国家専門職・都庁志望者必見!~経済学・財政学の記述試験の傾向と対策~ | ASK公務員 - 個別指導/論文・面接カード添削の公務員試験対策塾

国家専門職・都庁志望者必見!~経済学・財政学の記述試験の傾向と対策~

  • 2023年12月12日
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宮園 啓介
大学卒業後から、大手資格予備校、高校、大学において公務員試験対策に携わり、今まで多くの国家公務員、地方公務員合格者を輩出。自身の公務員試験合格経験に慢心せず、刻々と変化する試験傾向の分析を丁寧に行い、「出そうなところを確実に仕留める」指導をモットーとする。

【主な指導科目】
教養試験;数的処理・文章理解・人文科学・社会科学
専門試験;経済学(ミクロ、マクロ、財政学など) 、行政系(政治学・行政学・社会学)
人物試験;面接・小論文

1.経済学・財政学の記述試験について

東京都ⅠBの試験と、国家専門職(国税専門官、財務専門官)では、経済学の記述試験を選択できます。東京都ⅠB並びに財務専門官では、財政学の記述もあります。

最終合格のためには、多肢選択だけでなく、記述試験も乗り切らなくてはなりませんが、こうした経済系の専門科目を受験で用いる場合、どのような留意点が必要となるのでしょうか。また、そもそも経済学や財政学は選択をすべきなのでしょうか。

この記事を読むと、これらの疑問が解消します。ぜひ、記述における科目選択の参考にしてください。

2.過去問の紹介(経済学)

それでは、経済学を用いて、過去5年分の出題を確認していきましょう。

(1)東京都ⅠB

年度 問題
令和5年度 ディマンド・プル・インフレーション及びコスト・プッシュ・インフレーションについて、現在の経済状況にも言及し、AD-AS分析を用いて説明せよ。
令和4年度 マンデル=フレミング・モデルにより、固定相場制と変動相場制のそれぞれの場合における財政政策の有効性を、グラフを用いて説明せよ。なお、資本移動は完全に自由であるものとし、固定相場制の場合には不胎化政策はとらないものとする。
令和3年度 ソローの成長モデルを用いて閉鎖経済における資本蓄積のメカニズムを説明し、貯蓄率の上昇が与える影響について述べよ。ただし、人口増加と技術進歩はゼロとする。
令和2年度 ケインズの流動性選好理論について述べた上で、短期経済において物価水準が一定のとき、マネーサプライの減少により利子率及びLM曲線がどのように変化するか、図を用いて説明せよ。
令和元年度 外部不経済の下での市場均衡について説明せよ。また、外部不経済の内部化の方法のうち、課税による方法及び補助金による方法について、それぞれ説明せよ。なお、説明には図を用いること。

(2)国税専門官・財務専門官

年度 問題
令和5年度 逆選択(逆淘汰、アドバース・セレクション)に関する次の問いに答えなさい。
①逆選択について、中古車市場を例に「情報の非対称性」という語句を用いて説明しなさい。
②逆選択を克服するための方法について、中古車市場を例に説明しなさい。
令和4年度(図は省略) 外部性に関する次の問いに答えなさい。
①市場の失敗における外部性について、「外部不経済」、「外部経済」に言及しながら説明しなさい。
②コースの定理について、定理が成立するための条件も示しつつ、簡潔に説明しなさい。
③ある企業は製品Xを生産すると、汚染物質を排出する。これにより、製品Xの市場では、社会的限界費用が私的限界費用を上回っており、家計の需要曲線、企業の供給曲線、社会的限界費用曲線は下図のようになっている。製品Xの市場が完全競争市場のとき、外部性を解決する方法の一つであるピグー税について、導入前後の総余剰の変化も示しながら下図を用いて説明しなさい。
令和3年度 投資理論に関する次の問いに答えなさい。
①ケインズの投資理論について、以下の用語を用いて説明しなさい。 (用語:投資の限界効率、割引現在価値)
②新古典派の投資理論について、以下の用語を用いて説明しなさい。( 用語:資本の限界生産性、望ましい資本ストック)
③ある企業が株式を100万株発行し、その配当は1株当たり50円であり、恒久的に得られるものとする。安全資産の利子率は2%、この株式のリスクプレミアムは3%であり、いずれも時間を通じて一定であるとすると、この企業の株式時価総額はいくらか。また、この企業の資本の再取得価格が5億円であるときの投資活動について、トービンのq理論に基づき説明しなさい。ただし、株価の理論値は企業の株価に一致し、また、負債は存在しないものとする。
令和2年度(図は省略) マンデル=フレミング・モデルに関する次の問いに答えなさい。
①マンデル=フレミング・モデルが対象とする経済の仮定を簡潔に説明しなさい。
②固定相場制の下での拡張的な財政政策の効果について以下の図を用いて説明しなさい。なお、中央銀行による不胎化政策は行われないものとする。
③固定相場制の下での拡張的な金融政策の効果について以下の図を用いて説明しなさい。なお、中央銀行による不胎化政策は行われないものとする。
④変動相場制の下での拡張的な財政政策の効果について以下の図を用いて説明しなさい。
令和元年度 貨幣に関する次の問いに答えなさい。
①貨幣に対する需要について説明しなさい。
②中央銀行が、貨幣供給量をコントロールするための手段である(ア)公開市場操作、(イ)公定歩合政策、(ウ)法定準備率操作の3つについて、それぞれ説明しなさい。
③「ハイパワードマネー」について説明するとともに、数式及び下記の用語を用いて「信用乗数」を説明しなさい。( 用語:現金・預金比率,預金準備率)

