東京都特別区の経験者採用試験では、6月下旬から7月中旬の申込時に「職務経歴書」を提出します。
「職務経歴書はすぐ書ける」と誤解している受験生も多いのですが、実際には入念な準備が必要です。
本記事では、知らないとマズい「職務経歴書」の質問内容や回答のポイントを徹底解説します。
この記事で「職務経歴書」のポイントを掴み、迷わず書けるように準備していきましょう!
この記事の目次
1.職務経歴書で受験生に大きな差がつく3つの理由
まず、特別区の経験者採用の大まかなスケジュールを確認しましょう。
申込期間 (職務経歴書の入力あり) |
6月下旬~7月中旬 |
一次試験 (教養試験・論文試験) |
9月初旬 |
二次試験 (面接試験) |
10月下旬~11月初旬 |
合格発表 | 11月中旬 |
区面接 | 11月下旬~12月上旬 |
(区より)採用内示 | 基本的に年内 |
このスケジュールを見て、
「8月は教養や論文の勉強が忙しくなるかも…。」
「とりあえず申し込んで、夏にしっかり勉強だな!」
このように思った方、いませんか。
ただ、実際には申込の段階で「職務経歴書」の提出があります。
そして、この「職務経歴書」への取組方次第で、受験生間に大きな差がつきます。
理由は3点。
①職務経歴書にかける労力が人によって大きく違うから ②職務経歴書は2次試験の基礎資料として面接官の手元に置かれるから ③職務経歴書をしっかり準備すると論文力・面接力の基礎が身につくから |
以下に1つずつ、解説していきますね。
1-1【理由①】職務経歴書にかける労力が人によって大きく違う
・志望度が低い人、直前で受験を決めた人⇒1,2時間で書き上げた思いつきで書く ・志望度が高い人⇒じっくり時間をかけて調べて書き、添削も受けて質を高める |
「職務経歴書」はエントリー時点で出さなければいけないので、準備不足になりがちです。
特に、志望度がそこまで高くない人や、申込締切ぎりぎりで受験を決めた人は、職務経歴書をしっかり準備する時間を取れていません。
結果、締切日当日にあわてて記入した職務経歴書を提出することになります。
※実際に、「選考案内」には、「申込締切直前はアクセスが集中することが予想されるため、 時間に余裕をもって申し込んでください。 」というただし書きがあります。
対して、特別区の試験に向けて前もって準備する人は、5月ぐらいから準備しています。
実際、良い回答を書くためには、自己分析や特別区研究、添削してもらう機会も必要。
ですから、実際に職務経歴書の下書きは、1か月ぐらい前から始めた方が良いのです。
1-2【理由②】職務経歴書は2次試験の基礎資料として面接官の手元に置かれる
×質の低い職務経歴書→面接開始時点で印象が悪い、どんな質問が来るか分からない ◎質の高い職務経歴書→面接開始時点で印象が良い、質問がある程度事前に予測できる |
「職務経歴書」が実際に使われるのは2次試験(面接)。
特別区の経験者採用では面接の出来が合否に直結します。
なんと面接時間は40分程度もあるのです。
3人の面接官は、手元の職務経歴書コピーを見ながら交代で質問します。
×パッと見て、受験生の志望動機や強みがよく分からない
×受験生の職務経験や能力にも、いまいち興味をひかれない
×なにより、じっくり練られた熱意ある回答に見えない
こんな質の低い「職務経歴書」は、面接開始時点で面接官の心証が悪いでしょう。
対して、
◎一見して、受験生の志望動機や強みが分かる
◎質問したくなる職務経歴やエピソードがある
◎回答から「受かりたい」熱意が伝わってくる
こんな質の高い「職務経歴書」なら、とても良い印象で面接がスタートするはず。
実際には、面接の中身こそ最重要です。
ただ、後述しますが、優れた「職務経歴書」は一字一句が興味をひく「濃い回答」です。
