社会人が受験できる公務員試験の内容と採用後の待遇について | ASK公務員 - 個別指導/論文・面接カード添削の公務員試験対策塾

社会人が受験できる公務員試験の内容と採用後の待遇について

  • 2018年4月28日
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ASK公務員 編集部
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現在民間企業などで働いていてる社会人の方で公務員に転職したいと考えている方が増えています。

近年、民間企業等で働く人を積極的に採用する「経験者採用」を実施する自治体が増えてきており、経験者採用試験は「何年以上民間企業等で勤務した経験がある」という要件さえ満たせば受験することができます。

しかし、単純に「社会人=経験者採用試験」と単純に考えるのはおすすめしません。というのも、一般の大卒程度試験や高卒程度試験に比べて、経験者採用試験は非常にハードルが高くなる傾向にあるからです。

まずは、あなたの今の状況から受験できる試験を知らなければなりません。

この記事では、社会人の方が公務員になる方法について、そしてどのような試験をクリアしなければならないか、さらに経験者採用試験に合格して公務員になった場合の待遇などについて詳しく解説します。

1 大卒程度試験か経験者採用試験どちらを受験するか決めよう

公務員に転職したいのであれば、まずはどの試験を受ければいいかを知る必要があります。そのためには、以下の2点を確認してください。

・現在の年齢は?
・民間企業等(※)の経験年数はどれくらいか?
(※)民間企業等とは、民間企業に限らず公務員や自営業でも適用される場合があります

「現在の年齢」というのは非常に重要で、全ての公務員試験では年齢制限を設けています。

もし、あなたが社会人経験がありながらも20代であれば、経験者採用試験以外にも大卒程度試験(場合によっては高卒程度試験)を検討してみましょう。

というのも、経験者採用試験の場合、採用枠が少ないことから高倍率になることが多々あります。
また、これまでの職歴も判断材料とされてしまうため、論文試験や面接試験が非常に重要となり、勉強ができれば受かるという試験でもありません。

それに比べ、大卒(高卒)程度試験の場合は、自治体にもよりますが、経験者採用試験よりも倍率が低いことがほとんどです。そのため、単純にしっかりと対策をしておけば採用される可能性は高くなります。

ただし、これも試験によりますが、大卒試験の場合は法律系や経済系などの「専門科目」を課せられることが多いため、勉強が大変になる傾向にあるます。

大卒程度試験
  • 専門科目がある場合が多く対策に時間がかかる
  • 経験者採用試験に比べて倍率が低い
経験者採用試験
  • 筆記試験の勉強の負担は小さい
  • 論文と面接が非常に重要でこれまでの経験を求められる
  • 採用数が少なく倍率が高くなる

倍率が低いほうを取るか、勉強が比較的楽なほうを取るかは人それぞれですが、「社会人=経験者採用試験」と視野狭窄にならず、視野を広げて考えてみることが大切です。

多くの人が受験する大卒程度試験(行政職)については公務員になりたい人必見!公務員試験の対策と勉強法を全解説にまとめていますので参考にご覧ください。

■基本的に併願はできない!
大卒(高卒)程度試験も経験者採用試験も両方受けられる、という人はどっちも受ければいいのでは?と思ったかもしれません。しかし、同一年度に両方の試験を併願することは基本的には不可能であるため、選択が必要です。
もし初年度に経験者採用試験を受験してダメだったら次年度に大卒程度試験を受けるということはできます。

もし、「年齢的に大卒試験が無理そう…」ということであれば経験者採用試験を検討することになりますが、これについては勤務年数が重要となります。

次にどのような方が経験者採用試験を受けられるのか見ていきます。

2 経験者採用試験の受験要件について

大卒試験は考えていない、年齢として難しい方で、社会人として数年働いている、もしくは働いていたのであれば「経験者採用試験」(社会人採用、キャリア採用などともいいます)という枠で受験を検討してみましょう。

経験者採用とは、「民間企業などで培ってきた経験や知識を業務に活かせる人材を確保するための採用方式」であり、近年、特に地方公務員では採用数が増えてきています。

これは通常、大学生などが受験する試験とは別に実施されるものであり、受験のための条件や試験内容が異なるため受験する前によく確認しておく必要があります。

では、民間で経験していれば誰でも経験者採用枠で受験することができるかというと、そういうわけではないので注意が必要です。

例えば東京都では受験資格として以下のように定めています。

学歴区分に応じた民間企業等における一定以上の職務経験がある人
・院修了…5年以上
・大卒…7年以上
・短大卒…9年以上
・高卒 …11年以上  等

つまり、大卒の方であれば7年以上の職務経験が求められることがわかります。ちなみに、現在正社員として働いていなくても、必要な条件だけ満たせば受験することはできます。

