1.はじめに
公務員試験で専門試験がある方の中には、どの科目を学習しようかと悩む方もいると思います。特に、憲法・民法・経済学・行政法などはどの試験種でも出題されるため、選ぶことが多いと思うのですが、それ以外の科目はどうしようかと悩むわけですね。
このとき、重要なことの1つが、各科目の攻略法を知ることです。なぜなら、その攻略法を知って、実践できるのであれば選択すれば良くなり、難しそうであれば違う科目を利用することになるからです。
そこで本記事では、行政事務に携わる試験種の専門科目として出題される「政治学」の攻略法をお伝えします。
ちなみに、タイトルに8割ゲットとしているのは、公務員試験は概ね6〜7割の得点で合格するため、8割取れる=合格に大きく寄与できる科目=得意科目になったことを意味します。すなわち、政治学を得意科目にする学習方法を教材を紹介しつつ行います。
なお、学習方法は独学を想定した方法をご紹介します。
2.政治学の位置付け
(1)出題数
政治学の出題は令和6年度実績で、以下となっています。
国家一般職・・・・・・科目選択式で1科目分=5問(40問回答)
国税専門官・・・・・・科目選択式で1科目=6問(40問回答)
※社会学・社会事情と併せて6問
財務専門官・・・・・・科目選択式で1科目6問(40問回答)
特別区・・・・・・問題選択式最大5問(40問回答)
地方上級・・・・・・全国型・関東型・中部北陸型問わず2問(全国型のみ必須)
(2)出題内容
学習する内容は、下記に大別されます。
①政治制度
日本や各国(=英米仏独中が中心)の立法・司法・行政の状態と作用、選挙制度などが出題されます。教養試験の社会科学政治と重なる範囲ですので、教養試験対策にもなります。
②政治的アクター
政党や圧力団体、マスコミなど、政治に登場するアクターとその影響について学習します。実態だけでなく、理論や概念化などをした政治学者を覚えておくことも必要な単元です。
③政治思想、政治意識と政治文化
自由主義、社会主義、民主主義などの政治思想を学びます。ここでは、特に時代ごとの政治学者(ないし思想家)の捉え方を理解することが求められます。社会契約説など、一部は教養試験と同一人物ですが、様々な人物が出てくるため整理が必要です。
それから、政治意識や政治文化の単元では、現代の大衆社会における政治的無関心や、現代国家の多様性が政治文化からもうかがえる点などを学習します。
④権力論、リーダーシップ論
一~三次元的権力論、リーダーシップ、支配の正当性などを学習します。ここも②や③などと同様、項目ごとに有名な学者がいいます。
⑤日本政治史
特に、戦後史が頻出です。教養の日本史や政治の歴史分野と重なるジャンルと言えます。
(3)難易度
上記の「①政治制度」と「⑤日本政治史」はそこまでの難易度でないため取り組みやすいです。また、「②政治的アクター」は、政党や圧力団体、マスコミなど現代社会に存在するものをみる視点であるため、身近なことを利用して覚えることで、比較的攻略しやすくなります。
一方、「③政治思想、政治意識と政治文化」や「④権力論、リーダーシップ論」は抽象的な概念がたくさん出てきますし、独特な用語もあり、とっつきにくいです。さらに、取り上げられる学者(思想家)の数も多いため、覚えることが多く厄介です。政治学攻略が上手くいったか否かは、この分野をおさえることにあります。
3.おすすめの勉強法と参考書紹介
(1)おすすめの勉強法
おすすめの学習法は、いきなり過去問からはじめる分野(ア)と解説本を読むことから始める分野(イ)に分けるというものです。
(ア)
アは、「①政治制度」「②政治的アクター」「⑤日本政治史」の分野です。ここは難易度も低いため、スーパー過去問などのポイント部分を読んだら、いきなり問題に取り組みつつ、解答解説を読み込む学習をしましょう。
(イ)
イは、「③政治思想、政治意識と政治文化」と「④権力論、リーダーシップ論」です。ここは、『寺本康之の政治学ベストプラス』の単元1~3、7、11~13を読んでから、スーパー過去問へ進むという形をとります。
もちろん、時間がある方は、『寺本康之の政治学ベストプラス』を通読してからスーパー過去問へいってもOKです。ただし、政治制度は最新版の方が良いので、スーパー過去問の最新版の知識を優先しましょう。
(2)その他、おすすめの参考書について
上記に挙げたスーパー過去問7と『寺本康之の政治学ベストプラス』以外のおススメ参考書としては、受験生の困りごとタイプ別に以下となります。
■公務員試験 過去問攻略Vテキスト (10) 政治学
まず、スーパー過去問よりももう少し言葉の説明が欲しいが、図も欲しいという方は、TAC出版の『Vテキスト10 政治学』が整理されつつ、説明もあるのでおススメです。
■戦後日本政治史 占領期から「ネオ55年体制」まで
次に、政治史が頭に入りにくい方と、思想史が入りにくい方は、以下の参考書がおススメです。これは、日本史や思想という教養問題の攻略にも役立ちます。
戦後の日本政治史としては、『戦後日本政治史 占領期から「ネオ55年体制」まで』(中公新書)がまとまっています。なお、大学受験参考書ですと、近代史が分厚すぎて、現代史がうすいので控えましょう。
■蔭山の共通テスト倫理 改訂版 (大学受験Nシリーズ)
これに対し、思想の方は、大学受験の倫理本をおさえましょう。具体的には、『蔭山の共通テスト倫理』です。この本の西欧思想を通読しておくと、思想史的な背景が分かり、政治思想も分かりやすくなります。
■政治学 (演習ノート)
また、都庁を受ける方で、記述にも対応したい人がいることでしょう。それに対しては、『政治学演習ノート 第5版』(法学書院)がまとめられてて良いでしょう。
4.おわりに
政治学は、ベースとしての学習方法は、とっつきやすい分野ではいきなりスーパー過去問7のやりこみです。難しいものは、寺本氏の解説本を読んでから過去問に挑みましょう。その他、自身の前提知識や使い方に合わせて上記の本も参照してみてください。
スーパー過去問が8割程度できれば、当日も8割くらい取れます。また、教養試験で問われる日本史の現代史、思想、政治などに活かせます。この辺りをモチベーションに、ぜひ政治学を攻略しましょう。
皆さんの学習を応援しています。つまづいたり、悩みがあれば、究進塾の公務員講座をご利用ください。