1.はじめに
公務員試験を知ると沢山の科目があり、どのように対策しようか悩むことかと思います。特に、塾・予備校を利用せずに独学していると、大いに悩むことでしょう。また、何とか学習を始めてみても、息詰まってくると、学習方法に問題があるのかと新たな悩みが生まれ、その検討をしていると、肝心の学習時間が減りますし、モチベーションも下がります。
そこで本記事では、公務員試験の専門科目として出題される「民法」の独学での攻略方法をお伝えします。このやり方でトライしてみて、難しい場合は、いっそのこと塾や予備校を頼った方が良いかなと筆者は考えます。その試金石に、以下の学習方法をお試しください。
ちなみに、タイトルに8割ゲットとしているのは、公務員試験は概ね6〜7割の得点で合格するため、8割取れる=合格に大きく寄与できる科目=得意科目になったことを意味します。つまり、民法を独学で得意科目にする学習方法やそのための教材を紹介しつつ行います。
2.民法という科目の特徴
学習方法を述べる前に、民法という科目の(1)出題数、(2)出題範囲、(3)難易度などをおさえましょう。
(1)出題数
2023年実施の公務員から行政法の出題数をみていくと、
◎国家一般職・特別区は10問
◎地方上級全国型4問、関東型6問、中部北陸型は7問です。
◎国家専門職は、国税専門官6問、財務専門官8と労働基準監督官は5問です。そして、裁判所事務官が13問です。
なお、必須解答となる試験種が多いのも民法の特徴です。上記の試験種のうち、地方上級全国型、国税専門官、裁判所事務官が必須回答です。沢山の試験種で使える科目であることと必須試験種が存在していることから、民法を捨てることは難しく、選択せざるを得ない科目と言えます。
(2)出題範囲
民法の出題範囲は、以下①~⑥に分かれます。
国家一般職や特別区の試験では、①~③を民法Ⅰとし、④~⑥を民法Ⅱとして出題しています。
①総則……民法全体に共通して問題になる事柄を扱います
②物権……不動産や動産に対してどのような権利が認められるのかを扱います。
③担保物権……債権の回収をする際に、物を利用する場合における法律関係を扱います。
④債権総論……人に対してどのような権利が認められるのかを扱います。
⑤債権各論……さまざまな契約とそれに関する法律関係を扱います。
⑥家族法……例えば相続などの家族間の法律に関する事項を扱います。
(3)難易度
民法の条文数は1050条です。憲法は103条ですから、10倍以上です。また、判例もきちんと出ます。つまり、膨大な範囲です。
そして、学習の冒頭から「権利能力」「意思能力」「行為能力」などの日常生活であまり使わない言葉のオンパレードです。さらに、事例問題なども出てくるので、丸暗記が通用しません。
したがって、民法は、経済学と並び、公務員試験で最難関科目と言われます。あるいは、「民法を制する者は公務員試験を制す」などとも言われます。
心して学習しなければなりませんね。
3.行政法の学習方法&お勧め参考書
(1)学習方法
学習の流れとしては、
①民法の全体像を一気に読んで理解する
②テキスト×解説一体型で解きながら覚える
③②にはない問題も含め、演習本で周回する
④最新判例をおさえる
というものです。
①のポイントは、読みやすい文章を一気に読んでいくことです。あまり細かい点は気にせず読み進めていくのです。
その後、②にいきますが、①だけの学習ですと、ほとんど解けないと思います。したがって、②では、テキスト部分をよみながら①の理解を深めつつ、読んだ範囲にあたる問題をすぐに解いて行く(例えば、1日1章分それをする)。
その後は、③として問題集を周回していきます。④の最後は、最新判例をおさえます。というのは、最新の判例自体を知ると共に、その判例を踏まえた事例問題対応などをしていくことが大切だからです。
以下では、段階ごとにお薦めの本を紹介していきましょう。
(2)お薦めの学習本
①「民法の全体像を一気に読んで理解する」ための本
資格予備校講師が書いた本がさらっと全体像を把握するのにお勧めです。このとき、一文一文を深く理解しようとするより、「こんな感じなのかぁ」となればOKです。また、繰り返しますが、スピードを重視して一気に読みましょう。
【ア】