なお、ここで出てくる「7年以上」と「民間企業等」について、東京都の受験要項では以下のように定義しています。

「民間企業等における職務経歴」には社会人、自営業者等として6ヶ月以上就業した期間が該当します。

つまり、一つの会社で7年勤めていなくても、極端に言ってしまえば14社を半年ごとに転職していても受験することができるのです。

また注目すべき点は、「民間企業等」を会社員、自営業等としており、必ずしも民間企業に限っていません。

東京都は不明ですが、公務員やJICAでの勤務も経験として認める自治体もありますので、確認してみるとよいでしょう。
(※東京都は事務職であっても専門性を重視するため、経験した職種の条件もありますので注意が必要です)

また、アルバイトや契約社員は職務経歴に入らないのではないか?と心配している方もいるかもしれませんが、自治体によっては受験可能なところもあるので要チェックです。

例えば、横浜市では経験者採用の受験資格を以下のように定めています。

・「民間企業等における職務経験」には、会社員、自営業者、アルバイト、パートタイマー、公務員等としての経験が該当します。また、財団法人、社団法人、NPO法人等の経験も含まれます。

・「5年以上」とは、それぞれの企業・団体等で休憩時間を除き、週30時間以上の勤務を2年以上継続し、これらの経験が通算で5年以上であることを要します(同時期に複数の企業・団体等に勤務していた場合は、いずれか一方の勤務期間のみを職務経験とします。)。

かなり具体的でわかりやすいので見ていただければ理解できるかと思いますが、横浜市ではアルバイトでもなんでも職務経歴になります。

しかし、「週30時間以上の勤務を2年以上継続」という条件がありますので、アルバイトを週20時間1年間やっていたというのは経歴に入りませんので注意が必要です。

このように自治体ごとに受験資格が異なりますので、あなたの志望する自治体が条件を満たすかどうかをまずは確認するようにしましょう。

3 経験者採用ならではの試験に注意する

経験者採用の受験資格を満たした方は経験者採用試験のための勉強をしなければなりません。

公務員試験は大卒程度試験の場合、「教養試験」「専門試験」「小論文」「面接試験」が課されるのが一般的です。

しかし、経験者採用試験では学力よりもこれまでの経験やコミュニケーション能力が見られる傾向にあるため、地方公務員試験の場合「教養試験」「小論文」「経験者者論文」「面接試験」という内容になっているものがほとんどです。

例えば、埼玉県では一般試験と経験者採用試験では試験種目に以下のような違いがあります。

■一般試験
・1次試験
教養試験、専門試験
・2次試験
論文試験、人物試験(集団討論・個別面接)
■経験者採用試験
・1次試験
教養試験、論文試験Ⅰ
・2次試験
論文試験Ⅱ、人物試験Ⅰ(個別面接)
・3次試験
人物試験Ⅱ(個別面接)

注目するポイントとして、経験者採用試験は専門試験がなく、その代わりに論文試験と面接試験が2回行われること、そして3次試験まで行われることです。

また配点も教養試験が50点に対し、その他の合計が750点となっており、

暗記をすれば得点できる「勉強ができる人」ではなく「考えなどを表現できる人」を採用するということが分かります。

こうした傾向は埼玉県に限ったことではありません。

例えば東京都では2次試験にプレゼンテーションを含む個別面接が実施され、特別区においては1次試験で職務経歴論文というものが課せられます。
また、国家公務員の経験者採用試験においては一次試験で「経験論文試験」が実施され、職務経験について問われるものとなっています。

このように、経験者採用試験は一般試験とは異なり、筆記のウェイトが低いけれども人物の適正を図るためのウェイトが高いという特徴があるのです。
もちろん、一般の試験であっても最近は人物重視の傾向となっていますが、経験者採用試験とは比べ物になりません。

それでは、経験者採用で重視される論文試験および面接試験ではどのような内容が問われるのか見ていきましょう。

3-1 論文試験について

通常、一般試験(大卒試験)での論文試験は以下のようにある課題(社会問題等)に対し自分の考えを述べたり自治体としてどのような行動をすべきかということを問われることが多いです。

国際化の持つ影響、可能性、課題を示し、自治体としてどのような取組を行うべきか、論じなさい。

平成27年度 千葉県(上級)

人々の働き方に関する意識や環境が社会経済構造の変化に必ずしも適応しきれず、仕事と生活が両立しにくいという現実に直面しています。誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て、介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう仕事と生活の調和が求められています。
このような現況を踏まえ、ワークライフバランスの実現に向け、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

平成27年度 特別区Ⅰ類

経験者採用試験では、こうしたものに加え、以下のように 

職場における個人情報管理の重要性について、あなたのこれまでの職務経験を簡潔に述べてから、その経験を踏まえて論じてください。

平成27年度 特別区経験者採用試験

川崎市職員採用試験を受験するにあたり、あなたはどのようなキャリアプランを描いて転職を決心したかを述べるとともに、(1)あなたが川崎市でしかできないこととは何か、(2)それを実現するために、これまでの職務経験をどのように活かしたいかについて、それぞれ具体的に述べてください。