さらに字数の関係で、「職務経歴書」にはどうしても盛りこめない情報もあります。
そして実際、面接官はそこが気になって質問してきます。
つまり、良い職務経歴書を書いた受験生は、面接のやり取りでも主導権を握れます。
面接の質問の多くが、「想定の範囲内」になるのです。
1-3【理由③】職務経歴書をしっかり準備した人は論文力・面接力の基礎が身につく
・準備過程で志望動機や自己PRをじっくり考え、言語化することになる ・その行為自体が「課題式論文」「職務経験論文」「面接」すべてにプラスになる |
職務経歴書の「4つの質問」は、志望動機や自己PRの要素も含んだ複合的な質問です。
厳しい制限字数に多くの要素を盛りこむ必要があるため、準備には骨が折れます。
しかし、そこで考えた回答内容は論文試験や面接試験にそのまま生きてきます。
具体的には…
・”自己PR”的内容:「職務経験論文」や「面接の回答」にそのまま使える
・”志望動機”的内容:「課題式論文」や「面接の回答」にそのまま使える
職務経歴書をじっくり作成することが、同時に1次・2次試験の対策にもなるのです。
2.職務経歴書の「4つの質問」回答ポイント
2-1職務経歴書の「4つの質問」とは?
職務経歴書で聞かれる4つの質問は、毎年ほぼ変わっていません。
以下、実際の質問を見てみましょう。
職務経歴書「4つの質問」 ※太字は筆者によるもの |
1.あなたが特別区職員を志望する理由を、あなたのこれまでの職務経験や専門知識を踏まえ、携わりたい職務と、その職務を通じて実現したいことを交えて入力してください。
2.あなたが、特別区が求める「自ら考え行動する人材」に当てはまる人物であることを、今までの職務経験をもとに記入してください。 3.今までの職務経験の中で失敗の許されない状況に直面した際、それをどのように解決に導いたか記入してください。 4.<1級職>今までの職務経験の中で、あなたがチーム(組織)として達成したことを、あなたのチームにおける役割や、どのようにチームに貢献したかを交えて記入してください。 |
1つの質問といっても、それぞれの質問に複数の要素が含まれていますね。
ところが、1つの質問につき320字までしか入力できません。
この字数の中で、
✓聞かれていることに過不足なく答える
✓自己PRや志望動機を魅力的に伝える
この両方を満たす回答が求められています。
そんな回答をまとめるため、次項では質問ごとに留意すべき点を取り上げます。
2-2職務経歴書(エントリーシート)のまとめ方
4つの質問それぞれ、【聞かれていること】と【おさえたいポイント】を掲載しました。
1つずつ見ていきましょう。
1.あなたが特別区職員を志望する理由を、あなたのこれまでの職務経験や専門知識を踏まえ、携わりたい職務と、その職務を通じて実現したいことを交えて入力してください。 |
【聞かれていること】 ①特別区の志望理由 ②あなたの職務経験や専門知識 ③あなたが携わりたい職務 ④その職務を通じて実現したいこと 【おさえたいポイント】 ①について:国家公務員や都庁(県庁)ではなく特別区が良い理由を含める ③について:区役所にどんな職務があるか調べた上で②が生きるものを選ぶ |
この質問では、【聞かれていること】が少なくとも4つあります。
4つすべてに明確に答えるのはもちろん、【おさえたいポイント】も確認してください。
たとえば、「なぜ特別区なの?」という質問は面接でも最頻出です。
国家公務員や広域自治体(都道府県庁)職員との業務の違いを理解した上で、
「だから自分は特別区が良い」「特別区が向いている」と回答できると良いですね。
また、区役所の仕事といっても様々。
✓あなたが携わりたい職務は、区役所の部署名でいうと何?
✓あなたがこれまで培った能力はどのように生かせる?
