公務員試験の第一関門は筆記試験ですが、実際に内定をもらうためには面接試験を突破しなければなりません。
毎年、筆記試験が足切りぎりぎりだった受験生が、面接試験で一発逆転で最終的には上位合格をしていくことがよくあります。
一方で、筆記試験では高得点だったのに、面接試験だけで不合格になってしまう受験生もいます。
特に地方公務員の試験での面接重視が顕著になっているようです。自治体によって
①筆記試験が合格したあとは一度点数がリセットされて、面接試験の点数だけで最終合格を出す
②筆記試験の点数がリセットされないとしても、2次面接、3次面接の配点比率を非常に高く設定している
といったパターンが存在します。
面接の配点方法について公表しているところと、そうでないところに分かれます。また、採用年度によって方法が変わることがありますので、受験先の受験要領でしっかり確認していただきたいと思います。
今回は、面接の基礎資料となる面接カード(エントリ—シート)や、面接の必須項目である「志望理由」について確認していきます。
この記事の目次
1 志望理由の作り方(総論)
1-1 なぜ民間企業ではなく公務員か
面接カードに直接記載する必要はありませんが(文脈の流れで書くこともあるでしょう。)、実際の面接で定番の質問が、「民間企業ではなくなぜ公務員なのですか?」です。
この質問を全員が用意しているのを見越してか、実際には質問されないことも多いようですが、必ず自分の考えを明確にしておきましょう。
そもそも、なぜみなさんは公務員試験を受けるのでしょうか?まずはよくある本音を見ていきましょう。
本音①「公務員は安定しているから。」
では、本当に安定しているといるでしょうか?
最近、ある地方公務員が仕事ができないという評価を受けて解雇されるという報道がありました。
また、近年、国家公務員も含め各自治体で給与は軒並み下がっており、15年前に比べて平均年収が約200万円下がったという数値を公表している自治体もあります。
親世代の公務員に比べ、安定性は少しずつ揺らいでいるようです。
本音②「プライベートの時間を取りたいから」
公務員はワークライフバランスがしっかりしていて、アフターファイブは自分の時間に使えると考えている方も多いでしょう。
たしかにあまり残業のない役所・部署も多くあるようです。
しかし、中央省庁の国家公務員は終電ギリギリまで働く人がたくさんいます。本当は終電以降も仕事をしたいけど、タクシー代が払えないから終電にかけこむという事態もよくある話です。
また、市役所等でも部署によっては、終電まで仕事や土日出勤もあります。しかも予算の関係で残業代が半分も出ないこともあります。
このように、この御時世、公務員として働くということは結構大変なことがたくさんあります。
もちろん働く場所によって異なるので一概には言えないですが、とにかく「民間企業より公務員の方がラク」という考え方は捨てた方がよいでしょう。
また、間違っても面接試験で言ってしまわないようにしましょう。
面接試験で、面接官と意気投合し盛り上がってしまったあげく、素が出て本音を言ってしまう、という受験生が少なからずいます。調子にのりやすい人は少し注意をしておいたほうが良いでしょう。
それらしい理由だけどダメな志望理由「民間は利益を追求するが公務員はそうではないから。」
なぜ利益追求がだめなのでしょうか?利益追求がなければ、社会経済は停滞し、税収も上がらず、その結果行政サービスを行うことができなくなってしまいます。
また、公務員の事業の財源は税金です。その予算は限られており、その中で最大限のパフォーマンスをしなければ国民は納得しませんし、お金の使い道は常に国民の目にさらされます。公務員は国民(住民)のために最大限の利益を追求できる事業を行わなければならないともいえるわけです。
お金を使って事業を行う以上、やはりどんな形であれ利益を追求することは必要でしょう。
とはいっても、たしかに民間企業は「特定の商品の利益」をあげるために様々な手段を駆使します。公務員も利益追求することはあるけれど、民間企業とはまた違ったものになります。
民間企業経験者はその点を、経験をふまえて説明できれば、むしろ面接官は「なるほど」と納得してくれるはずです。
では、民間企業との違いをどのように考えればよいか?
基本的に、「公務員でなければできないこと」を自分の経験を交えて考えることがよいでしょう。
この点、国税専門官や裁判所事務官などの専門職は非常に簡単です。なぜなら、税金(国税)の徴収は国税専門官にしかできません(銀行や金融機関はできません)。
裁判手続の仕事は裁判所職員にしかできません。
同様に、専門分野を扱う国家公務員も比較的簡単です。入国管理業務は入国管理官しかできませんし,通信の管理・統括は総務省に入らなければできないわけです。
一方、地方公務員については若干注意が必要です。
たしかに、福祉や雇用政策は地方公務員の仕事のひとつです。しかし、それは民間企業や非営利団体では本当にできませんか?
