東京都I類Bの採用試験において最終合格は1次試験と2次試験の成績を合算して決められるため、1次試験だけでなく2次試験において得点することもかなり重要です。
毎年ボーダーぎりぎりで1次を通過した受験生が高順位で最終合格することもしばしばあります。一方で、筆記試験が高得点でも面接で落とされる人も私の周りで数人いました。
東京都I類Bの2次試験の倍率は基本的に2倍程度で、他の自治体と比べると数字的な倍率はあまり高くありません。そのため、1次試験合格後の燃え尽き症候群と相まって、面接対策を充分にしないまま本番を迎える受験生がいます。
しかし、東京都の採用試験の受験者のレベルはかなり高く、国家総合職試験を最終合格した受験生でも1次落ちや、2次落ちはざらにあります。
また、1次試験の試験科目が他の自治体と比べると特殊なのが都の試験の特徴です。3科目を専門記述で書かせる試験は、他の試験種にはなく、併願に大きな負担がかかることからも、受験生の多くが都を第一志望として仕上げてきます。
2次試験を受験するためにはそもそも1次試験を通過しなければいけないので、受験生の皆さんの意識はきっと1次試験に100%注がれていることかと思います。
とはいえ、最終合格のためには、絶対に2次試験の対策の方をおろそかにするわけにはいきません。
面接突破のためには面接官に自分を売り込む必要があり、そのための武器として志望動機を作っていく必要があります。
以下では、東京都に内定をもらうための志望動機の考え方について紹介していきます。
この記事の目次
1 志望動機の重要性について
東京都I類Bでは、面接シートの3つ目の項目で6行程度志望動機を記入する欄が設けられています。面接ではこの面接シートを基に質問されますので、志望動機の作りこみは面接を成功させるうえでとても重要です。
それでは面接の成功とはなんでしょうか。それは3人の面接官に、自分が東京都で働ける人材であることを説得することに成功することです。東京都で働ける人材とは、特に優秀な人材や能力を持った人間ではなく、真面目で、本当に東京都で働きたいと思ってくれている受験生のことです。
もし定年まで働くとすれば、約40年、賃金にすると数億円を支払ってその受験生を雇い入れるわけです。教育にかかるコストのこともありますし、その受験生に途中でやめられては困ります。
どの組織でも共通することではありますが、都で辞めずに働いてくれそうな人を確保することが当然面接でも重視されますので、やる気をアピールすることはとても大事です。
そして、やる気の伝わるとても有効な手段の一つが志望動機です。自己PRや面接全体を通してやる気をアピールする機会はありますが、志望動機を差別化することも自分のやる気を伝える上では重要なのです。
2 自分だけの志望動機を作ろう!
面接官は1日に何人もの受験生を見ていますが、基本的に受験生の発言は似たり寄ったりです。
私が面接対策をしたグループでも、6,7名ですが志望動機が重複することは多々ありました。
面接官も人間ですので、何回も聞かされる似たり寄ったりのテンプレート返答には飽き飽きしているでしょうし、もしあなたが面接官でもそんな受験生にどこで合格の決め手を見出していいかわからないのではないでしょうか。
一方で、その似たり寄ったりの受験生たちの中から離れ、自分だけの志望動機を見出し、それをアピールすることができれば、面接で有利に戦えると思います。
よく面接でいわれる話ですが、面接後に面接官が評価シートを記入する際、その受験生がどんなだったのかがよく思い出せないようなら、その受験生の評価はかなり低くなってしまうというものです。東京都ではどうなのかはわかりませんが、できるだけ確実にポイントは稼いでいきたいところです。
3 本音と建て前について
東京都を受験する方の志望理由は様々ですが、やはりネームバリューで選択する人は多いです。地方公務員の仕事はどこも似たり寄ったりで、結局は財政規模やネームバリューで決めてしまうようです。
それは別に悪いことでもなんでもなく、そこに自分の仕事のやりがいや責任感を感じることができるのなら、むしろいいのではないかとも考えます。
とはいえ、じゃあなぜ東京都を志望するのかをESに記入する際や、面接官に質問された際に、「ネームバリューで決めました!」と受験生に言われたらどうでしょうか。面接官としては、「君正直ではっきりしてるね!」とはならないでしょう。