3.出題の傾向と対策

上記2を踏まえて、分析をしていきましょう。
まず、東京都ⅠBについては、問いの中に複数聞いていることもあるものの、単一のことも多くあります。これは、後述する国家専門職が小問集合であるのとは異なります。なお、都庁の財政学も小問集合的な聞き方はほとんどありません。
以上から、東京都ⅠBは自分で問いに対する回答に向けて構成を組み立てて書かなければなりません。しかも、2時間で3科目(憲法、行政法 、民法、経済学、財政学、政治学、行政学、社会学、会計学、経営学)というボリュームでもあるため、構成をつくり慣れる必要があります
では、どのように構成をつくり慣れれば良いかというと、模範解答の読み込みが有効です。プロが作成した文を読み込むことで、どのように構成を練り、書いていけば良いかが分かるからです。
しかし、市販において2023年11月現在、経済学や財政学の記述対策を刊行している出版社はありませんでした。そのため、模範解答を読むためには、対策予備校に頼ることになります。他科目を独学でされる受験生は単科講座を実施しているところを、これから予備校を選ぶ人は記述対策が充実しているところを選びましょう。
専門記述の単科講座で販売しているところとしては、アガルートアカデミー(https://www.agaroot.jp/komuin/list/senmonkijyutu/)が有名です。

次に、国家専門職です。この試験種の出題は、上記2のとおり小問集合となっているので書きやすいといえます。なぜなら、(1)→(2)……と設問に合わせて答えていけば良いからです。ちなみに、財務専門官の財政学も小問集合である点は同様ですので、同じように書きやすいです。
そのため、問われている用語を辞書的に自身で解説できるように準備をすると良いでしょう。例えば、択一式のために用意した経済学の参考書(予備校に通っている人はそのテキスト)の索引にあるキーワードを見て、説明する言葉を思い浮かべる→該当ページで説明の仕方が合っているかを確認するというものです。
もちろん、東京都ⅠBと併願し、両方の試験で記述に用いる人は、都庁用の対策をすれば、模範解答の読み込みを通じて、辞書的に解説する力も養われています。つまり、都庁の対策でカバーできるでしょう。
なお、過去5年において、マクロ経済学範囲からの出題が、東京都ⅠBで4年、国家専門職で3年となっています。そのため、マクロ経済学が多く出るようにみられる気がするかもしれません。しかし、過去10年にすれば、東京都ⅠBも国家専門職も6年なので、やや多めという感じです。ミクロ経済学が捨てられるという判断はしない方が賢明でしょう。

4.他科目の記述と経済学系の記述のどちらを選ぶべきか

さて、東京都ⅠBは憲法・行政法 ・民法・経済学・財政学・政治学・行政学・社会学・会計学・経営学から3科目を、国税専門官は憲法・民法・経済学・会計学・社会学から1科目を、財務専門官は憲法・民法・経済学・財政学・会計学から1科目を選択するのが記述試験なわけですが、どれを選べばいいのかと悩む受験生は多いと思います。
このとき、3つのことを考えて欲しいと思います。
1つ目は「学習環境が無差別なこと」です。2020年以降、市販での専門記述対策本の出版はありません。法律科目は判例変更などがあったところは、昔の本では対応できませんし、政治学や行政学などの行政系も出やすい言葉のブームが時代とともに変わります。つまり、経済学に限らず、記述試験の対策は予備校の講座受講を通じて、模範解答を得て読みこむことが近道になります。この点に大差がないため、どれを選んでも無差別となります。
2つ目は「科目ごとの難易度の差」です。法律系は憲法・行政法は少ないものの、民法は事例が出る点が怖いところです。会計学は、令和5年度に「連結財務諸表」を論点とする難易度がかなり高いものがでましたがバラつきがあります。行政学系も東京都ⅠBの令和5年度は「自由民主主義体制、全体主義体制及び権威主義体制について説明せよ」で、傾向と異なり、かつあまり多肢選択式の学習でもしない論点が出るなど、バラつきが大きいです。
他方、経済学と財政学は出題範囲が絞りやすく(特に財政学は絞りやすい)、事例問題も少ない傾向にあるため、取り組みやすいです。
3つ目は「汎用性」です。例えば、裁判所事務官一般職を受ける場合、憲法が必須です。外務専門職を受ける場合は、憲法・経済学・国際法から2題です。多くの試験種でも使うものが望ましいでしょう。
ということで、憲法・経済学は出題の安定性からも、汎用性の高さからも選択できるように学習すると良いでしょう。また、財政学の範囲は少ないためおすすめです。これらをベースに、ご自身の択一式試験対策で得意な科目も記述できるようにしておくと良いでしょう。これは、当日に試験問題が選べるため、出題内容を見て、準備してきた憲法・経済学・財政学より他の科目で書くように対応できるからです。
もちろん、ご自身の学部学科などの専門性を優先して、記述科目を選ぶことも大切です。

5.まとめ

 本稿では、東京都ⅠBや国家専門職(国税専門官、財務専門官)などで出題される経済学・財政学の傾向と対策を、他科目との兼ね合いを意識しながら解説しました。
 なお、記述は模範解答の読み込みだけでなく、自分で数本書いてみることも大切です。そして、書いたら添削を受けることも大事なことです。このとき、究進塾では、添削指導をしていますのでお気軽にお問い合わせください(憲法・経済学・財政学の添削をしております)。
 受験生の効果的で効率的な学習の一助になれるよう尽力いたしますので、引き続きよろしくお願いします。

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