この記事の目次
1.はじめに
公務員試験は、民間企業と同じ筆記試験を課すことも増えてきました。しかし、この試験方法による選抜は、倍率が高めですから、やはり公務員試験用の筆記試験を勉強しなくてはと考えている人も多い事でしょう(詳しくは、下記の記事です)。
そのとき、たくさんの時間を公務員試験に割いたのであれば、多くの試験種を併願しようかなと思われる人も多いのではないでしょうか。
本シリーズでは、そのような方に向けてあまり知られていない公務員試験職種をいろいろ紹介していこうと思います。第二弾は、衆議院事務局職員です。
衆議院事務局職員は、国会の立法活動を補佐し、衆議院及び衆議院議員の活動を支える特別職の国家公務員です。総合職・一般職・衛視・技術系といった各種採用試験を独自に実施しています。以下の記事では、一般的な行政職の専門科目で対応可能な総合職と一般職(大卒)を対象とし、さらに、仕事内容と試験内容をお伝えしていきます。
2.仕事内容
衆議院事務局職員の具体的な業務は、次の3部門があります。
(1)会議運営部門
議長や委員長を政治的に中立な立場から補佐し、会議が公正・円滑に実施されるようサポートしていく仕事です。よく国会の本会議で、衆議院議長の傍、大臣席の後ろに控えている方々がいますが、あそこにいるのが、会議運営部門の衆議院事務局職員です。
また、衆議院には、国会法で定められた常設機関である17の常任委員会のほか、各議院において必要とされたときに設置される特別委員会があります。ここでの委員長を補佐し、法規・先例に基づく委員会の運営を支えている委員部で働く職員も、会議運営部門の衆議院事務局職員です。
(2)調査部門
専門的調査機能を発揮し、内容面から委員会活動及び議員活動を補佐します。具体的には、①委員会関係事務、②議員からの個別的な調査依頼への対応、③情報発信をしています。
①は、「法律案、条約、予算、決算等の審査のため、法律案等の要旨、提出に至った経緯、論点、参考となる資料をまとめた法律案等参考資料」や、「当該法律等の施行に当たって政府が留意すべき事項について、委員会としての意思を明らかにするための附帯決議の原案」などを作成します。他にも、国政調査や請願審査に関連した資料作成にも携わります。
②は、議員立法に関する、依頼に応じて、法律案提出に向けた現状の把握や背景についての調査を進め、各種資料の取りまとめを行ったり、議員が本会議や委員会で質疑・討論を行う場合は、最新情報の提供や論点となる項目の説明といった調査依頼に対応したりします。
③は、各委員会所管事項の動向、通過議案要旨集、研究論文誌「論究」、調査レポート、委員会ニュースなどを担います。
(3)その他の議員(院)活動補佐部門
秘書課、庶務部、管理部、国際部、憲政記念館、記録部、警務部、憲法審査会事務局、情報監視審査会事務局などの部署を通じて、衆議院の対外活動や衆議院の組織運営を後方から強力に支援しています。以下のパンフレットPDFには、これらの部署で働く方の声が読めます。
単に衆議院の議事進行が円滑に回るようにするだけでなく、政策内容面の支援や、議会の活動を発信するなどしていることも分かり、刺激的な職場のように感じますね。
3.働き方・福利厚生など
身分は特別職の国家公務員ですが、一般職の国家公務員と待遇はほぼ同じです。つまり、衆議院事務局総合職であれば国家公務員総合職並みの、一般職であれば国家公務員一般職並みの待遇ということです。
勤務場所は、国会議事堂内及びその周辺(分館、第一議員会館、第二議員会館、第一別館、第二別館等)となります。もちろん出向や海外派遣などがあれば違いますが、基本的には、東京の霞が関から転勤はないといえるでしょう。
ちなみに、海外派遣先の実績は、エディンバラ大学大学院比較公共政策学修士課程(英国)、ユニバーシティカレッジロンドン大学院民主主義・比較政治学修士課程(英国)、クイーンメアリー・ロンドン大学大学院公共政策学修士課程(英国)、バース大学大学院国際関係学修士課程(英国)だそうですので、イギリス留学をする雰囲気があるようです。
