあげています。
この課題の部分では「こういうことが今課題になっています」と「問題提起」をし、「じゃあ特別区職員としてどのように取り組んでいくか?」という流れにもっていくようにしましょう。課題として考えられるものを第一、第二、最後にと箇条書きにしていき、それに肉付けをしていきます。

③解決方法
ここがメインであり最も難しい部分でもあります。
先に上げた課題に対して、「じゃああなたが区の職員になったらどのように解決していきたいか」ということを述べていってください。

これが正解というのはないので、いいなと思うものを書いていけばよいでしょう。
ただし、あくまで自治体の職員としてできることを書いていきますので、あまりに非現実的なものや実現不可能なもの、区長じゃないと決められないようなスケールの大きいものなどはやめておいたほうがいいでしょう。

また、個性あふれるものや独創的である必要はないかと思われます。予備校などで出している模範解答でも、目新しいものはたいてい見受けられません。どこかで聞いたような話を、論理的に書ければ合格答案になります。

学生の考える独創的なものというのはなかなか行政として実施するのは難しく、やれるならとっくにやってるわ!というものや、それってどうなの?というものがほとんどかと思います。

ですので、突飛な解答は狙わず、間違いない無難な解決策を書いていけば問題ないでしょう。 ただ、知識のストックが無ければその無難な解決策を引き出せないので、様々な模範解答を読んだり、区のホームページなどで実際にやっていることを調べたりして引き出しを増やす努力はしていきましょう

元特別区職員として感じたことは、役所というのは「区民等と恊働」という言葉が大好きだということです。
ですので、区として勝手にやるのではなく、区民や事業者と一緒にやっていきましょう、という流れにもっていけばベターな解答が作れます。
是非使ってください。

④まとめ
解決策をまとめ、最後に区の職員としてこういうことをしていくべきだと思います、と締めれば大丈夫です。

※予備校の模範解答について
模試や問題集などの解答として載っている予備校の模範解答はプロが何度も推敲を重ねながら仕上げたものなのでとてもよく書けており、受験生が実際に本番でこれだけのものを書き上げる人はほとんどいません。
なので、安心してください。あくまで公務員試験の論文は、普通レベルに仕上げればよいのです。上記のような流れで書けばいいんだな、ということをおさえておけばよいでしょう。

3−3 実際に書いてみよう

さて、実際に論文を書く段階になったら必ず問題用紙の余白に解答の流れをメモしてから書き始めてください

箇条書きでかまいません。 特に③の解決方法などは書きながら考えていたら絶対混乱します。混乱すれば論理的文章は絶対に書けません。メモをしてから清書をすることを、面倒がらずに行ってほしいと思います。

そして、いくら書き方を学んだところで実際に手を動かして文章を書かないと、せっかく身につけた方法や思い浮かんだアイデアも本番でうまく文章として表すことができません

頭の中で「こういう感じでいいだろう」という段階でとどめるのではなく、「必ず」アウトプットをしていってください。

教養試験や専門試験でも、テキストを読んだり講義を受けただけではわかったつもりでもいざ問題を解くとさっぱり、ということはありますよね?
それと同じで、論文も書くことで情報をアウトプットしていかなければ、文章を書くのが本当に得意という人でなければいざというときに書けないものなのです。

また、論文は自分では書けているつもりでも実際に第三者が読むと、よく意味が分からない文章であることが往々にしてあります
ですので、実際に過去問や予想問題などを書いてみて、できれば人に見てもらい添削してもらうことが重要です。

予備校に通っているのであれば先生に見てもらい、独学の方は通信添削とかでもよいでしょう。
大切なのは「ひたすら書いて人に見てもらう」という反復練習です。

書かないと書けるようにならない。至極当然です。

繰り返すことで論文を書く筋力を鍛えていきましょう。 地道ですが確実な方法なので、たとえ最初は書けなくてもコツさえつかめば誰でも書けるようになってきますので、諦めずに続けていってくださいね。

小論文のネタ探しをしている人は迷わず本書をおすすめします。

地方上級・国家一般職[大卒]・市役所上・中級 論文試験 頻出テーマのまとめ方 2017年度
地方上級・国家一般職[大卒]・市役所上・中級 論文試験 頻出テーマのまとめ方 2017年度

様々な出題されるであろうテーマを扱っており、どういったことを書けばいいのかがまとめられているので一冊あれば安心の対策本です。

ただし、かなり細かい内容も掲載しているためまともに読もうとすると大変です。また解答例もものによっては難解な書き方をしているものもあります。
論文は知識を披露する試験ではないので、あくまで参考程度に軽く読んでみることをおすすめします。

3−4 対策時期について

そして最後に、いつから対策をすればいいのかということですが、もちろん早いに越したことはありません。
文章を書くのが得意な人は1か月前でもよいかもしれませんが、苦手な人は年が明けてから一度は書いてみてください
意外に書けなかったり、書けた(気になった)としても課題に対してまったく十分な解答にはならないことに気づくかと思います。

一度書いてみて書けそうだと思ったら春先に本格的に取り組む。やはり苦手だと思ったら、年明けからコツコツと書いてみることが大事です。

特別区の論文の重要性から、都内の学内講座では10月ころから論文の授業が始まったりしていますので、自分の文章能力を過信せずに早めにとりかかることを意識しておくとよいでしょう。

4 まとめ

論文対策は軽視されがちですが、合否を左右するとても重要な試験です。
筆記試験対策で大変なのは理解できますで、論文で落ちてしまっては悔やんでも悔やみきれないでしょう。
基本を知り、とにかく書いて見てもらう。ただそれだけです。
苦手意識がある方は特に早めの対策をするようにしましょう!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

小論文・作文対策講座のご案内

近年、公務員試験において人物重視の傾向から論文や作文の重要性が高まっています。
特に専門科目のない市役所や警察・消防試験、経験者(社会人)採用試験では論文試験のウェイトが高く、対策が必要不可欠となります。しかし、「文章を書くのはどうも苦手…」「何を書けばいいのかわからない…」という方も多いのではないでしょうか。

最近は文章を実際に手を動かして書く人が減ってきているため、こうした方は増えてきています。本講座で論文や作文に不安を覚える受験生を対象に、基本的な論文や作文の書き方や構成方法をお伝えし、実際に書いていただいた文章のチェックやフィードバックを行うことで合格点に到達できる実力を身につけていきます。

・独学で勉強しているけれど論文・作文対策だけは指導を受けたい方
・文章を書くことが苦手な方
・苦手ではないけれど論文となるとどう書けばよいか分からない方
・実際に書いて練習をしているのでそれをチェックしてほしい方


論文・作文対策は第三者に見てもらいフィードバックを受けることがとても大切です。
上記に該当する方はぜひご相談ください。

小論文・作文対策講座の詳細はこちら

電話お問い合わせ