これらの質問に「パッと答えられない…」という人は、いまが良い機会です。
各区役所のホームページの組織図などを参考に、携わりたい職務を考えてみましょう。
2.あなたが、特別区が求める「自ら考え行動する人材」に当てはまる人物であることを、今までの職務経験をもとに記入してください。 |
【聞かれていること】 ・今までの職務で、あなたが自ら「考え」「行動した」こと 【おさえたいポイント】 ・「考え」と「行動」両方にふれる ・読む人に伝わるように「前提状況」や「結果」の説明が抜けないようにする |
2つ目の質問はシンプルにも見えます。
「自ら考え行動した」経験を書けばいいのです。
ただ、【おさえたいポイント】が2つあります。
まず、「考え」と「行動」の両方にふれること。
(意識しないと「考え」は抜けやすいです。)
次に、「前提となる状況」や「結果」も書くことです。
自分の中では分かっているストーリーも、初対面の面接官には分からないかもしれません。
ですから、字数は限られていますが可能な限り、
「前提状況」については…
✓こんな職場で、こんな同僚と
✓こんな課題があるなかで
「結果」については…
✓こんな良い結果が出た
✓上司や同僚からこんな反応があった
こんな説明を盛りこみましょう。
全体の流れとして、
✓ビフォー(前提状況)⇒「考え」⇒「行動」⇒アフター(結果)
このような型で書くとスッキリした回答になりますよ。
3.今までの職務経験の中で失敗の許されない状況に直面した際、それをどのように解決に導いたか記入してください。 |
【聞かれていること】 ①今までの職務で、あなたが直面した「失敗の許されない状況」とはどんなものか ②その状況をどうやって解決に導いたか(どう考え・どう行動?) 【おさえたいポイント】 ①について:「失敗の許されない状況」を理解してもらうための状況説明を工夫する ②について:「(個ではなく)組織対応」や「同僚との連携」の視点を忘れない ※質問2とは違うエピソードにした方が良い |
この質問は、1つ前の質問に似ていますね。
✓ビフォー(失敗できない状況)⇒考え⇒行動⇒アフター(解決)
このようにまとめれば良さそうです。
ただ、「失敗の許されない状況」というのは、業種が違うと分かりづらい場合があります。
回答は一度身近な人に読んでもらって、困難な状況が伝わるか確認しましょう。
(できれば公務員試験が分かっている人に聞くのが良いです。)
また、この質問の回答はよく注意しておかないと、
“私の大活躍で、会社のこんな危機的状況を救いました!”
こんな個人のスタンドプレイを思わせる書きぶりになってしまいます。
実際にほとんどの「失敗の許されない状況」は一人で打開できるものではなく、
「組織対応」や「同僚との連携」によって成し遂げられるもののはず。
よく過去を振り返り、
✓どんなふうに周りと連携したか、協力を仰いだか
この視点を含んだ回答を書きましょう。
4.<1級職>今までの職務経験の中で、あなたがチーム(組織)として達成したことを、あなたのチームにおける役割や、どのようにチームに貢献したかを交えて記入してください。 <2・3級職>今までの職務経験の中で、あなたが部下や後輩の指導・育成にあたった際、最も重視した点を記入してください。 |
<1級職> 【聞かれていること】 ①チーム(組織)として達成したこと ②あなたのチームにおける役割 ③どのようにチームに貢献したか(どう考え・どう行動?) 【おさえたいポイント】 ・その経験から自分が得た「学び」まで書けると良い※質問2・3とは違うエピソードにした方が良い |
<2・3級職> 【聞かれていること】 ①部下や後輩の指導・育成にあたった経験 ②その際、最も重視した点(どう考え・どう行動?) 【おさえたいポイント】 ・組織としてどんな指導や育成を求められていたのか書く(前提状況) ・その経験から自分が得た「学び」まで書けると良い※質問2・3とは違うエピソードにした方が良い |
最後の質問項目は、「1級職」と「2・3級職」で異なります。
ですが、最後も基本的には質問2や質問3に近い書き方になるでしょう。
つまり、1級職なら、
