この記事の目次
1.はじめに
公務員試験を難しくしている大きな要因として「科目数の多さ」が挙げられます。受験先によっては約30科目が必要とされ、それを1年前後で勉強しなければいけません。
そこで、ほとんどの受験生に必要となるのが「捨て科目を作る」ことです。公務員試験ではボーダーが6割前後になることが多いため、優先順位の低い科目を捨てて、残りの科目に勉強時間を割いて合格を目指します。
では、その捨て科目はいくつくらい作るのでしょうか。そして、どんな基準で選べば良いのでしょうか。本記事では、私の受験生としての実体験や、講師としての知見から、この2点について解説します。
2.捨て科目の数(目安)
結論としては、一つの目安ですが、「4~6科目程度」の捨て科目を作る受験生が多い印象です。ただ、少数派ですが10科目以上捨てているケースや、1科目も捨てないケースもあります。
では、捨て科目の数はどのように決まるのでしょうか。主に以下の基準が考えられます。
・勉強期間 ・苦手科目の数、どれくらい苦手か ・受験先の合計科目数 ・受験先の出題数の偏り(1科目しか出題されない科目がある等) |
他にも要因はありますが、上記4点は特に重要な要素なので、捨て科目の数を決める際は、最低限この4つは考えながら決める必要があるでしょう。例えば、教養試験のみ(専門試験無し)の受験先の場合、合計の科目数が減るため捨て科目の数も少なくなります。
3.捨て科目の選び方
次に、捨て科目の選び方の中で、特に考えるべき4つの基準を押さえておきましょう。
(1)出題数
特に重要な要素です。もし勉強を始めたばかりであっても、各科目の出題数や、教養試験と専門試験の配点は、目安として第三志望前後の受験先まで把握しておくようにしましょう。
出題数について、多くの受験先に共通していることとして、教養試験では文章理解や数的処理は出題数が多い科目です。他にも、特別区では、自然科学の出題数が比較的多く、それに対して、地方上級では人文科学の出題数が比較的多いといえます。このことから、例えば「特別区と地方上級の2つの受験先を志望している受験生」について、以下のように第一志望に応じて捨て科目を作ることが考えられます。
・特別区が第1志望→自然科学から1科目、人文科学から2科目を捨てる
・地方上級が第1志望→自然科学から2科目、人文科学から1科目を捨てる
上記は一例なので、実際は第三志望以降の受験先のことも含めて考えるようにしましょう。
(2)配点
受験先によって、教養試験と専門試験の配点が異なる場合があります。例えば、国家一般職や国税専門官などでは専門試験の配点が高くなっています。特に、国家一般職では専門試験の配点比率が教養試験の2倍となっており、専門試験が非常に重要と言えます。
このように、専門試験の方が配点が高い場合、専門よりも教養で捨て科目を多く作ると、より効率的なプランが立てやすくなります。
(3)学習範囲・学習時間
科目によって、学習範囲や学習にかかる時間は大きく異なります。
例えば、教養の地学、専門の社会政策などは比較的少ない時間で全体を学習することができます。他にも、社会科学については、専門試験の勉強をしている方であれば、専門と範囲がかぶっている部分が多いことから、勉強時間は少なく済みます。
それに対し、教養の日本史や世界史、専門の国際関係などは範囲が広く、多くの勉強時間が必要となります。もちろん勉強時間が多いという理由だけで捨てることはできませんが、一つの重要な指標にはなるでしょう。
民法や憲法、ミクロ・マクロ経済学などは、範囲は広いですが、出題数の関係で、多くの受験先で捨てにくい科目といえます。
(4)苦手科目・学習したことがない科目
当然、苦手科目は得点が期待しにくいので、捨て科目の候補になります。
また、高校で選択していた等、学習経験があるかという点も重要です。例えば人文科学が全体的に苦手な場合、日本史のみ高校で学習したことがあるのであれば、日本史だけは学習してみるという選択肢もあります。「もう覚えていない」と思うかもしれませんが、キーワードに聞き馴染みがあるだけでも学習は多少進めやすくなります。
4.一部の分野だけ学習するのも効果的
ここまで、捨て科目の選び方を解説してきました。
公務員試験の膨大な学習範囲に対応するために、捨て科目を作ることは効果的ですが、「科目単位」ではなく「分野単位」で考えることも重要です。基準については、上記で挙げたものと概ね同じと考えてOKですが、分野を選ぶ際は特に「頻出分野」という要素は重要です。
例えば、日本史について「室町時代~第二次世界大戦あたりが第一志望でよく出ているからそれ以外は捨てる」、物理について「力学の分野は、頻出だし少ない時間で身につけられるから学習する」などです。
特に特別区の専門科目は、各科目5問ずつ出題され、科目単位で捨てていくと5問ずつ捨てることになります。特別区では、選択科目は科目単位ではなく問題単位なので、例えば「政治学から1問、行政法から4問」という形で選択して回答することも可能です。基礎~標準問題が多く出題されることからも、完全に捨てる科目を減らし、分野単位で基礎だけを抑えておくのも有効でしょう。
ただ、受験先ごとに頻出分野は異なるため、勉強する分野を選ぶにあたり、過去の出題傾向の分析は必須になります。「新スーパー過去問ゼミ」など、問題集によっては過去の出題傾向がわかるものもあるので、うまく活用していくと良いでしょう。
5.おわりに
本記事では、捨て科目について、目安となる数と選び方について解説しました。公務員試験の勉強方針を決定するにあたって、捨て科目は重要な要素の一つです。
私の体験談として、「日本史を中途半端に学習して、結局身につかずに捨て科目にした」というのがあります。これは今振り返ると大きな反省点であり、学習方針を適切に立てられていれば避けることができました。
受験生の方には、ご自身の状況や受験先などから考えて、適切な捨て科目を決定してもらえればと思います。