平成26年度 川崎市経験者採用試験

出題の形式さえ違えど、聞いていることは同じような内容だということがわかるかと思います。

普段からあなたがこれまでの仕事でどのような目標を立て、どのような取り組みを行い、どのような成果を出してきたのかを整理しておくとよいでしょう。

論文試験についての詳細は【徹底解説】公務員試験の教養論文の基本と対策についてをご覧ください。

3-2 面接試験について

公務員試験における面接試験で評価される基本的な能力は、

  • 積極性(意欲、行動力)
  • 社会性(他者理解、関係構築力)
  • 信頼感(責任感、達成感)
  • 経験学習力(課題の認識、経験の適用)
  • 自己統制(情緒安定性、統制力)
  • コミュニケーション力(表現力、説得力)

の6つです。

公務員試験では「コンピテンシー型」といわれる面接を行われるケースが増えています。

コンピテンシーとは、「行動に表れる能力、特性」や「結果や成果と結びつく能力、特性」と定義されますが、つまりは「過去に起こったできごとに対しどう考えたのか(実施したのか)」という、過去の行動に焦点が当てられた質問をされるということです。

例えば、社会人の場合であれば「仕事において困難だったこと、それをどのように乗り越えたか」という質問はコンピテンシー型といえます。

そのため

  • これまでどのような仕事をしてきたのか
  • どういう困難があったか
  • どう乗り越えたか
  • その経験はどのように生かせるのか

といったことは突っ込まれてもいいように整理しておくのがよいでしょう。経験者採用試験に限りませんが、しっかりと自己分析を行うことが重要といえます。

また、経験者採用の場合、一般試験では課されないプレゼンテーションや自己PRなどを行うことで表現力や達成力などを見る自治体もありますので、やはりこれまで仕事で成し遂げたことなどを整理しておくことが重要となります。

また、民間から公務員へ転職する場合、「なぜ公務員なのか」といったことを非常に鋭く質問されるということも注意しておきましょう。

民間から公務員へ転職する人の本音として、「楽そう」「安定してる」といったものがあるかと思いますが、もちろんそのようなことを面接試験で言うわけにはいきません。

あなたが「なぜ公務員を目指しているのか」を、これまでの経験とこれからやりたいことと結びつけて考えなければなりません。
公務員試験の面接で聞かれる定番の質問の答え方の記事も見ていただくことで、より具体的な質問について知ることができます。

4 採用された場合の待遇について

さて、ここまでは試験の内容について見てきましたが、経験者採用は試験の内容が違うだけではありません。
実際に公務員として省庁や自治体に入庁し働くことになった場合、経験者採用の場合、一般試験で採用された人とは役職や給与が異なります(公務員は給料ではなく「給与」といいます)。

一般試験で入庁した人は末端の職員(主事などと言われます)からスタートします。

当然、社会人経験もない人に最初から役職を与えることはありえませんので違和感はないでしょう。そして給与についても、いわゆる大卒の初任給の金額からのスタートとなります。

これに対し、経験者採用では最初から役職がつくことを前提として採用される場合もあります。
例えば、特別区では職務経験の年数に応じて役職が異なります(8年以上の職務経験で主任主事からのスタートとなります)。

また、国家一般職では係長級の職員を採用するための試験となっています。

このような役職つきの採用でなくても経験者採用であればスタート時の給与に差が出てきます。公務員の場合、以下のような俸給表という表をベースに給与が決められます。

棒給表

職務年数や役職によって「級」や「号」が上がっていく(位が上がっていくイメージ)のですが、経験者採用で採用された場合、最初から高めに設定されているのです。

例えば、横浜市では受験案内において以下のような例が記載されています。

・22歳で大学を卒業し、民間企業における正社員の職務経験が6年、青年海外協力隊経験が2年あり、無職の期間2年を経て、採用時の年齢が 32 歳の場合 →256,244円
・22歳で大学を卒業し、民間企業における正社員の職務経験が10年あり、採用時の年齢が32歳の場合 →261,116円
・22歳で大学を卒業し、民間企業における正社員の職務経験が18年あり、採用時の年齢が40歳の場合 →302,528円

これはあくまで例であり、「個々の採用前の職歴の有無・内容に応じて決定するため、金額は異なります。」としていますが、どの自治体でも職務経験がある人はそれまでの経歴を考慮されるためスタートの給与が高めとなるのです。

なお、公務員の給与について詳しく知りたいという方は公務員の給料や年収について知っておきたい基礎知識まとめを参考にしていただくとよいでしょう。

そして役職や給与が高いということは当然、末端職員とは違い役職に応じた仕事が任されるため責任感が違います。入庁して1年目では通常任されないような仕事も経験者採用であれば任されるのが普通です。

それだけ仕事についてのパフォーマンスは期待されているということも認識しておいたほうがよいでしょう。

5 まとめ

経験者採用試験はあなたが仕事に対してどのように取り組み、それを行政の仕事としてどのように生かすかを伝えることが重要です。

受験のための要件は決して易しくはありませんが、一般で入るよりも責任のある仕事を任されるのでやりがいを感じることができますので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

また、要件を満たさない方も地方公務員は年齢制限を引き上げしている傾向にあるのため、諦める前に志望する自治体の受験要項を確認してみるとよいでしょう。

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