公務員試験に合格した後、実際に採用された後のキャリア形成は、一体どのようになっていくのでしょうか?
「公務員の昇任のしくみ」について、前回までの記事のうち「(1)国家公務員編」では、国家公務員の一般行政職の昇任のしくみなどについて、「(2)地方公務員編①」では、政令指定都市や県の事例をまじえて、地方公務員の昇任のしくみについて紹介しました。
今回の記事「(3)地方公務員編」では、地方公務員の昇任のしくみと関係の深い人事評価や地方公務員として求められる能力などについて説明していきます。
1.地方公務員の「昇任」と「昇格」、「昇給」の違い
地方公務員の「昇任」と「昇格」。
昇任と似た言葉で、昇格という言葉を耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか?
二つは似ていますが、その意味は異なっています。
■昇任 職員をその職員が現に任命されている職より上位の職制上の段階に属する職員の職に任命すること
■昇格 職員の職務の級を、同一の給料表の上位の職務の級に変更すること
職員の職務というのは、その複雑、困難、責任の度合いに応じて、給料表の級に分類されているものです。
給料表の同じ級の中で、号俸が上がることについては「昇給」と言います。
■昇給 職員の職務の級の中で、号俸が上がること
横浜市の例を挙げると、「職務の級と標準的な職務内容」は、次のようになっています。
横浜市の「職務の級と標準的な職務内容」
一般行政職の級別職員数及び給料表の状況(令和5年4月1日現在)
2.地方公務員の昇任試験と人事評価とは?
前編の「公務員の昇任のしくみについて(2)地方公務員編①」では、地方公務員が昇任するために受験することも多い「昇任試験」について、説明しました。
昇任試験は、すべての職で実施されているのではなく、係長になるための「係長候補者試験」が、政令指定都市などで実施されていることが多い状況です。
それでは、昇任試験が実施されない職位への昇任やそもそも昇任試験のない職種においては、どのように昇任していくのでしょうか?
ここで重要となってくるのが、地方公務員の「人事評価」という制度です。
人事評価は、職員一人ひとりの能力や意欲の向上を図るうえで重要な役割を担っています。 人事異動や昇任などの判断材料として活用されるだけでなく、勤勉手当など給与にも反映され、モチベーションアップに寄与するしくみとなっているのです。
また、昇任試験についても、ペーパーテストの成績だけでなく、勤務成績が加味されることもありますので、いずれにせよ日常の業務でしっかりと仕事をすることが大切です。
では、人事評価とは、どのようなしくみになっているのでしょうか?
参考に、京都市の「人事評価制度の構造」を挙げると、下記の図のようになっています。
・主任、係員といった「職制上の段階」(標準的な職)に応じて、力を発揮することが求められる「標準職務行動」が定められており、これに照らして「行動評価」が行われます。
・「組織目標」にどのように貢献するかという観点で「業績目標」を設定し、これに照らして実際の成果がどうであったか、「業績評価」が行われるのです。
3.地方公務員として働いていくために、求められる能力とは?
地方公務員として仕事をしていくためには、それぞれの職に応じて発揮することが求められる能力というものがあり、これを「標準職務遂行能力」と言います。
上記の京都市の例では「標準職務行動」として、行動面での評価の礎とされています。
それでは、どのようなものが「標準職務遂行能力」として求められるのか、大阪市の例で見ていきましょう。
大阪市の「標準職務遂行能力」のうち、係長級~行政職3級・2級相当を抜粋
☆職制上の段階の標準的な職の職務を遂行するうえで発揮することが求められる能力として「標準職務遂行能力」を設定
4.まとめ
国家公務員、地方公務員いずれの場合においても、公務員として働いていくためには、それぞれの階層に応じて力を発揮することが求められることや人事評価制度、昇任のしくみの概要がお分かりいただけたでしょうか。
地道な仕事であっても、着実に歩を進めていくことが大切なのです。