1.はじめに
公務員試験で国家一般職や国家専門職、そして地方上級などの職種で専門試験がある方の中には、どの科目を選択しようかと悩む方もいるのではないでしょうか。もちろん、憲法・民法・行政法・経済学などはどの試験種でも出題されますので、選ばざるを得ないと思います。ただ、それ以外の科目はどうしようかと悩むわけです。
このとき、重要なことの1つが、各科目の攻略法を知ることです。なぜなら、その攻略法を知って、実践できるのであれば選択すれば良くなり、難しそうであれば違う科目を利用することになるからです。
そこで本記事では、行政事務に携わる試験種の専門科目として出題される「行政学」の攻略法をお伝えします。
ちなみに、タイトルに8割ゲットとしているのは、公務員試験は概ね6〜7割の得点で合格するため、8割取れる=合格に大きく寄与できる科目=得意科目になったことを意味します。すなわち、行政学を得意科目にする学習方法を教材を紹介しつつ行います。
なお、学習方法は予備校に通っていない独学者を想定した方法をご紹介します。
2.行政学の位置付け
(1)出題数
行政学の出題は令和6年度実績で、以下となっています。
◎国家一般職・・・・・・科目選択式で1科目分=5問(40問回答)
◎特別区・・・・・・問題選択式最大5問(40問回答)
◎地方上級・・・・・・全国型・関東型・中部北陸型問わず2問(全国型のみ必須)
政治学や社会学と異なり、国家専門職では出題がありませんので注意しましょう。また、記述試験で行政学を使えるのは東京都のみです。
(2)出題内容
学習する内容は、下記に大別されます。
①行政学の理論史
絶対王政期の官房学とシュタイン行政学というヨーロッパ大陸での学問的な歴史や、アメリカでどのように行政学が発展したかという点の出題です。主に、学問発展に寄与した学者から出題されます。この部分は、他の科目ではあまり聞かない人物がでてきます。行政学ならではの範囲といえます。
②行政組織
官僚制の特徴(問題点を含んだ)や様々な組織編成の原理、そして日本の行政組織がどうなっているかについての出題です。稀に、アメリカやフランスなどでは公務員の採用をどうしているかなどの話も出題されます。
なお、「官僚制」は政治学や社会学と、「様々な組織編成の原理」は経営学と、それぞれ重なります。そして、「日本の行政組織」は新しく庁が出たときなどは時事と絡んで出題されます。時事的要素もあるわけです。この単元は、他科目で学習する内容が活きやすいといえます。
③行政の活動と統制
政策過程、予算づくり、それらの評価(政策評価)、行政の責任や統制などについて学びます。「政策過程」は政治学の、「予算づくり」は財政学の、行政が責任を果たしているということで透明性ある行政の観点で情報公開している話は行政法の知識が活きてきます。また、PDCAサイクルなどを意識して行政活動している点は経営学とも関連します。
もちろん、ファイナーとフリードリヒの行政責任論争など、単元の細目によっては行政学だけの部分もあります。ただ、他科目学習のおかげで「話が頭に入りやすい」科目といえます。
④地方行政
大陸系とアングロ=サクソン系の地方行政の違いや、戦前と戦後における日本の地方行政の違いなどが出題されます。ここは、①同様に、他科目との共通点は少ないかなと思います。ただ、戦後の地方自治の状態は、一部財政学や時事とも絡みます。
(3)難易度
難易度は、ずばり、他科目から学習していたら易しいといえます。
理由は3つあります。
第1は、先の出題内容でお伝えしたとおり、他科目と関連するところが多いからです。人文科学の世界史、政治学・社会学・財政学などを学習した状態で臨むとかなり取り組みやすく、時事部分と並行して学習すればその効果は大きいものとなります。
第2は、学者を覚える数が、政治学や社会学に比べて随分少ないからです。また、この学者さんたちが、時代の流れに沿って覚えていけばいいので(同時代に沢山出てこない)、その点も暗記が楽だといえます。
第3は、就職先に絡むところなので興味を持って学びやすい単元があるからです。例えば、日本の行政組織がどうなっているか、府・省・庁の違い、行政委員会と審議会の違い、国務大臣の中の特命担当大臣とは何なのかなどをおさえる部分があります。これらは、自身が勤務したいと考えている場所についてですので、無味乾燥な暗記にならずにすむといえるでしょう。
ただ、行政学を先に勉強してしまうと、少し難しく感じる可能性がありますので、できれば、教養の世界史(捨てる人でも、19・20世紀の近現代ヨーロッパ・アメリカ史くらいはさらっとみておくといいです)→政治学・社会学・財政学と学習した後に行政学を行いましょう。
3.おすすめの勉強法と参考書紹介
(1)おすすめの勉強法
おすすめの学習法は、上のアドバイスと重なりますが、
教養の世界史→政治学・社会学・財政学の後に学習するというものです。
この順番に学習している場合、いきなり過去問集からはじめてOKです。
使う過去問集は、
■『新スーパー過去問ゼミ7 行政学』(実務教育出版)か
■『2024-25年合格目標 本気で合格!過去問解きまくり行政学』(LEC出版)のいずれかが良いでしょう。
どちらの本でも、単元ポイントを読んでから過去問を問いて解説を読み込むことをしましょう。なお、時事が絡む単元もあることから、試験年度を意識して、最新版を使いましょう。
(2)その他、おすすめの参考書について
上記に挙げた過去問集以外のおススメ参考書としては、受験生の困りごとタイプ別に以下となります。
まず、単独で行政学だけを取るつもりの方(政治学のボリュームを嫌ってとか、社会学は他の試験種との併願上使わないので学習をしないとかの方)は、以下の本で行政学をさらっとおさえるのをお勧めします。
■『行政学案内(第3版)』
この本の著者である真渕勝氏は有斐閣からもっと分厚い『行政学』を出していて、一説には、昨今の行政学問題のタネ本などと言われていますが、この本はあまりにページが多くて公務員試験で得点するだけを考えるときついと思います。
したがって、『行政学案内(第3版)』が推奨です。ページにして200ページ程度(15章は読まなくていいので、もっと実際は少ないでしょう)です。また、1ページの文字もそんなに詰まっていない上、かみ砕かれていて分かりやすく、豊富な事例もあるので頭にすっと入ってくると思います。数時間あれば読めると思います。
なお、出版社があまりAmazonに本を入れていないようですので、出版社に直注文がお勧めです。
★慈学社 注文用ページ
次に、都庁を受ける方で、記述にも対応したい人がいることでしょう。それに対しては、
■『寺本康之の公務員試験専門記述 Kindle Book 行政学 参考答案集』が唯一の対策本といえますので、使ってみると良いでしょう。なお、電子書籍です。
4.おわりに
行政学は、学習の順番を間違えなければ、かなり予備知識を持った上で挑むことができます。そうなると、後は過去問集をやりこむだけで得点が取りやすくなります。もしも、他科目からの学習順序を踏めない場合は、真渕勝氏の『行政学案内(第3版)』を読んでから始めると良いでしょう。
皆さんの学習を応援しています。
学習上の悩みがあれば、ASK公務員・究進塾では無料での相談を1回行っていますので、ぜひ利用してみてください。