ということを念入りにチェックしていただきたいと思います。
1-2 公務員として何ができ、何をしたいのか
たとえば、福祉や雇用政策について自治体は民間企業や非営利団体の協力を得て行っています。そうすると、公務員ではなく民間企業に勤めてそこで力を発揮すればよいということにもなってきます。
そこで、「公務員の立場で何ができ、何をしたいのか」を明確にする必要が出てきます。
公務員は何ができるのか、というのは実際に働いた人にしかなかなか分かりません。しかし、自治体のホームページや広報誌などで、どんなことを自治体が主体となって行っているかは確認ができます。また、実際に働いている人に仕事の話を聞くこともあるかもしれません。
最近は、自治体でインターンシップを行ったり、業務説明会も積極的に行っています。そこで現場で働く職員の生の声を聞くということは非常に有意義です。
(この調査は予備校に頼らず、きちんと自分の手足を使って情報収集をすることをおすすめします。なぜなら、ヒトから聞いた話は聞く段階で情報が歪曲してしまうこともあるからです。)
2 試験種別「志望理由の例」
ここからは、試験種別の志望理由の例を具体的にみていきたいと思います。
2-1 地方公務員(都道府県・市町村・特別区等)
地方公務員の面接では、その自治体でなければならない理由をしっかり伝えられることが求められますが、それが一番難しくて受験生としては非常に苦労するところです。
さらに、面接カードは様々な形態をとっており、志望動機欄がたった2行のところもあれば、5〜10行程度書かなければならない自治体もあります。
たった2行であれば、記入自体は抽象的になってもやむをえませんが、しっかり口頭で説明できるように、文字にして用意しておくようにしておきましょう。
具体的には次のような内容を入れていくことで具体的にすることができます。
①志望自治体の仕事を知ったきっかけを入れる
【回答例】
〇〇市のインターンシップに参加し、職員の方から〇〇県が取り組んでいる〇〇という政策に興味をもったのがきっかけです。
※インターンシップでなくても、大学や予備校主催の業務説明会に参加し、話を伺ったということでも良いでしょう。様々な話の中で、どの点に興味をもったかを示すことが大切です。
②志望自治体の魅力(やってみたい仕事)を政策面から考える
【回答例】
〇〇市が力を入れている「子育て支援」に特に感心をもちました。〇〇市では、現在合計特殊出生率が1.23と全国的にも低い水準になっています。これを改善するために、市の職員として市民の声をしっかり聞きながら、こどもを産みたくなる環境、育てやすい環境を整備していきたいと考えています。
③やりたい仕事についてどのような点で貢献できるかを考える
【回答例】
(観光振興に携わりたいというのを前提に、)大学で学んできた国際的な視点や外国への理解を活かして、〇〇市に貢献したいと思います。
※各自治体のホームページをみれば、必ず政策ビジョンの記載があるはずです。その中で、自分が一番ぐっとくる政策は何か考えてみて下さい。観光振興でも、雇用促進でもなんでもOK。できれば、その政策において、自分のどんな点を活かせるかも示せるとよいでしょう。
【注意点】
都道府県と政令指定都市、市町村、特別区の役割はそれぞれ異なることを明確にしておきましょう。
たとえば、市民の声をしっかり聞き、狭い範囲で地域に根ざした政策をすすめたいなら政令指定都市を含む市町村・特別区になるでしょう(政令指定都市でも、広い権限が委譲されていますが、やはり市民に非常に近い立場で仕事をします)。
一方、都道府県は広い範囲を管轄します。その都道府県にあるたくさんの市町村を束ねる役割があり、国と市町村との調整役となることもあります。災害対策では大きな役割も果たすことになります。
また、東京特別区は23区とも大きな個性を出していますが、区として連携したり、刺激し合って業務改善をしているという魅力があります。
自分はどの立場で仕事をしていきたいのかを意識しておくと、面接でも面接官を納得させることができます。
2-2 国家一般職(行政職)
国家一般職の面接カードでは、「志望動機・受験動機」の欄が2行弱。さらに、「志望官庁等」を2つまで書けるようになっています。
たった2行弱しか書けませんので、以下のように抽象的でもやむをえませんし、この程度の記載でも合格しています。
【記入例】
国民一人一人が安心して暮らすことのできる社会基盤を作ることに貢献したいと考え志望しました。
【ポイント】
志望動機の横に記入する「志望官庁等」の仕事の性質に合わせた志望動機を書けるとよいでしょう。
たとえば、厚生労働省や労働局を志望している方は、上記の記入例の「安心して暮らすことのできる」と矛盾しません。
この面接カードをもとに、実際の面接では志望動機を具体的に尋ねてきます。
【質問】
「安心して暮らす」ってどういうことですか?
