「特別区経験者採用の筆記試験の難易度は?」
「筆記試験でどれくらい得点すればいいの?」
「忙しい社会人が効率よく対策する方法は?」
こんな疑問に応える記事です。
特別区経験者採用では1次試験に教養試験があります。
(※事務職・ICT職について。他職種は教養試験免除です。
本稿は事務職・ICT職希望の方向けに書いていきます。)
受験生にとっては最初の関門といえます。
とはいえ、同日実施される論文試験も対策が必要です。
どれくらい教養試験対策をすればいいのか、悩みどころですね。
本記事では、特別区経験者採用における
・教養試験の位置づけ
・教養試験の内容や特徴
・確実かつ効率的な勉強法
これらをまとめて解説します。
最後まで読めば、教養試験の全体像がクッキリ見えてきますよ。
まず、特別区経験者採用における教養試験の位置づけから確認しましょう。
この記事の目次
1.教養試験の位置づけ:「足切り」のみに使用される
いつ | 試験の種類 | 最終合格に影響するか |
一次試験 | 教養試験 | 影響しない |
※論文試験(課題式論文&職務経験論文) ※事務職の場合。ICT職はICT論文のみ。 |
影響する | |
二次試験 | 個人面接 | 影響する |
最初に最も大事なことを書きます。それは、
✓ 教養対策に時間をかけ過ぎてはいけない(時間をかけるべきは論文)
ということです。なぜなら、教養試験は最終的な合否には影響しないから。
表から分かるとおり、最終的な合否に影響するのは、論文と2次試験(面接)です。
では、教養試験の得点は何に影響するのでしょうか。
1-1.教養試験は1次試験の「足切り」判定のみに使われる
ずばり、教養試験は1次試験の「足切り」判定のみに活用されています。
特別区人事委員会の「令和5年度経験者採用試験・選考案内」によれば、
>教養試験の成績が一定点に達しない場合、論文は採点の対象となりません。
>第 1 次試験・選考の合格者は、論文の総合成績により決定します。
このように明記されています。
つまり、教養試験で「一定点」を取ることで、やっと論文を読んでもらえるのです。
そして、1次試験の合否は論文の成績のみで決まります。(教養試験の加点なし。)
ですから、教養試験で高得点を狙う必要はありません。
確実に「足切り」ラインを超えていくことが大切です。
1-2.「足切り」ラインは例年4割程度に過ぎない
そうはいっても、「足切り」に引っかかってしまったら、そこで落ちてしまいます。
受験生としては、
「何点取ったら、足切りラインを超えられるの?」
と不安になるでしょう。
毎年の足切りラインは、残念ながら公開されていませんが、
・毎年、足切りラインは変動する
・だいたい4割〜5割取れると突破できる年が多い
このようなことが過去の受験生データから分かっています。
1-3.自分の実力と安全圏(5割)の差を埋めていく
「なんとか半分の5割、得点する!」と目標設定するのがオススメです。
事務職の場合、教養試験は35点満点なので、
過去問で18点以上取れれば、とりあえず安全圏です。
(ICT職は20点満点なので、10点以上が目標になります。)
✓ まず、自分で1年分の過去問を解いてみる
✓ 自己採点してみて、安全圏(5割)にどれくらい足りないか確認する
そうすることで、自分にどれくらい勉強が必要か分かってきます。
※過去問で常に6割以上得点できる人は、あまり教養試験対策に力を入れなくてOKです。
論文試験の対策に集中しましょう。
2.【徹底分析!】教養試験の出題分野とその特徴
R5年度【事務職(1級職/2級職)】 | ||
大分類 | 問題数 | 小分類 |
文章理解 | (8問/10問) | 現代文、英文 |
数的処理 | (16問/16問) | 判断推理、数的処理、資料解釈、空間把握 |
社会事情 | (6問/6問) | (いわゆる時事問題) |
選択問題 | (5問/3問) | 人文科学、社会科学、自然科学 |
R5年度【ICT職】の出題傾向 | ||
大分類 | 問題数 | 小分類 |
文章理解 | 5問 | 現代文、英文 |
数的処理 | 9問 | 判断推理、数的処理、資料解釈、空間把握 |
社会事情 | 6問 | (いわゆる時事問題) |
教養試験は35問で構成されると述べましたが、その中身を示したのが上の表です。
・文章理解
・数的処理
・社会事情
・選択問題(ICT職は無し)
大まかに分けると、これら4種類の問題があることが分かりますね。
2-1.そこまで難しくないが、とにかく時間が無い!
