1.はじめに
特別区Ⅰ類の採用試験は、最終試験合格後に各区等の採用試験面接を受けます。これは、受験生が申し込み時に第3希望までの区等を明示し、人事委員会はこの希望に沿って各区等の採用候補者名簿を提示します。
この際の名簿順位は高得点順です。したがって、希望の区等に採用されるためには、できるだけ高得点で合格することが求められます。
そして、この高得点合格に向けては、一次試験の教養試験・専門試験・論文試験と、二次試験の口述試験の4試験において、できうる限りの高得点化が必要です。
本記事では、教養試験のうち、社会科学での高得点化を図るために、過去問分析、得点化のためにすべき準備について述べていきます。本年(2024年)の受験にフォーカスしていますので、今年受験者は特に参照いただければと思います。
なお、別記事にて他科目の分析をしていきますので、そちらも参考頂ければ幸いです。
2.社会科学の過去問分析
社会科学は例年、
■法律1~2問
■政治1~2問
■経済1問
の出題です。合計は4問となります。それでは、科目ごとに過去5年分の出題内容をみていきましょう。
(1)法律
令和元(2019)年……衆議院の優越/天皇の国事行為
令和2(2020)年……日本の裁判所・司法制度/法の下の平等
令和3(2021)年……日本の国会/日本の司法制度
令和4(2022)年……法の分類
令和5(2023)年……労働者の権利/地方自治
(2)政治
令和元(2019)年……モンテスキューの思想
令和2(2020)年……第二次世界大戦の終結と戦後の国際政治の動向
令和3(2021)年……第二次世界大戦後の地域紛争
令和4(2022)年……国際人権条約/世界の政治体制
令和5(2023)年……東西冷戦(米ソ)
(3)経済
令和元(2019)年……日本の消費者問題
令和2(2020)年……国際経済体制の変遷
令和3(2021)年……日本の消費者問題
令和4(2022)年……日本の現代の企業
令和5(2023)年……日本の農業
3.対策方法
続いて、科目ごとの対策方法を、上記の過去問を踏まえてお伝えしていきます。
(1)法律
近年は、法学一般の内容である法の解釈、法の効力などより憲法的な内容がよく出ています。したがって、まずは、特別区Ⅰ類の受験者は、憲法を専門科目で利用する方が多いと思いますので、その学習をしっかり行いましょう。
ちなみに、憲法の学習には以下の書籍がお勧めです。
寺本康之の憲法ザ・ベスト ハイパー
念のため法学一般をおさえる際には、行政書士試験の基礎法学の問題などをこなす中で覚えてしまいましょう。例えば下記の本ですと、予想問題もついていますので色々な問題に当たれます。ただ、試験までに時間がない場合は特別区の過去問を行うだけでもOKです。
行政書士 憲法・基礎法学が得意になる本 2024年度 [過去問+オリジナル予想問](早稲田経営出版)
(2)政治
平成の後期は政治思想家の問題などが頻出でしたが、令和元年を最後にそのジャンルからの出題はありません。これは恐らく、時事的なことを理解する上での教養的な部分の知識を問うという公務員試験全体の傾向が特別区にも当てはまっているためと考えられます。
代わりに出題が急増しているのが、第二次世界大戦後の国際関係史です。とはいえ、2年連続で同じ範囲が出てはいませんので、2024年に受験する方は、国際関係史でもアジア・アフリカだったり、地域紛争だったりといったところを学習すると良いでしょう。
なお、専門科目の政治学・行政学と重なるとしたら各国政治の部分くらいであまり大きくは重なっていないといえます。むしろ、公務員試験の専門科目のうち、国際関係の方が重なると言えます。ただ、専門科目でこちらを使わない方も多いと思います。
教養レベルのために専門科目のテキストを読み込むのは、少し周り道な対策と言えるでしょう。
以上の議論から、お勧めな対策本としては、大学受験用の政治経済を用いて、「国際政治」「各国政治」の部分を読み込むのが望ましいでしょう。例えば、以下です。
(3)経済
経済は、法律と違い、専門科目との重なりはほとんどありません。すなわち、マクロ経済学、ミクロ経済学、財政学などと出題分野が異なります。
特別区の経済は、大学受験の政治経済の経済編の経済メカニズム(専門科目として学ぶ部分の基礎)を除いた部分が出ています。
したがって、上記の畠山本は、政治という科目だけでなく、経済という科目でも活用できます。また、政治経済の資料集はテーマごとに歴史的な変遷などもまとまっていたりするのでお勧めです。
なお、資料集は例年2~3月に新版が発売されます。特別区には社会事情など時事も4問ほど出ることから、どうせ手に入れるなら、最新版にしましょう。
さらに、政治にも経済にも当てはまりますが、参考書を読んだだけでは覚えているかが不安な方は、一問一答もしておくといいでしょう。もちろん、全てを行う必要はありません。読んだ範囲と重なる部分だけでOKです。
大学入学共通テスト 倫理、政治・経済の点数が面白いほどとれる一問一答
4.おわりに
特別区の社会科学は、法律においては専門科目の憲法学習と、他資格の行政書士にある基礎法学の問題を解くことで対応できます。
政治と経済は、大学受験用の政治・経済の参考書を読み、一問一答をしておくことが望ましいといえます。政治のためには、特に国際政治の部分が良いでしょう。経済については、専門科目で学習しないところの分野を行いましょう。
ちなみに、究進塾は大学受験の対策も豊富な個別指導塾です。もしも、上記の参考書を読んでも頭にさっぱり入ってこないときは、個別指導で覚え方や、覚えられるような印象に残る教えを受けるのもいいかもしれません。
皆さんが、傾向にあった対策をすることで、高得点合格できることを願っています。