また、衆議院独自の男女独身寮及び世帯寮があるほか、財務省の管理する合同宿舎(独身用・世帯用)などが都内及び近県にあるので、地方の方も、合格後はそれらを利用するなどして働くことができるようです。
1日7時間45分の勤務時間で、初年度から有給休暇が20日与えられ、特別休暇(結婚・保育・看護・忌引・夏季等)、介護休暇、育児休業が利用できるようです。令和6年度のパンフレットによると、育児休業の女性取得率が100%となっていました。男性も50%あります(厚生労働省が発表する3400余りの事業所回答が、女性84.1%、男性30.1%ですから、かなり高水準です)。
4.試験内容
衆議院事務局職員は狭き門です。
まず、総合職は、令和3・4・5年と3年連続で最終合格人数が僅か2人です。対して、応募者は、毎年170人ほどですので、倍率は、約85倍です。
次に、一般職は、最終合格人数が12~14人です。3年平均の応募人数が536人ですから、40倍の倍率を超える感じとなっています。
したがって、目指すのであれば、しっかり準備をして臨まなければなりません。これを踏まえつつ、試験内容を確認していきましょう。なお、衆議院事務局の試験制度は令和7年度実施から変更がありますので、それを反映した状態となります。
【第一次試験】
総合職・一般職ともに、1次試験が教養試験(多肢選択式120分)です。出題内訳も同じで、文章理解11題、数的処理16題、自然・人文・社会(時事含む)13題の計40題出題ですね。
総合職は3月3~4週目の土曜日に、一般職は5月3~4週目の土曜日にそれぞれあります。申込期限は、総合職が2月下~3月上旬、一般職が4月上旬です。
土曜日に試験というのが、併願し易さを上げることにはなるでしょう。また、令和7年度からは、関西での受験もできるようですので、西日本の方を中心に受験負担が減りますね。
【第二次試験】
2次試験として、総合職・一般職ともに、学力をみられる試験として、記述試験が課されます。また、総合職の方は2次試験から個別面接があります。
総合職は、憲法・行政法・民法・ミクロ経済学・マクロ経済学・政治学の6科目中から2科目を選択します。憲法は以前は必須でしたが、令和7年度から必須ではなくなります。また、以前は、経済学で1問だけでしたが、ミクロとマクロで分割してくれます。経済学だけを磨いて臨むことも可能となったわけですね。
一般職は、憲法・行政法・民法・経済学・政治学の5科目中から1科目選択です。令和6年度までは憲法必須で、もう1つを選択する2科目回答だったのですが、1科目でよくなりました。負担が減りましたね。
【第三次試験】
総合職の方は口述試験が課されます。一般職の方は、集団討論と個別面接です。一般職の方は、一次、二次より、三次の倍率が例年最も高いので最後まで気を抜けません。
5.おわりに~目指すなら~
衆議院事務局職員試験では、一次試験の教養試験は、他の公務員種と同様です。一次の通過は、例年の傾向をみると、総合職も一般職も受験者(応募者ではなく)の3分の1~4分の1に入れれば通過しています。
一方、総合職では二次試験での絞り込みが強まります。二次試験の内容は、記述式の専門試験と個別面接ですからしっかり準備が求められますね。
一般職の方は、三次試験の絞り込みが最も強まりますので、二次の記述が通っても気を引き締めて、集団討論と個人面接の準備が大切です。
既に予備校などに通い、一次試験突破に向けた学習をしていると思いますが、早めに専門記述練習、面接練習をしていきましょう。
究進塾では、経済学、面接などの指導ができるスタッフがいますので、自身がアウトプットしたものがどう採点されるかを知り、上達する練習をしたい人は是非ご活用ください。
本記事では、政策立案と議案成立の陰の立役者のような働きをし、安心待遇で働ける衆議院事務局職員について解説をしました。参考になれば幸いです。