【回答例】
「私は特に労働局を志望しているのですが、だれもが安心してくらせるための一つとして、できれば正規雇用で待遇の整った環境で働き給与を得て行くことが必要になります。日本ではまだまだ雇用が安定しているとはいえないので、雇用の支援を通じて貢献したいと考えています。」
このように、志望官庁の志望動機と絡めて回答すると,具体性が増してきます。人事院面接までに業務説明会などが頻繁に行われますので、そこで職員の説明を聞き、またたくさん質問することで志望理由をかためていってください。
2-3 国税専門官
国税専門官の面接カードは、だいたい3〜4行で書くスペースになっています。面接自体は例年15分程度と短いので、地方公務員と異なり根掘り葉掘り志望動機を聞かれることは少ないようです。
以下の点に注意して、志望動機をまとめてみましょう。
①なぜ税に興味をもったのか
②なぜ専門的な仕事をしたいのか
③どんな点に貢献して行きたいかor貢献できるか
等に触れられればよいでしょう。
何か特別なことを書いたほうが良いかと心配している受験生も多いですが、国税専門官という専門的な仕事柄、多くの受験生が似たような面接カードになりますがそれでも問題なく合格しています。
【回答例】
業務説明会に参加し、国を運営するために必要な基盤となる「税」を、専門的な知識に基づいて、適性・確実に徴収していくという国税専門官の仕事に大きなやりがいを感じました。様々な納税者と向き合う際には、これまでのアルバイトなどの経験を活かして、納税の必要性をわかりやすく丁寧に説明し納税してもらうことに貢献できると考え志望しました。
2-4 裁判所事務官
裁判所事務官の面接カードは、【裁判所職員を志望した動機】でだいたい4〜5行、【裁判所職員としての抱負(取り組んでみたい仕事、あなたが貢献できること等)】で3〜4行で書くスペースになっています。
新設にも2つに分けてありますので、それぞれに対応した形で記載するように注意してください。なお、国税専門官と同様、専門職になるので多くの受験生と似たような面接カードになることも多いでしょう。
しかし、国税専門官と異なり面接時間25〜40分程度とだいぶ長い時間をとっています。したがって、人によっては志望動機をかなり掘り下げられるということがあります(全く聞かれない人もいますが、これは面接官によります。同じ面接官でも聞いたり聞かなかったりするため、聞かれて困らないよう必ず用意しておきましょう)。
①「裁判所職員を志望した動機」
【回答例】
大学で法律を専攻し、法律を使った仕事に興味をもち裁判所職員という仕事を知りました。裁判傍聴や説明会に参加し、当事者の生活に大きな影響を与える裁判に、中立・公正な立場で携わり裁判を円滑に進行していくという裁判所職員の役割に魅力を感じ志望しました。
◼︎ポイント
次の欄に「やってみたいこと」を述べなければならないので、ここでは、志望動機(きっかけ)だけを述べて下さい。
具体的には、
①裁判所職員の仕事をいつ知ったか、どこで知ったか(裁判所職員の仕事はマイナーなため)
②裁判傍聴や説明会で、裁判所の役割もしくは裁判所職員の役割をどう感じたか
※弁護士や検察と異なり、一方当事者に肩入れすることはありません。つまり常に中立公正の立場です。
※事件の解決は裁判所にしかできません。その裁判所を運営する人も絶対に必要になります。
このような点を意識するとよいでしょう。
②「裁判所職員としての抱負(取り組んでみたい仕事、あなたが貢献できること等)」
【回答例】
刑事部での仕事に興味があります。特に裁判員裁判では、一般の方が来庁され様々な不安を抱えていると思います。その際に、わかりやすい説明や丁寧な接遇をすることで、安心して参加していただけるよう努めていきたいと考えます。また、すべての職務において的確に処理していき適正な裁判運営に貢献していきます。
◼︎ポイント
まず、民事部・刑事部・家事部など、興味のある分野を示すと書きやすいでしょう。たとえば、大学で民法のゼミに所属していたなら、ゼミを通じて民事事件に興味をもった、という内容でも説得力があります(民法の基本的な知識を生かしたいという貢献度も示せます)。
民事・刑事のように細かく分けなくても、「裁判部」でも問題ありません。裁判手続に携わりたいこと、そこでは何が活かせるのかを示して下さい。
3 まとめ
これから一生の仕事とする公務員の仕事です。志望動機がふわふわしている人は、せっかく入庁しても退職してしまうことがあります。退職しなくても、やる気がおきずにグチだけ言って勤め続ける人もいます。
これは、その公務員にとっても、採用側にとっても、ひいてはその自治体や国にとってもデメリットにしかなりません。しかも、その公務員には「税金で」給与が払われているわけです。
したがって採用時には、面接官は「熱意」をもって働き続けてくれるひとをとにかく採用したいと思っています。
志望動機で、①仕事を理解していること、②その仕事にどうしても携わりたいという熱意を感じること、を面接官に示せれば、志望動機の点ではクリアするでしょう。
そのためには、説明会やセミナーなどに参加し、自治体や人事院で出しているパンプレット(最近はとても立派なものが用意されています)を熟読し、どんな仕事ができるのか、どんな仕事に興味があるのかというのを、しっかり自分の心に問いかけていってほしいと思います。
また、質問は他にも様々なことを聞かれます。よく聞かれる質問への対応策を知っておきたい方は公務員試験の面接で聞かれる定番の質問の答え方を参考にしてみてください。
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