この記事の目次
1.はじめに
公務員試験用の筆記試験を勉強していると、この試験勉強内容を他のところでも活かせたら良いのになぁと思う方もいることでしょう。
実は、心理・福祉職の専門科目学習が、直接活かせる独立行政法人があります。その法人名は、「独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構(JEED)」です。
本記事では、独立行政法人の説明から始まり、独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構(JEED)の職務内容などをお伝えし、最後に試験内容(令和6年度実施ベース)をお伝えします。
皆さんの進路選択の一考になれば幸いです。
2.独立行政法人とは?
そもそも、独立行政法人がどういうものなのかを把握しましょう。
独立行政法人とは、「国民生活や社会・経済安定などの公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務・事業」の中で、「国が自ら主体となって直接実施する必要はないが民間に委託することは不適切であるもの」を「効率的かつ効果的に実施させることを目的として設立された法人のこと」です。根拠法は独立行政法人通則法です。
例えば、共通テストをつくっている「大学入試センター」は独立行政法人です。それから、途上国を中心として海外に約100ヵ所、国内に15ヵ所の拠点を持ち、日本から各分野の専門家・ボランティアの派遣や、途上国からの農業、教育、保健医療などの研修員受け入れなどを通じて、途上国の経済・社会発展を支援する「国際協力機構(JICA)」も独立行政法人です。
そして、本記事の高齢・障害・求職者支援機構(以下、この記事の本文中では英語の略称であるJEEDとのみ表記します)も、厚生労働省所管の独立行政法人です。
独立行政法人は、先に紹介した定義の中に、国が直接実施をしないとありますので、ここで働く方の身分が公務員というわけではありません。ただ、業務の公共性は高く民間にさせるのが難しい(急にその企業がつぶれてサービスがなくなるわけにはいかない)ということですから、資金や人員などをそれなりに整えた組織として、業務を担うことが伺えます。したがって、働く側となって考えると、職員の身分的安定度は高いとはいえます。
公益性の高い事業をしていて、民間企業より身分が安定している仕事を考えている公務員受験者にとって、独立行政法人も魅力的な応募先になるのではないでしょうか。
3.独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構(JEED)の職務内容
では、JEEDの職務内容はどのようなものとなるのかを具体的に見ていきましょう。その際、組織名にあるとおり、①高齢者事業、②障害者事業、③求職者事業に分けると分かりやすいです。
①高齢者事業
→高齢者等の雇用に関する相談・援助・給付金支給
→高齢期の職業生活設計に必要な助言・指導
②障害者事業
→いわゆる「アビリンピック」(全国障害者技能大会)の開催
→埼玉県にある中央障害者職業能力開発校、岡山県にある吉備高原障害者職業能力開発校における職業訓練の実施
→障害者職業センターの設置・運営
→障害者雇用給付金関係の業務
③求職者事業
→職業能力開発短期大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発促進センター、職業能力開発総合大学校等の設置及び運営
→求職者支援訓練の認定及び訓練の実施に必要な助言・指導
→雇用促進住宅を譲渡又は廃止する業務及び譲渡等するまでの間の管理運営業務
労働市場において弱者になりがちな高齢者や障害者の就業支援や、職業能力の開発といった、非常に公共性の高い業務であることが分かります。
4.独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構(JEED)の採用試験情報
それでは、JEEDの採用試験についてお伝えします。
まず、JEEDでは、①事務職員、②障害者職業カウンセラー職、③職業訓練指導員(職業能力開発職と障害者職業訓練職)に採用区分が分かれます。順にどのような内容が採用試験となっているかを、令和6年実施ベースでお伝えします(新卒年齢~32か33歳以下までに向けた試験を例にとりますが、中途採用もあります。興味ある方はJEEDの採用URL(https://www.jeed.go.jp/saiyou/)をご確認ください)。
なお、本記事の目的である公務員学習と重なる点が多いのは、②の障害者職業カウンセラー職となります。
①事務職員
一次試験は書類審査と基礎能力試験です。基礎能力試験は、言語・数理・論理等に関する出題がされるWEB試験とのことです。概ね、SPIなどの準備ができていれば回答できるレベルのものだと言われています。
二次試験は面接試験です。
②障害者職業カウンセラー職
一次試験は書類審査・基礎能力試験・小論文・専門試験です。基礎能力試験は①の事務職と同様に、言語・数理・論理等に関する出題がされるWEB試験とのことです。概ね、SPIなどの準備ができていれば回答できるレベルのものだと言われています。
小論文は60分ほどで800字以内の文章を書くことが要求されます。
専門試験は、心理学・教育学・社会学・社会福祉学から1科目を出願時点で選びます。出題内容は公務員だけではなく、多肢選択式だけでなく、一部記述も含まれます。とはいえ、そのせいで難易度が高くなり過ぎていることはありません。基本的な用語の理解で大丈夫です。JEEDが公開している問題のURL先を貼っておきますので、確認ください。
https://www.jeed.go.jp/saiyou/recruit/doc/counselor_reference.pdf
二次試験は面接試験です。
②は①に小論文と専門試験が追加されているイメージで大丈夫です。そして、①と②は併願できます。つまり、②も①同様に、新卒等の区分にあたる33歳までという年齢の制約以外に、学部・学科の縛りはありません。SPIと専門科目1つをしっかりやり込めば挑戦できるという意味では、筆記試験の負担が軽い試験といえるでしょう。心理・福祉系の公務員を目指している方には、非常に併願しやすいと言えます。
③職業訓練指導員
令和6年度は機械・電気・電子情報・建築などに関連する四年制大学の学科卒業(見込)者対象でした。年度によりどの専門を有していて欲しいかは変わってきますので、募集年度を詳しくみておきましょう。
一次試験は、書類審査・基礎能力試験です。
そして、二次試験に、専門試験と面接試験があります。なお、二次試験の中では、説明力確認という「指定する基礎的な工学知識について説明」をする中で、説明力の確認がなされるものもあります。
なお、職業訓練指導員については、全国を9ブロックに分け、そのうち希望するブロックでの勤務をベースに、時々キャリア形成の観点で他ブロックでも勤務するスタイルです。したがって、全国転勤が可能であることが求められます。
これに対し、①と②の職種では令和7年4月採用から東北・中国・四国エリアについて、地域限定織が選べるようになりました。この場合、全国型より俸給が5%少なくなるようですが、自身の地元で働きたい意志が強い方にはありがたい選択肢といえるでしょう。
1.はじめに
高齢者や障害者の就業支援や、職業能力の開発を担うJEEDは、事務職員、障害者職業カウンセラー、職業訓練指導員の3つの職種に大別されます。どの職種でも、書類審査と、民間就職でも用いられているWEBテストの筆記があります。
これに、障害者職業カウンセラーや職業訓練指導員は専門科目の試験対策が必要となります、ただ、障害者職業カウンセラーの専門科目対策は、公務員試験の心理学、教育学、社会学、社会福祉学の1つで良いため、心理・福祉系公務員を考えている方には併願先の1つに捉えても良いかなと思います(小論文を書く練習も公務員試験と共通します)。
ちなみに、社会学の学習方法や小論文については下記をご確認ください。
今後も、公務員試験をベースに、その学習が活きる多様な受験先の紹介もして参りますので、自身の進路選択の一助に利用頂ければと存じます。