1.はじめに
特別区Ⅰ類の採用試験に合格し、希望の区に有利な採用を得るためには「特別区受験者必見!2024年度受験対策版、社会科学の傾向と対策」の記事に載せたとおり、高得点での合格が求められます。
高得点のためには、一次試験の教養試験・専門試験・論文試験と、二次試験の口述試験の4試験において、できうる限りの高得点化が必要です。
本記事では、教養試験のうち、人文科学での高得点化を図るために、過去問分析、得点化のためにすべき準備について述べていきます。本年(2024年=令和6年)の受験にフォーカスしていますので、今年受験者は特に参照いただければと思います。
なお、別記事にて他科目の分析をしていきますので、そちらも参考頂ければ幸いです。
2.人文科学の過去問分析
人文科学は例年
■倫理・哲学1問
■歴史2問
■地理1問
の出題です。合計は4問となります。それでは、科目ごとに過去5年分の出題内容をみていきましょう。
(1)倫理・哲学
令和元(2019)年……実存主義の思想家
令和2(2020)年……生命倫理
令和3(2021)年……古代インドの思想
令和4(2022)年……江戸時代の儒学者
令和5(2023)年……中国の思想家
(2)歴史
歴史は、日本史、世界史から1問ずつ出題される傾向があります。以下は、日本史、世界史に分けて述べます。
【①日本史】
令和元(2019)年……鎌倉時代の仏教
令和2(2020)年……元禄文化
令和3(2021)年……日清戦争と日露戦争
令和4(2022)年……室町幕府
令和5(2023)年……国風文化
【②世界史】
令和元(2019)年……スペイン内戦
令和2(2020)年……オスマン帝国
令和3(2021)年……ローマ帝国
令和4(2022)年……大航海時代
令和5(2023)年……イギリスの産業革命
(3)地理
令和元(2019)年……世界の人口
令和2(2020)年……温帯の気候
令和3(2021)年……世界の地形
令和4(2022)年……世界の交通
令和5(2023)年……ラテンアメリカ
3.対策方法
続いて、科目ごとの対策方法を、上記の過去問を踏まえてお伝えしていきます。
(1)倫理・哲学
王道といえる西洋哲学史があまり出題されないという印象です。ただ、中国の思想家は平成30年度(令和元年度試験の前年度)に5年ぶりという形で令和5年度に出ましたので、令和6年度は、同じく5年ぶりに西洋哲学史が問われてもおかしくないかなと思われます。
後は、日本近代の思想家などが問われる可能性があるでしょう。インド哲学は元々がレアな単元なので、令和3年度からそこまで年数が経っていないので、無理に学習をしなくて良いかと考えます。
共通テスト 倫理 集中講義 (大学受験SUPER LECTURE)
もちろん、政治で紹介した畠山氏には、倫理も入っている以下の本もあります。説明の仕方が肌にあっている方には、そちらも良いかと思います(ただし、政治経済は最新版を得る方が望ましいです)。
こうした出題可能性の高い単元を中心に、大学受験の倫理の参考書を利用して読み込み学習すると良いでしょう。下記の本は、解説と問題が一緒についていて取り組みやすいと言えます。
大学入学共通テスト 畠山のスッキリわかる 倫理、政治・経済 完成講義
(2)歴史
【①日本史】については、数年に1回文化史が出るのですが、これが令和5年度に出題されました。したがって、令和6年度は政治史と思われます。最近問われていない、江戸期や明治・大正期の内政などは問われやすいのではないかと予測されます。
さて、対策本ですが、日本史を全く学習したことがない人は少ないと思います(小学校や中学社会で触れている部分があるため)。
そのため、日本史学習は、LECの解きまくりのポイントを読み、問題を解いていっても良いかと思います。
ただ、そのポイントでは載っていない用語や流れのために、以下の本を持っていて、辞書的に活用することはお勧めです。
【②世界史】については、他の公務員試験種で定番といえる近現代(18世紀以降)のヨーロッパ史や中国史がここ最近ほとんど出ていません。ただ、それ以外の出題傾向は絞りにくいといえます。また、近現代が、政治において国際関係史が問われやすいことを踏まえると、今後も19世紀後半以降は世界史では問われにくいのかもしれませんが、政治のことを考えると学習はしておいた方が良さそうです。
対策本としては、大学受験の本格的なもので学習しますとボリュームが多すぎて、公務員試験の他科目学習に悪影響を覚えるといえます。他方、世界史は高校生から本格的に学び、受験で使わない場合は深く学んでいないので忘れているというケースがよく起こると思います。
そこで、
(ア)まずはざっくりとした本をサラッと読み、
(イ)その後、用語集を時系列に並べたもので行うこと をおすすめします。
この際ですが、(イ)は全部をやったり用語を覚えようとするというより、流れを意識するつもりで学習しましょう。
あるいは、本格的な問題演習中の辞書的な形です。そして、(イ)が多少心許ない状態でも、上記でご紹介したLEC解きまくりで過去問演習をしましょう。
(ア)の本;今さら聞けない! 世界史のキホンが2時間で全部頭に入る
(イ)の本;時代と流れで覚える! 世界史B用語
(3)地理
令和5年度を除いて、いわゆる系統地理の範囲(気候、地形等)からの出題がされていました。令和5年のラテンアメリカは意表をつかれた形だったわけです。
令和6年以降が地誌になるのか、系統地理に戻るのかは分かりません。そのため、時間があれば両方の準備するのが望ましいわけですが、それが難しい人は、過去の割合からいって系統地理の学習をしましょう。
対策本としては、以下のように
(ア)を電子書籍で読んで素養を入れたら、LEC解きまくりで演習しながら覚えましょう。
また、地誌まで手が周りそうならば
(イ)の地誌部分を読んでおく と良いでしょう!
(ア)の本;マンガでわかる高校地理: ケッペンちゃんと学ぶ高等学校地理 自然地理、農業、資源編
(イ)の本;カリスマ講師の 日本一成績が上がる魔法の地理総合ノート
なお、特別区の地理は難易度の低い問題が多いので、苦手意識を持たずに読むと、一般常識で答えられる問題も多いので諦めないようにしましょう。
4.おわりに
特別区の人文科学は、令和6年度受験において、まず、倫理・哲学においては、西洋哲学史と日本の思想を大学受験対策本を利用して学習しましょう。
次に、日本史は各時代の政治史を中心に学習しましょう。基本的にはいきなりLEC解きまくりの過去問題演習で良いかと思います。辞書的に整理された日本史の本を持っていることが望ましいです。世界史は、深入りしすぎないように流れなどを「ふわっと理解」した後は、過去問演習を通じ、知らなかったことを積み増すことが望ましいです。
最後に、地理は、ビジュアル的に分かりやすい参考書(時に漫画本)を利用して、系統地理→地誌の順番に学習することが望ましいと言えます。
ちなみに、究進塾は大学受験の対策も豊富な個別指導塾です。もしも、上記の参考書を読んでも頭にさっぱり入ってこないときは、個別指導で覚え方や、覚えられるような印象に残る教えを受けるのもいいかもしれません。
皆さんが、傾向にあった対策をすることで、高得点合格できることを願っています。