公務員試験に限らず、就職活動全般において最大の関門は面接です。どんなに筆記試験で高得点を出しても、面接で失敗すれば内定は取れません。
その重要な面接を乗り切るために必要なものが自己分析です。
ここでは自己分析の方法について、なぜ自己分析が必要なのか、いつからやるべきなのか、そしてどうやってやればいいのか、どこよりも詳しくお伝えします。
この記事の目次
1.自己分析が必要な理由
予備校や大学などから、「面接対策では、まずは「自己分析」をするように」と言われることがほとんどだと思います。自分のことを知らなければ、自分のことを相手(面接官)にしっかりと伝えることができないので、当然、「自己分析」が必要です。
しかし、これまで多くの受験生の模擬面接をしてきましたが、最初は初対面の相手(面接官)に対してきちんと説明できない受験生が圧倒的に多いです。
たいていが、自己分析なんてしなくてもよいと思っていたり、自己分析が中途半端だったりするからです。この状態で、どんなに模擬面接を重ねても効果は薄いでしょう。
たとえば、民間企業の就活でも公務員試験でも、「面接三大」質問というものがあります。それは、
- 志望動機
- 学生時代に力を入れたこと(民間企業経験者なら仕事において力を入れたこと)
- 自己PR
です。
自己分析をしっかり行わなくても、なんとなく、「学生時代はテニスサークルの副部長を努めました。サークルではやめていく部員が多かったので、部長と相談して対策を練りました。その結果、翌年にはやめる部員はゼロになりました。」などと作ることもできると思います。
実際に、模擬面接で指導する受験生には、こんな感じの薄い内容を面接カードに書いてくる人もよくいます。
しかし、模擬面接で深く質問していくと言葉につまったり、沈黙になってしまします。これでは、最終合格はつかめません。
「そもそもなぜ副部長になったのか?」
「大学のサークルなのだから自由に脱退してもいいのではないか?」
「なぜ部長と相談したのか」
「部長は一人ででは何もできないような人だったのか」
「やめる部員がゼロになったのは、本当にあなた自身の貢献によるものなのか?」
たった3行程度の文章から、簡単にあげてもこれだけの疑問が湧いてきます。
このようなたくさんの疑問に対して、面接官を納得させるだけの説明ができた人だけが内定を得ることができると思って下さい。
そのために自己分析が必要なのです。
2.いつから対策すべき?自己分析をできるだけ早く始めるべき理由
公務員試験の受験生の場合、面接対策の1つとして自己分析を始めるのは筆記試験終了後、遅い人だと筆記の合格発表の後の人が多いかもしれません。筆記試験の負担がかなり重いので仕方ないことだとは思います。
実際に、筆記の合格発表後に自己分析を含む面接対策に着手して内定を得ていく人もたくさんいます。
しかし、これでは手遅れの人も毎年それなりの数で出会ってきました。
民間企業の就活がダメだったから公務員、学生時代は麻雀くらいしかしていない、サークルなんて入っていない、ゼミも頑張っていない、アルバイトは単発のみ・・・。
公務員受験生にはけっこう存在するのです、こういう学生や既卒の人たちが。
このような人たちはもちろん、それなりに学生時代を満喫している人でも自己分析はできるだけ早く1度やっておいてほしいと思っています。
具体的には、大学3年生になる前の春休みか夏休み前。遅くても、大学3年生の冬(民間の就活が始まる前)には、自己分析を行なって下さい。
そして、公務員試験の筆記試験終了後に、改めて面接対策を行なえば万全です。
なぜなら、自己分析をすることで「自分は何が足りていないか」を知ることができます。
たとえば、「大学時代はアルバイトばかりで、大学生活で積極的に活動したことがないな」と分かれば、大学3年生の1年間(受験勉強が本格化するまでの冬までなど)、サークルやゼミに主体的に参加すればよいでしょう。
「とりあえず公務員を受験しようと思ったけど、それらしい勉強していないな」と思ったら、大学3年生で、地域コミュニティ論や行政学などの科目を履修選択することもできます。
こういうことができるのが大学3年生になる前の春休みです。
この時期に自己分析をできなかった人も、まだ夏休み前なら間に合います。
大学生の夏休みは長いので、ボランティアに2週間行ってみるとか、インターンシップを受けるとか(公務員試験受験生が民間企業のインターンシップを受けたとしてもとてもプラスの経験になります)、アルバイト経験がなければ2か月間集中して働いてみるとか。
また、ゼミ合宿が夏休みに行なわれることも多いので、合宿の運営に積極的に関わってみたり、秋の学園祭のために頑張ってみる。
そういうことを経験でき、これが実際の面接に大いに役立てることができるのです。
これが理想ですが、自己分析をせずに冬をむかえてしまった場合でも、気がついた時に自己分析をしてみれば必ず役に立ちます。
年明けからは筆記試験の勉強が大変にはなってきますが、それと両立して自分に足りない部分を少しずつ改善することはできます。年末年始に自己分析をして足りない部分に気がついても、筆記試験終了まで半年もあるのです。必ず変われる部分があります。
また、自己分析をしていると、「民間企業の〇〇の分野には興味がある」と思って公務員以外の仕事にも目がいく事もあります。その場合は、3月に行なわれる民間の合同企業説明会にちょっと顔を出してみることもでき、新卒採用のチャンスを逃さずにすみます。
結果的に公務員試験だけを受けることになっても、「民間と公務員」の仕事の違いをしっかりと説明できるようになるでしょう。
筆記試験の合格発表後に、「自分には面接でアピールするネタがない」と後悔する前に、早めに自己分析を1度やっておきましょう!
