『地方自治体職員のキャリアパス、気になる分岐点はココ』 | ASK公務員 - 個別指導/論文・面接カード添削の公務員試験対策塾

『地方自治体職員のキャリアパス、気になる分岐点はココ』

  • 2024年7月18日
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ASK公務員 編集部
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1.地方自治体の独特なキャリアパス

(この記事では、育児休暇及び育児休業をまとめて「育休」と表記しています)

公務員の中でも地方自治体を目指す方は、入庁してからどのような職員を目指しますか?
具体的には、どんなキャリアパスを思い描いていますか?

そんな地方自治体の職員のタイプは、大きく次の2つに分けることができます。

A 常に仕事重視で耐性の高い、タフ職員たちの幹部職員コース
B 仕事と育児など私生活との両立のため、負担を避け出先を好む職員コース

残念ながら今までは、Aには男性職員、Bには女性職員が多く配置されていました。

しかし、女性の社会進出や価値観の変化を受けて、Aに女性職員が登用されるようになったり、Bでは家族との時間を重視する男性職員が増加してきています。

とある自治体で私が所属していた予算部門は、庁内で最も時間外勤務が多い部署でした。
配属された女性職員は全て独身で、「あそこには独身女性しか配属されない」と哀しい噂をされていました。

1-1 職場で重宝される人材

官民共通していることですが、職場が欲する人材は、時間外勤務などの業務の負荷も受け入れながらしっかり働く職員です。
よって、そうした要請に対応できるような、未婚の職員が広範囲の所属で重宝されています。
また結婚していても、子どもがいなかったり家族の世話に心配がない職員も重宝されます。
このような職員が適正・耐性を評価されながら、Aコースを歩んでいくのです。

1-2 キャリアパスの分岐点

地方公務員のキャリアパスは多数存在し、その分岐点はいくつもあります。
その中で分かりやすい分岐点は、「あなたの子どもの出生時」です。

近年の地方自治体では、子どもが誕生すると男性でも1か月以上の育児休暇を取得することを強く勧められます。
なぜならば、部下の一定期間以上の育休取得が、上司や所属長としての評価基準であることが多いためです。

「子どもが誕生しても休みたくない!」と強く思っている男性職員でも、この最低日数だけは組織に従った方がよいでしょう。
そしてその育休明けに、キャリアパスの分岐点が待っています。

2.育児に時間を割く職員の処遇

地方自治体をはじめ公務員組織は、福利厚生が手厚く用意されています。
国の定める育児休業制度よりも、自治体独自の育児休暇がはるかに手厚いことが多いので、自治体職員は育児時間を確保しやすいことでしょう。

そして「育児と仕事を両立したい!」という職員にも対応したキャリアパスが存在しているため、理不尽な退職を迫られるということもないでしょう。

特に地方自治体は地元の民間企業に対して、従業員の育児環境の充実を求める立場です。
さらに自治体職員の労働組合との関係を鑑み、育休取得を決して疎かにできません。
育休期間についても、男女問わず最低1ヵ月以上の取得を強く勧められ、女性は1年以上休業するパターンが多く見受けられます。
また喜ばしいことに、価値観の変化により男性の育休取得期間も長期化しています。
育児などの家庭の事情を重視する職員は、育休から明けても地方機関や融通の聞きやすい部署間を異動することが多く、Bコースに分類されるようになります。

2-1 育児に大事だが、市町村と道府県で大きく異なること

育休明けの職員は子どもの世話をするため、業務の融通の効きやすい部署や、自宅から近い地方機関(いわゆる出先)を選択することが多くなります。

その際、市町村と道府県職員の職員を比べると、勤務地の範囲を痛感することがあります。
特に道府県庁では、地方機関同士の距離が大きいので、勤務地によって転居を強いられることもあります。
一方の市町村職員の勤務地は、原則として自治体内で勤務するので転居とはまず無縁です。

2-2 地方機関を異動し続ける職員

自治体職員の中には中枢や本庁の激務に辟易し、地方機関を好んで異動し続ける方が存在します。
これは主に、職員労働組合の力によるところが大きいようです。
地方自治体の職場労働組員率はたいていの自治体で80%以上で、一定の力を有しています。
自治体の人事部署も、そんな組合及び組合員の意向を無視できません。
特に職員に「育児や介護などの家族の都合」という名目があると、人事はそれなりの融通を効かせるでしょう。

3.地方機関などを異動していても、子育て後にチャンスあり

育児のためにBコースを選ばざるを得なかった職員ですが、子育てがひと段落した頃にも、Aコースに進路変更するチャンスがあります。
まずは、各々の育休明けの際に行なう人事面談が最初のポイントです。
ここで管理職は、職員から今後の育児への注力予定を確認します。
そこで平素より職場の勤務態度や実績が評価されていると、本庁の中枢に呼ばれることがあります。
育休が明けても育児と両立している職員は、毎年の人事面談において育児の関与具合を聞かれます。
これは、人事評価の高い職員を中枢に送れるかどうかを判断する一つの要素となるためです。

3-1 キャリアパス変更のポイント

BからAコースへの変更ポイントは、結婚・育休前からしっかり人事評価を積み重ねていることです。
特に若手職員は、異動先で常に適性・耐性を見られています。
「適性」については、地方自治体の一般職のほとんどが事務作業なので、評価の幅は小さいと思われます。
むしろ年度末などに発生する膨大な業務や、重責に打ち克つ「耐性」が重視される傾向が強いでしょう。
いわゆる「タフな職員」が歓迎される傾向が強いでしょう。
そもそも人事担当の職員が、各職員の適性をどれだけ判断できるかには疑問が生じます。
しかし、耐性ならば長く勤務し続けるという観点で判断できます。
その結果、本庁の中枢はタフな職員が大多数を占めることになります。
そんなタフな職員もAコースに戻るとなると多忙で体力勝負の部署に配属されることが多いでしょう。
そのため、出来るだけ若い年齢で戻ると、順応しやすいとも言えます。

3-2 中枢に配属されると感じるギャップ

いざ中枢に配属されると、地方機関とのギャップに驚かされることが多いです。
特に企画・予算経理・人事などの管理系部門に配属されると、その多忙さに圧倒されることでしょう。
若いうちにこの辛さを味わった職員のなかには、「ここには二度と戻りたくない」と進んでBコースを希望する方も出てきます。

4.まとめ

地方自治体の職員には育児に対して手厚い待遇が用意されており、「育児に専念する/しない」が分岐点の一つとなります。
しかし、この分岐点のみで、以後のキャリア全てが決まるわけではありません。
子育て前から職場の評価をしっかり積み重ねておけば、育児がひと段落したあとに幹部に上がっていけるチャンスも残されています。
そういう意味では、とても可能性にあふれた職場とも言えます。
説明を行なってきたA・Bコースに職員の優劣など存在しませんし、子どもの有無で価値が決まるものでもありません。
しかし、育児をひととおり経験した職員がその自治体の幹部になると、その地方はきっと大きく変わることでしょう。
育児の大変さを実感した職員が、育児世代の助けとなる施策を立案・施行することで、その地方の新たな活気に繋がるためです。

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