「TEZUKAYAMA民法入門: 親族編 (エンタメ法学)」
⇩
「TEZUKAYAMA民法A:総則・物権編 (エンタメ法学)」
⇩
「TEZUKAYAMA民法B:債権編 (エンタメ法学)」
⇩
「TEZUKAYAMA民法C:相続編 (エンタメ法学) 」の4冊、全て松下慎一著(Kindle版)
電子書籍で4冊800ページ程度あるものの、1ページの字数が大きいので、一般の書籍で置き換えると350頁くらいでしょう。もちろん書名から分かるように、公務員試験として書かれているわけではなく帝塚山大学生用としてのものです。
ただ、若者向けに分かりやすい言葉と具体例が書かれているので、民法の全体が分かるように工夫がされています。そして、4冊1500円以下のためコスパも大変良いです。
イと見比べて、良い方にしてください。なお、コチラの場合は、1週間以内に読んでしまいましょう。
【イ】
イ;「公務員試験 最初でつまずかない民法1[改訂版] (公務員試験 専門試験対策)」
「公務員試験 最初でつまずかない民法2[改訂版] (公務員試験 専門試験対策)」
公務員試験対策と銘ってないとやる気が出ないという方は、こちらも良いでしょう。イの方がボリュームが多いので、10日ほどかけて読み切りましょう。なお、2024年7月現在、必ず「改訂版」とかかれている本を読みましょう。
②テキストと問題集の一体型の使用
さて、次の段階は、
こちらは、ゼロからシリーズが最も優れています。ここで、解説部分を読んで、問題に取り組む学習を1日1節分進めましょう。2冊で概ね1か月かかりますが、知識が整理され、基本的な問題を利用して公務員試験で民法を得点源にする土台が確実に身につきます。
なお、上記の本は、良書ですが、2020年発行で、民法大改正には対応していますが、未成年が18歳以上でなく20歳以上の時代の本になっているため、Ⅰの総則、「人」における未成年のところなどは18歳から20歳へ読み替え、問題にも取り組まなければならないので留意しましょう。
③演習本
以下の【ウ】か【エ】の2冊の、好きな方を選びましょう。なお、実施の際は、②で扱っていた問題(重複問題)を飛ばしながら取り組みましょう。こちらは、2~3回転しましょう。
【ウ】
『公務員試験 新スーパー過去問ゼミ7 民法1一総則・物権・担保物権 (新スーパー過去問ゼミ7)』
『公務員試験 新スーパー過去問ゼミ7 民法2一債権総論・各論・家族法 (新スーパー過去問ゼミ7)』
【エ】
『2024-2025年合格目標 公務員試験 本気で合格!過去問解きまくり! 【10】民法Ⅰ』
『2024-2025年合格目標 公務員試験 本気で合格!過去問解きまくり! 【11】民法Ⅱ』
④判例集
最新の判例集としては、行政書士試験用の『みんなが欲しかった! 行政書士の判例集 2024年度 [行政書士の教科書に準拠](TAC出版) (みんなが欲しかった!行政書士シリーズ)』です。これの、行政法部分を使う感じです。
公務員試験用を使わないのは、行政書士用は毎年改訂された新しい判例集が出版され、公務員試験と範囲も多く重なるためです。
なお、判例集は、②や③の学習をする中で、必ずしも言及がされていない事柄を知るためにも使えます。いわば、辞書代わりということです。
また、直前期にはどこの判例箇所を時事的に読んだ方が良いかは、『公務員受験ジャーナル』という雑誌から導きましょう。あるいは、憲法の学習方法を紹介したときの記事(下記)で示したように、外部模試を受けることも有益です。
4.おわりに
本記事では、民法についての科目の特徴や出題傾向、学習方法、お薦めの参考書についてお伝えしました。参考にして取り組んでみてください。
これで行っても厳しい場合や読み進められないという場合は、塾や予備校を使って講義を通して身につけると良いでしょう。また、読んでいても疑問点が生まれる場合は、個別指導塾などを利用し、質問しながら学べるサービスの活用を考えましょう。
究進塾では、こうした自身の疑問点を持ち込んで聞く指導を受けることができます。もちろん、講義調の指導を希望すれば、その形での利用も可能です。
体験授業や受講相談は無料ですので、一度必要な対策を計画した上でぜひ効率的な利用をご検討ください。お問い合わせお待ちしています。