3.具体的な自己分析の方法
自己分析の方法はいくつかありますが、しっかりと確実に面接に対応できるよう、王道のやり方を説明します。やや時間がかかりますが、急がば回れ方式です。
ここでは、次のステップを踏んで自己分析を行ないます。
ステップ① 中学・高校・大学(・大学院、卒業後等)の活動を書き出す
ステップ② ステップ①であげた各活動で特に力を入れたことを抜き出す
ステップ③ 中学・高校・大学(・大学院、卒業後等)での共通点を見つける
ステップ④ ステップ③の共通点と志望動機をつなげる
では、上記のステップを踏みながら具体的な自己分析の方法を説明していきます。
ステップ① 中学・高校・大学(・大学院、卒業後等)の活動を書き出す
学生が面接で話すネタは、たいていが次の活動が基になっています。
・サークル
・部活
・アルバイト
・ボランティア
・ゼミ
・ゼミ以外の学業
・留学
・大学外での活動(習い事や社会人サークルなど)
特に、公務員・民間の就活生に関係なく「サークル、部活、アルバイト」が3大自己PRネタとも言えます。家庭教師や居酒屋のアルバイト、野球サークルやダンスサークルなど・・・本当によくあるネタですが、ネタ自体はそれでいいんです。
大事なのは、その活動の中で自分はどのような行動をとってきたか、を説明すること。
あなたという人間は1人しか存在しません。たとえば、居酒屋のアルバイトでクレームを受けたことをネタに選んだとしても、同じクレームを受け同じ対応をした人間は存在しないのです。
自己分析をする際には、平凡だと思われる内容でも迷わず書き出してください。
そして、具体的な場面を思い出して、具体的にどのように考え、どのような行動をとり、結果どうなったのか、を書き出しましょう。
たとえば、次のように書いてみるものよいでしょう。
(例)
【アルバイト】居酒屋のホールスタッフ、大学1年から2年間勤務(週3日)
【業務内容】来店客を席に誘導→注文をとる→調理場に注文を伝える→料理を運ぶ
【大変だったこと】
客からのクレームに対応すること
【大変だったことを具体的に】
酔っぱらいの客に、料理が出てくるのが遅いと怒鳴られた。
経験上、酔っぱらいの客にはできるだけ丁寧・謙虚な姿勢をとるのが良いと考えた。
丁寧・謙虚に客のクレームを聞いたあと、調理場に伝え早めに出してもらえないか交渉すると同時に、客にそのことを説明した。その後、注文を受けるときには、料理を出すのにどのくらいの時間がかかるかを伝えた。
このクレームの件があってから、何かあったときには調理場の方にもお願いすることがでてくるかもしれないと思い、調理場の方々とコミュニケーションをとることにも積極的になった。
ポイント①
業務内容を細かく書き出すこと。
居酒屋のアルバイト、といっても居酒屋の規模や経営形態、スタッフなどによって業務が異なります。面接官に状況を理解してもらえるように、まずはどんな業務をしたのか整理してください。
ポイント②
面接の基本は「大変だったこと(困難だったこと)をどのように乗り越えたか」を伝えることです。物事に真剣に取り組めば、何らかしらの苦労がつきものです。
なので、ポイント①で詳しく書き出した業務内容を1つ1つチェックしながら、大変だったけど工夫して乗り越えたことを思い出して書いて下さい。
ポイント③
次に、どのような学びを得たのか明確にします。
上記の例では、酔っぱらい客の対応に具体的に対処したことを書き出しましたが、そこから学んだこととして、「何かあったときには調理場の方にもお願いすることがでてくるかもしれないと思い、調理場の方々とコミュニケーションをとることにも積極的になった。」という例をあげました。
単に、クレーム対応の内容を説明しただけにならないように気をつけて下さい。
このような感じで、
【大学時代】
・サークル ・部活 ・アルバイト ・ボランティア ・ゼミ ・ゼミ以外の学業
・留学 ・大学外での活動(習い事や社会人サークルなど)
【高校時代】
・部活 ・学業 ・ボランティア ・大学外での活動(習い事など)
【中学時代】
・部活 ・学業 ・ボランティア ・大学外での活動(習い事など)
について全て書き出してみましょう。
*民間企業経験者は、仕事上での経験を出来る限り全て書き出す。
なお、経験しなかったことについては、なぜ経験しなかったのか理由を書いて下さい。