結局のところ、そのネームバリューに依存していることのアピールは、40年間働ける人材であるか判断する上でポイントにはつながりません。
都の仕事は多様で、地味な事務仕事も溢れるほどあります。ネームバリューに依存する受験生は実際に都で働くようになった際、「こんな仕事をするために都に就職したわけじゃない」といって辞められては、人事としてはたまりません。現に一定数退職まではいかないにしろ、そう思われる職員は多いようです。
更に、面接という勝負の場で、本音をあけっぴろげに曝け出す姿勢は正直よりもむしろ、「この受験生大丈夫だろうか」という心配を面接官に抱かれかねません。
役所の人間としてだけでなく、民間でもその人間性は社会人として疑いをもたれるのに文句は言えません。
特に地方公務員は、その地方の住民に見られるという立場であるため、どこに目や耳があるかわかりませんので、組織としては株を下げてしまう可能性のある受験生はなるべく取りたくないと思われるのではないでしょうか。当然そう思われたなら、いくら倍率2倍といえども不利になってしまうでしょう。
となると、建て前だけで志望理由を語り、面接官を充分に説得できるのかというと、それはそれで難しいと思います。
前述のとおり、どの受験生も同じようなことを言うため、志望理由という重要なアピールポイントをプラスマイナスゼロで終わらせるのはもったいないです。また、建て前だけではその受験生の人間性を把握することができませんので、面接ではマイナスになってしまいます。
つまり、本音と建て前をバランスよく織り交ぜることが、志望理由に説得力を持たせる有効な方法のひとつであると言えます。
4 自分だけの志望動機を作るために
東京都の特徴は、①財政規模や、②政策の影響力が他の自治体と比べて大きく、国とは違い、③都民と直接関わりながら施策を考えることができます。また、④様々な分野の職務を経験することができ、⑤地方公共団体のリーダー的役割を担います。
志望動機を作る際、おそらく皆さんはこの辺りの特徴をいくつか取り上げて、それをまとめることが多いと思います。私は自身の面接カードを作成する際、他の受験生のものを参考にしながら、自分なりのものを作ろうとしていました。
そのために、大学の職員や様々な方にアドバイスをいただきながら作成し、過去の受験生の面接カードや出来のいいものや悪いと言われるものもたくさん見ることができました。
それらの面接カードの中でも、出来が悪いと言われる志望動機には共通点がありました。それは、「客観的事実しか書いていないこと」です。
例えば、「私は、財政規模が大きく、その政策の影響力が他の自治体も大きい東京都の職務に責任感ややりがいを感じることができると考え、東京都を志望しました。また、私はかねてより○○に携わりたいと考えており、○○という取り組みを通じて東京都をより良い都市にしていきたいです。」というような志望動機です。
見たらわかるように、ただの客観的事実しか書いておらず、なぜ、どのように自分のやりがいにつながるのかが不明です。結局この受験生はどういう人間なのかを把握することができません。
一方で、「私は○○という経験から、○○という職務に携わりたいと考えており、都のインターンシップや○○に参加した際、職員の方の○○という話を聞き、その職務の○○に魅力を感じました。また、規模が大きく、様々な分野を経験できる都の職務にやりがいを感じられると考え、都を志望しました。」という志望動機ではどうでしょう。
分量的には変わりませんが、例文の出来の良し悪しは別にして、こちらの方がより受験生の考えていることを伝えることができるのではないでしょうか。
志望動機に自分が実際に体験したことや、志望したきっかけになることを書くことで、後半部分はほぼ一緒でも、その受験生独自の志望動機にすることができます。
また、面接官に志望動機を伝える際も、受験生がそれぞれ持っている体験を織り交ぜることで、自分だけの志望動機にすることができます。その志望動機は説得力に大きくつながるため、面接での大きなプラスポイントになります。
5 志望動機をつくるには
以下ではよく聞かれる質問についてどのように考えればよいかをご説明します。
なぜ民間ではなく公務員なのか
