この記事の目次
1.政治や法律の時事の学習範囲は?
公務員試験の時事問題については、出題時に事情が異なっているといけませんので進行中のものを出題することには慎重です。
例えば、2023年1月に岸田首相は「異次元の少子化対策」を掲げました。そして、このキーワードが示す政策内容を現在(2023年3月)詰めているところですよね。こういうのが進行中ということです。
それよりも、後でも具体的に紹介していますが、2022年夏に行われた参議院選挙など一区切りついている事柄が出ます。そのため、受験生の方々には、2021~22年ごろの出来事、法制定や改正などをしっかり把握しましょう。
2.2024年度に問われやすい政治・法律時事5選!
(1)2022年の参議院選挙について
衆議院や参議院の選挙があった翌年は、大抵、どこかの公務員試験種で選挙に絡んだ問題が出題されます。
もちろん、「選挙に絡んだ」ですので、そもそも参議院議員選挙の行い方は?や、比例代表制とは?など、時事ではなく選挙制度の基礎的理解を問うこともあります。
しかし、選挙結果などで特徴的なことがあるなど話題があれば時事が出題される可能性が高いです。そして、今回の参議院選挙結果は、なかなか特徴的な事柄もありますので問われやすいと予想されます。
その特徴的な事柄とは……
①改選125議席のうち、35人が女性という割合(28%)は過去最高です。また、非改選を含めた場合も64人であり、こちらも過去最高です。
②投票率は52.05%で、何とか50%割れを回避しました。ただ、過去4番目の低さです(前回は48.8%でしたので50%を切っていました)。
③期日前投票は2019年の参議院選挙より255万人増加し、参議院選挙としては過去最高です。
④参議院選挙の1票の価値は、2020年の最高裁判決で3.08倍を憲法違反でないと判断しています。2022年の選挙は3.03倍のため、恐らく違憲状態にはならないでしょう(が、まだ結論はでていませんので、結論が出たような記述は×となります)。
といったところです。ちなみに、公務員試験においては、何党が何議席という話は出ませんので覚えなくて大丈夫です。
一応、与党が過半数をきちんと維持したものの改憲に必要な3分の2は取れていないことはおさえましょう。なお、自民党・公明党という与党に、日本維新の会と国民民主党という改憲に肯定的な政党(この4党で改憲勢力です)であれば、3分の2以上を維持しています。
(2)在外国民審査違憲判決(2022.5)
日本では最高裁判所の違憲判決が少ない(今から紹介するものを含めて11件)ので、それが出されると、時事で問われる可能性が高いです。内容を以下で確認しましょう。
2022年5月に、最高裁は、海外に住む日本人が最高裁判官の国民審査に投票できないのは、憲法15条1項、79条2項と3項に違反するとの判決を行いました。
憲法15条1項は「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」というものです。国民審査は、最高裁判所の裁判官という公務員の身分にある者の罷免ですので、在外者だからといってこれができないのは問題でしょう(79条2・3項は、国民審査自体の制度に関する条文です)。
最高裁の裁判官が国民審査の在外投票について判決を下したのは初めてで、この結論は、裁判官15人全員の一致でした。
ちなみに、これだけで5つの選択肢をつくるのは難しいといえます。そのため、冒頭で触れた他の違憲判決10件をおさえておくと、「日本の違憲判決について妥当なものを選べ」のような問題に対応できます。既存の政治科目も関連部分はよく復習することをお勧めします。
(3)高額寄付被害を救済する被害者救済法の成立(2022.12)
憲政史上最長となる3188日間、首相という重責を担った安倍晋三氏は2022年7月に凶弾に倒れました。この事件を起こした人物は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の高額寄付をする家庭で苦しんでいたという背景があったとされています。
これが世論となり、政治的対応がなされ、高額寄付被害者救済・防止法が2022年12月に成立しました。この法律は、法人や団体による個人への寄付勧誘が対象となっています。 禁止行為を行い、消費者庁長官から是正ないし停止の勧告・命令に従わないと、法人・団体だけでなく、寄付勧誘を行った信者個人や法人・団体の役員には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるものとなっています。
