公務員試験種の中には、経営学という科目の出題がみられるところがあります。
この記事では、どの試験種に出るのか、難易度はどのくらいか、そもそも経営学はどのような学習をするのかなどについてお伝えします。
その上で、有益な学習方法を紹介します。
この記事を通じて、コスパの良い科目(=学習時間が少ないのに、得点しやすい)ということに気づいていただき、自身の受験戦術に組み入れていただければ幸いです。
1.経営学の出題状況
経営学は、公務員試験の中では、専門科目に位置づけられます。したがって、教養試験のみの試験種では出題はみられません。
そして、経営学の出題状況は、下記の通りです。
試験種 | 選択か必須か | 難易度 | 出題数 |
---|---|---|---|
国家一般職 | 選択 | 難 | 5 |
国家専門職 | 選択 | 普通 | 6 |
地方上級 | 関東型…選択
全国型…必須 |
易 | 2 |
特別区 | 選択 | 易 | 5 |
なお、地方上級の中部北陸型、裁判所事務官では出題がありません。また、専門科目のある市役所も大抵は出題がありません。
難易度は、国家一般職が、初見の学者や概念を用いて問う問題が出てくる厄介な年があるため「難」としました。それ以外の試験種では難易度は安定しており、普通か易しいくらいのレベルしか出題されません。
そのため、後述しますが、過去問などをしっかり解く練習をしておけば、すぐに得点源科目にすることができます。
2.経営学とは?
そもそも、経営学とはどのような科目でしょうか。一言で表現すると、企業や組織を管理・運営するための戦略や手法について研究する学問です。この定義を、以下の具体例によってよりイメージしていきましょう。
例えば、ある人がカフェを開くとしましょう。このとき、世の中にはたくさんのカフェ(競合店)がありますので、自らのカフェを、古民家カフェなのか、動物と触れ合えるカフェなのか、コーヒー豆にこだわった本格派のカフェなのか……と位置づけを決めると思います。
これは、言い換えればどのようなコンセプトで店を開くかということです。経営学では、こうした企業や組織が持つ方向性についてなどを、①経営戦略という単元で学習します。
次に、どのくらいの人を雇って研修し(労務管理)、どのように人を呼び込めば良いか(マーケティング)、お金の管理はどうしたらいいだろうか(財務管理)などを、このカフェオーナーは考えるでしょう。この分野を、②経営学各論という単元として経営学は扱います。
それから、カフェは、小規模であれば個人事業主として行っているかもしれませんが、株式会社という組織形態で行うことが普通です。しかし、世の中には、認知症カフェなど社会福祉を目的としたカフェがあり、NPO法人が行っていたりします。ここから、色々な組織があることが分かります。経営学では、③組織形態としてこのことを学びます。
最後に、経営学にも、企業・組織の経営にも歴史があります。前者は、学説が歴史的変遷をたどっているわけですが、この分野を④経営学史といいます。後者は、⑤経営史・経営事情です(⑤は現代企業の経営手法が公務員試験では特に問われるため、単に経営事情とする場合もあります)。
このように、①経営戦略、②経営学各論、③組織形態、④経営学史、⑤経営史・経営事情の5分野で構成されているのが経営学です。そして、公務員試験も、この5分野から出題されます。
3.経営学の勉強法
(1)勉強法=学習順番にこだわる
公務員試験の経営学を攻略する上で大切なのは、学習する順番です。結論からいいますと、経営学は経済系科目(ミクロ・マクロ経済学、会計学など)や行政系科目(政治学・行政学・社会学)の学習後に取り組むようにしましょう。
理由は、最後に学習すると、(2)で挙げた参考書をやりこめば済むようになるからです。言い換えますと、経営学は、他科目の知識が活かせるということです。
例えば、行政系科目の行政学には、行政組織をいかに効率的に業務する組織にしていくかという内容を学びます。ここで、使われた手法が経営学の取り入れでした。したがって、その際に出てくる学者が、経営学でも出てくるのです。先に色々な科目で触れられた事項があると、予備知識がある状態になるので学習が効率よく進みます。
ところで、他の科目への関連性だけなら、経営学を先、行政学を後でも良いのではないかと思うかもしれません。しかし、行政学などの行政系科目は経営学よりも捨てにくいと考えられており、その分、対策本が充実しています。他方、経営学は出題数0のところもあるので、選択をそもそもしない人もいるせいか、あまり対策本が充実していません。
ということで、先に、対策本が充実している行政系科目や経済系科目を学習して、いろいろな知識をもっておいた上で、経営学に挑むようにしましょう。
(2)参考書とお奨めの使い方
上記(1)のように、学習順番にこだわった場合、かなり予備知識があります。この状態で、経営学の学習に入ると仮定すれば、参考となる書籍は、『スーパー過去問6 経営学』の一択です。
この本を、レジュメ部分を読んでから解くようにしましょう。解く際は、1週目は、全選択肢において問題・解説ともに目を向けましょう。間違いの選択肢をどうしたら正解の選択肢になるかを確認しながら行ってください。
後は、2週目は実力で行い、そこで漏れていた問題のみ3週目を行います。この辺りは、大抵の暗記科目と同じかと思います。この作業をやり込めば、試験当日、8割は固い得点が取れます(ただし、国家一般職で見慣れない学者ばかりの年は、諦めて他の科目を選択しましょう)。
なお、どうしても経営学は学習期間の最後に行いますので、試験までに時間がない方もいると思います。その場合は、この参考書の⚡マークのついた問題だけでも行いましょう。
また、経営学は、歴史があるとはいったものの、せいぜいここ150年ほどのことです。したがって、経営学者の顔写真などがネットでは載っていることが多いです。人名を覚えるのが苦手な方は、ネット検索してビジュアルとセットで覚えるのも有益な作業です。自分なりの暗記法もお使いください。
まとめ:経営学不要の人以外は捨てずにやっておこう!
経営学について、「捨ててもいいですか」と聞かれることが指導上、多々あります。もちろん、出題数が0の試験種を本命としている人には、必要ないので、捨てるというか学習しない選択で構いません。
他方、国税専門官の志望が高い人や、法律系科目がどうも苦手で行政系科目のような学者と学説を覚えることが苦でない人には是非お勧めの科目です(経営学を行わない場合、刑法や労働法を勉強せざるを得ませんので、法律は憲民行でお腹いっぱいという方もいるでしょう)。
国家一般職志望の方も、難易度が高い年があるといいましたが、逆にいうと低い年もあります。加えて、学者と学説絡みの科目は、政治学だろうと、行政学だろうと、国家一般職は急激に難易度が上がる年があります。このとき、経営学が通常通りか易しめの難易度であれば、こちらを選択した方が良いことも起こります。
それから、地方上級を中心に、教養試験の経済では、経営用語が出題されることもあります。
このようなことを鑑みますと、経営学は、必須あるいは選択できる試験種が本命な場合、学習期間の最後の時期に、『スーパー過去問6 経営学』使って詰め込んでおくというのがベターな選択です。
これを参考に、ご自身の受験戦術を考えていただければ幸いです。