これらの違いは対価関係に結びついているかどうかである、というものがしばしばいわれます。確かにその通りで、企業は商品を購入、契約してくれる消費者を相手にするのに対して、行政は全員に対してサービスを提供します。
とはいえ、行政も慈善事業ではありませんので、誰でも彼でもサービスをばらまくことはできません。
そう言った面で、本質的なところでは、民間も行政も大きな違いはないと思います。その上で、なぜ行政の仕事に興味を持ったのかを考えてみると良いでしょう。
(地方出身者の方は)なぜ地元でなく東京都なのか
私もそうでしたが、生まれてこの方東京都に縁もゆかりもない受験生が都を受験する際、どのように志望理由をアピールしたらよいのでしょうか。これは結構悩みどころで、多くの地方出身の受験生がぶつかる壁です。
地元より都が優れている面を考えるのもいいですが、逆に都よりも地元が優れている面も考えてください。また、似たような業務や取り組みを行っている場合、それでもなぜ都を志望すると決めたのかについても考えなければなりません。
東京都は地方出身者にとても寛容ですので、地方出身だからとあまり心配する必要はありません。毎年多くの地方出身者が合格していますし、現に私の周りでも多くの地方出身者が合格しています。
むしろ地方出身者は面接の際になぜ地元でなく東京都なのかを聞かれることが多いため、対策さえしてしまえば有利に働くことさえあります。あくまで、どこの出身であろうとも、面接官を説得することができれば、面接では大成功です。
なぜ区や市ではなく都なのか
与えられている権限や、取り組みが違いますし、都民と関わる頻度も違います。具体的な区や市の取り組みについて調べてみると良いと思います。
なぜ国ではなく都なのか
規模の大きい仕事と言えばまず国に働くことが思い浮かびますが、それでもなぜ都を選ぶのかについて、考えてみてください。
都で何がしたいのか
どういった取り組みに携わりたいのかを具体的に思い描きながら、その上で都をどういった都市にしていきたいのかを考えると良いと思います。
都であなたはどう貢献できるのか
あなたが携わりたい取り組みで、あなたはどういった役割を担いたいのかを考えてみてください。それにはどんな能力が必要とされるのかも考えてみてください。
その貢献を裏付ける経験
これは非常に重要です。上記の能力を客観的に裏付ける経験を思い返してみてください。どんな些細なことでも、経験の種類に良し悪しはありませんので、具体的に話せるエピソードも筋道立てて話せるように準備しておくと良いでしょう。
その他、よく聞かれる質問については公務員試験の面接で聞かれる定番の質問の答え方【講師が解説】で紹介していますので、参考にしてみてください。
6 志望理由を考える上で参考になるもの
東京都の志望動機を作る上で、都政研究はとても大事になります。
面接においても、志望動機を答えるとほぼセットになって具体的にどういった点に東京都の魅力を感じたのかを聞かれます。
そこで都政を研究し、取り組みを具体的に挙げられたかどうかで、受け答えの説得力はまったく違ったものになりますので、是非受験生の皆さんは志望動機を作る上では都政研究をすることをおすすめします。
以下のページより2018年版の内容を見ることができます。2年おきに発行されているようなので、2021年になると2020年版に更新されると思いますので、最新版については常にチェックしてください。
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/tokyoto/profile/tosei2018.html
最近のものですので、より今の都政を知りたいという受験生はぜひ長期ビジョンと併せて読むことをおすすめします。
面接対策用としては、都政2018で気になった取り組みをインターネットなどで調べると詳しくわかります。
7 まとめ
都庁に限りませんが、志望理由で重要なことは「自分だけの志望理由」を伝えることです。
相手は面接のプロですので、当たり障りのない志望理由やどこかから取ってきたものを伝えても決してよく思われません。
なぜ都庁なのか、都庁で何をしたいのかをひたすら考え、それらを自分の経験に紐付けられるようしっかりと対策して臨むようにしましょう!
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