たとえば、大学時代にボランティア経験がない人は、なぜボランティアをしなかったのか、理由を書きましょう。ボランティアの経験なく公務員になる人はたくさんいますし、しなくてもよいのですが、今は簡単に様々なボランティアに参加する機会があります。
なのに、なぜ参加しなかったのか。
そのようなことも、人柄を知るうえで大事なことになります。
実際に、面接で聞かれる人もいます。ボランティアだけでなく、なぜ部活ではなく、サークルにしたのかなど。いろいろな理由があったと思います。ここまで掘り下げておけば、面接でうろたえるようなことはありません。
ステップ② ステップ①であげた各活動で特に力を入れたことを抜き出す
ステップ①では、みなさんの人生の約半分を思い出して詳細に書き出してもらいました。かなりの労力を要したと思いますが、ここで他の受験生と差がつくと考えてもよいくらいです。
ステップ①を終えたら、ステップ①であげたそれぞれの活動の中で、特に印象深いできごと(=苦労を乗り越えて達成感を得たできごと)や特に力を入れたものを、それぞれの時代ごとに選んでください(複数ある場合は序列をつけておくとよいでしょう)。
(例)
【大学時代】
①居酒屋のアルバイトで酔っぱらいのクレームに対応したこと
②学園祭の実行委員として、50団体の出店について管理したこと
【高校時代】
野球部のマネージャーとして、部員が練習に専念できるような環境作りに貢献したこと
【中学時代】
吹奏楽部のパートリーダーとして、後輩が上達するように工夫を重ねてきたこと
ポイント①
具体的なエピソードで選んで下さい。
たとえば、「居酒屋のアルバイト」ではなく、「居酒屋のアルバイトで酔っぱらいのクレームに対応したこと」というエピソードで抜き出します。
ポイント②
リーダーとしての活躍や、大会での好成績など、輝かしいものである必要は全くありません。自分では「平凡だな」と思っていることでも、あなた自身を知ることができるものであればよいのです。
ステップ③ 中学・高校・大学(・大学院、卒業後等)での共通点を見つける
ステップ②で抜き出したエピソードから、自分の能力・特性の共通点を見つけて、文章化してください。
(例)
「私は、相手とよく話し良い関係を築くことで、物事を円滑に進めることができます。」
*スッテプ②の例から
ポイント①
共通点を見つけることで、「軸」ができ、矛盾がなくなります。
そうすると、いろいろなエピソードを話すことになっても、「こういう人なんだな」と面接官に自分を伝えることができます。
また、「私の強みは、継続力があることです」と言っているのに、それを裏付けるエピソードが1つしかない・・・ということがなくなります。アルバイトや部活、学業など、中学のときから何かを継続して行なうエピソードが複数あって初めて、その人の「強み」と言えるのです。
ポイント②
共通点が見つからなかった場合、どこかのタイミングで自分が変化したとも言えます。特に、大学に入ってから(もしくは社会人になってから)大きく成長する人はたくさんいます。
なので、この場合はどのようなことがきっかけで、どのように変わったと考えるのかまとめておきましょう。
ステップ④ ステップ③の共通点と志望動機をつなげる
最後に、面接では「あなたのどんな点を仕事に活かせると思いますか?」という定番質問があります。
ステップ③でまとめた自分の特性を、志望官庁(自治体等)のどのような場面で活かせると思うか考えておく必要があります。
説明会で職員の方から、常にチーム力が問われる仕事だと伺いました。
私の「相手とよく話し良い関係を築くことで、物事を円滑に進める」という長所を活かして、〇〇市に貢献していきたいと考えております。
*本来は、もう少しやりたい仕事の具体的場面を交えて長所をアピールするのが好ましいです。
4.まとめ
冒頭にも述べたように、たいした自己分析もせずに内定を得る受験生も勿論います。ただ、目先の面接だけでなく、人生の長い時間を費やす仕事を考えるうえで、やはり自己分析は重要です。
これまで、ノート1冊が真っ黒になるくらい自己分析を行っている受験生に何人も出会ってきました(志望先研究ノートを別にもう1冊作成)。もちろんその受験生たちは複数の内定を得て、現在公務員として活躍しています。
みなさんも納得のいく社会人デビューを果たせるように、自己分析を通じてしっかりと自分と対話をしてください。
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