規制される具体的な寄付勧誘行為とは、恋愛感情の利用、霊感商法の手法、不退去や退去妨害、威迫など6類型の行為のことです。これがなされての寄附の場合、最長10年間取り消しが認められることとなりました。
また、借入や不動産処分による資金調達をした上での寄付要求は禁止されました。
さらに、寄付の勧誘をする法人や団体は「個人の自由を抑圧しない」「生活の維持を困難にしない」「寄付の相手方に使途を誤認させない」といった配慮義務が課されました。配慮義務が守られておらず、個人の権利保護に著しい支障が生じていることが明らかな場合は、法人名の公表と2年をめどに規定見直しを行わなければなりません。
なお、過剰な寄付によって養育されなくなった子どもや、生活費を受け取れない配偶者は、債権者代位権を行使し、寄付者本人に代わって法人や団体に対し、寄付取り消しができるとしています。これは、養育費なら将来の養育分までを含みます。もちろん、寄付金の返還も請求できます。
被害者側と、加害者になりえる法人・団体側のそれぞれの規定をしっかりおさえておきましょう。
(4)民法と刑法の改正点
民法と刑法の改正点は頻出事項です。
2024年度採用試験を受けるにあたっては、民法については以下をおさえましょう。
【民法の主な改正点(2022.12)】
①女性にのみ課されていた100日間の再婚禁止期間が撤廃されました。
②124年ぶりに嫡出推定が改正されます(実施は2024年夏を予定)。従来は、婚姻関係にある男女の間で生まれた子の父親を夫と推定し、離婚成立後300日以内に生まれた子の父親は前夫と推定していました。これを、2022年の改正は、女性が再婚しており再婚後に生まれているのであれば(離婚成立後300日以内でも)現夫の子と推定することにしました。
③DNA鑑定などをもとに親子関係を否認する「嫡出否認制度」については、改正法によって父親だけでなく、母親や子どもにも認め、訴え可能な期間を1年から原則3年に延長しました。
④児童虐待が正当化されないように、親が監護・教育に必要な範囲で子を懲戒できるとする現行の「懲戒権」規定を削除しました。むしろ、体罰や子の心身の発達に有害な影響を及ぼす言動を禁止する規定が盛り込まれました。
【刑法の主な改正点(2022.6)】
①刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる「懲役」と刑事施設に拘置する「禁錮」を廃止し、これらに代わるものとして、「拘禁刑」を創設し、拘禁刑は、刑事施設に拘置し、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、必要な指導を行うことができるとしました(施行は2025年6月までになされます)。
②侮辱罪の厳罰化されました。具体的には、従来は、1日以上30日未満、刑事施設に拘置する「拘留」又は千円以上1万円未満の「科料」とされていたところ、1年以下の拘禁刑(懲役・禁錮)や30万円以下の罰金も法定刑に加えられました。
(5)新しい官庁の設置~子ども家庭庁~
新しい官庁ができると、出題がなされやすいです。
例えば、2021年のデジタル社会形成基本法の制定・施行を受けて設置されたデジタル庁は、内閣直属であることや首相が長であり、デジタル大臣やデジタル監が置かれるなどのことを知っているかが、東京都試験において2022年試験で問われています。
もちろん、デジタル庁は、他の試験種でもしばらくでる可能性があります。他方で、2024年度採用試験の目玉は、やはり「子ども家庭庁」でしょう。
子ども家庭庁の特徴をまとめましょう。
①設置は内閣府の外局です。
②小学校就学前の子どもを対象とします。
③こども家庭庁の長官とは別に、内閣府特命担当大臣が置かれます。
④首相が会長であるこども政策推進会議が特別な機関として設置されています。
⑤厚生労働省から保育所に関する事務を、認定こども園に関する事務を内閣府から移管されます。
⑥⑤とは異なり、幼稚園に関しては引き続き文部科学大臣が行うので、所管事務の幼保一元化ができたわけではありません。
3.まとめ~頻出時事をしっかり学習しよう~
①参議院選挙、②在外国民審査違憲判決、③高額寄付被害者救済・防止法、④民法・刑法の改正、⑤子ども家庭庁の5点を2024年度試験で問われやすい政治・法律時事として紹介しました。
参考にしていただき、直前期の追い込みにご利用いただければ幸いです。