✓ビフォー(前提となる状況)⇒チーム貢献の考え・行動⇒アフター(結果)
2級職なら、
✓ビフォー(前提となる状況)⇒指導育成の考え・行動⇒アフター(結果)
加えて意識したいのは、経験から得た「学び」です。
この質問項目は「1級職」「2・3級職」で分かれていることからも、
「この経験を特別区でどう生かしてくれますか?」と暗に聞いていますよね。
だからこそ、単発で体験談・エピソードを提示するだけでなく、
たとえば、
✓この経験から、●●することこそチーム貢献の肝だと分かった
✓この経験から、特別区でも●●を大切に部下や若手と接していく
このように書けば面接官も、あなたが特別区で働く姿をイメージしやすくなるでしょう。
3.必勝!職務経歴書の準備法【3ステップ】
3-1【ステップ①】字数制限を気にせず書く
まず、前項の【聞かれていること】と【おさえたいポイント】をクリアした回答を作ります。
すると、制限字数の2,3倍の回答になるはずです。
ここから字数を削っていくことで「濃い回答」ができあがります。
※いきなり字数を意識して書くと、内容の薄い文章になってしまうので避けましょう。
3-2【ステップ②】字数制限に収まるように削る
回答の要点をおさえつつ、字数を削る上でのヒントを以下に示します。
✓重複表現など不必要な表現を削る
✓具体例は1つに絞る(「他には?」と面接で聞かれたら回答)
✓信頼できる人に見てもらって不要と分かった部分を削る
重複表現とは、あなたの回答でくり返されている言葉のこと。
「私は」という言葉がひとつの回答に何度も出てきていませんか?
「~ということ」「~すること」という表現はありませんか?
多くの場合、これらの言葉は削除しても文章が成立します!
また、質問2~4には職務経験から具体的な事例を書くはずです。
その際、回答1つにつき事例は1つに絞るのがベター。
複数書くとそれぞれの説明が薄くなり、説得力が減ってしまいます。
結局のちのちの面接で、「他には?」と深掘り質問されることが多いので、
それまで2つ目・3つ目の事例は取っておけば良いのです。
とはいえ、重複表現や削るべき具体例は、自分では気づけないことも。
回答のブラッシュアップには、客観的な助言が助けになります。
ベストなのは、公務員試験をよく分かっている人に添削してもらうことです。
「身近に頼れる人がいない!」という方、
ASK公務員では「オンライン添削」を実施しています。
ぜひ活用してくださいね!
3-3【ステップ③】「4つの質問」回答は覚えるほど読みこむ
職務経歴書は提出したら終わり、ではありません。
必ずワードファイル等で保存しておき、提出後も読み返しましょう。
理想は、覚えるほどに読みこむこと。
そうすれば、論文試験や面接試験の最高の準備になります。
4.まとめ
本記事のまとめです!
✓「職務経歴書」への取組次第で、受験生間に大きな差がつく理由3つ
①職務経歴書にかける労力が人によって大きく違う ②職務経歴書は2次試験の基礎資料として面接官の手元に置かれる ③職務経歴書をしっかり準備すると論文力・面接力の基礎が身につく |
✓職務経歴書には毎年聞かれる「4つの質問」がある
✓4つの質問それぞれ【聞かれていること】と【おさえたいポイント】がある
✓必勝!職務経歴書の準備法【3ステップ】
ステップ①:字数制限を気にせず書く ・【聞かれていること】【おさえたいポイント】に確実に答える ステップ②:字数制限に収まるように削る ・重複表現など不必要な表現を削る ・具体例は1つに絞る(「他には?」と面接で聞かれたら回答) ・信頼できる人に見てもらって不要と分かった部分を削る ステップ③:「4つの質問」回答は覚えるほど読みこむ ・そうすることで、論文試験や面接試験の最高の準備になる |
✓客観的な助言を活用して、職務経歴書をレベルアップしよう
以上です!
受験生ごとに取組レベルの差が大きい「職務経歴書」。
ここまで読んでくださったあなたは熱意ある受験生のはず。
ぜひ後悔のない準備をして、ベストな回答を提出してください!
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