「教養試験は時間が足りない!」
「最後の問題にたどり着けなかった…」
教養試験では、多くの受験生がこのような感想をもちます。
実際に特別区経験者採用の問題は、
✓ 「大卒程度(上級レベル)」ではなく「高卒程度(初級レベル)」の問題
✓ ただし1問3分で解く必要がある(事務職は35問・1時間45分、ICT職は20問・1時間)
こんな傾向があります。過去問に解き慣れ、
✓ 簡単な問題を1,2分で確実に得点する
✓ 難しい・苦手な問題には4,5分で挑戦⇒無理なら「見切り」をつける
このように、一瞬一瞬の判断力を働かせられるよう訓練しておきましょう。
2-2.分野別の傾向では「数的処理」と「時事」が多い
R5年度【事務職(1級職/2級職)】 | ||
大分類 | 問題数 | 小分類 |
文章理解 | (8問/10問) | 現代文、英文 |
数的処理 | (16問/16問) | 判断推理、数的処理、資料解釈、空間把握 |
社会事情 | (6問/6問) | (いわゆる時事問題) |
選択問題 | (5問/3問) | 人文科学、社会科学、自然科学 |
R5年度【ICT職】の出題傾向 | ||
大分類 | 問題数 | 小分類 |
文章理解 | 5問 | 現代文、英文 |
数的処理 | 9問 | 判断推理、数的処理、資料解釈、空間把握 |
社会事情 | 6問 | (いわゆる時事問題) |
先ほどの表を再掲します。
分野別にみると、「数的処理」と「社会事情」で全体の6割以上を占めていますね。
なお、文章理解と数的処理はさらに細かく問題タイプを分けられます。
◆文章理解
✓ 現代文
✓ 英文
◆数的処理
✓ 判断推理
✓ 数的処理
✓ 資料解釈
✓ 空間把握
過去問を解くと、自分が得意・苦手な問題のタイプが見えてきます。
「文章理解は全体的に得意だから、確実に●問取る。」
「判断推理が苦手だから1問5分確保して、半分は正解したい。」
試験にむけて、このような具体的な得点計画を立てていきましょう。
ちなみに、「資料解釈」は時間をかければ全問正解が狙える分野です。
特に苦手意識がなければ、ここで4点確実に取れるように練習しておきましょう。
逆に、「社会事情」は、多くの受験生にとって安定した得点が難しいようです。
というのも最新テーマにふれる問題が多く、点数を取るにはかなり対策が必要だからですね。
その年の春のニュースも出題される可能性があるので、直前期(7,8月)に集中して対策しましょう。
3.【3ステップ】着実に足切り突破する「教養試験」の勉強法
ここまで、教養試験の位置づけや内容、特徴を見てきました。
それらを踏まえて、あなた自身の学習計画を立てていきましょう!
①現在の得点力把握
②安全圏を目指して、得意を伸ばす&苦手を克服する
③本番を想定した”通し”の問題演習
以上、3ステップで考えると効率的に学習することができますよ。
一つずつ、詳しく解説します。
3-1.【ステップ①】過去問を1年分解く⇒現在の得点を把握
何よりまず、過去問を1年分解くことです。
なぜなら、あなたの現在の「得点力」で、必要な学習量は変わるから。
再掲しますが、
✓ まず、自分で1年分の過去問を解いてみる
✓ 自己採点してみて、安全圏(5割)にどれくらい足りないか確認する
これが、教養試験対策の最初の一歩です。
ただ、ここで留意すべき点が2つあります。それは、
①過去問は区政会館や区役所でコピーすること
②最初の1年分は制限時間通りに解いてみること
一点目ですが、特別区人事委員会ホームページの過去問は3年分しかありません。
また、著作権の関係で、「文章理解」の問題が掲載されていないのです。
区政会館や区役所に行くと、もっと過去に遡って問題をコピーすることができます。
「文章理解」の問題も手に入ります。
ちなみに筆者のオススメは、新宿区役所です。
駅からのアクセスがよく、全年度の過去問がありますよ。
二点目について、くり返しになりますが、この試験は「時間の無さ」が特徴です。
簡単に見える問題でも、焦っている試験中だと解けないものです。
ですから、最初の1年分は自分の本当の得点力を測るためにも制限時間内で解いてください。
3-2.【ステップ②】安全圏(5割)までの差を埋めていく
過去問を1年分解いたら、自分が足切りを突破するために必要な得点が見えてきます。
過去問を活用して、得意を伸ばし、苦手を克服していきましょう。
くり返しになりますが、
✓ 自分にとって簡単な問題(分野)を1,2分で確実に得点する
✓ 難しい・苦手な問題(分野)には4,5分で挑戦⇒無理なら「見切り」をつける
この訓練を積み重ねることが大切です。
また、一般的な傾向をお伝えすると、
✓ 問題数の多い「数的処理」(特に資料解釈)から対策する
✓ 文系出身者は「文章理解」、理系出身者は「数的処理」を得点源にしやすい
✓ 直前の1,2か月で集中して「社会事情」の対策をする
これらのポイントをおさえると、得点力が向上していく受験生が多いです。
3-3.【ステップ③】あらためて過去問に”通し”で取り組む
前のステップで得点力が高まったら、あらためて本番スタイルで過去問に取り組みましょう。
分野ごとに区切るのではなく、制限時間内で全問解くのです。
このとき、次のような点に留意すると良いでしょう。
✓ 本番よりも5分短い100分で解く(5分余裕をもてるようにする)
✓ 本番に近い環境で解く(家ではない場所で、鉛筆を使用する)
✓ わからない問題を「飛ばす練習」をする
特に数的処理は、「解けそうで解けず、1問で10分使ってしまった…」という状況に陥りやすいです。
自分と相性の悪い1,2問はパスする勇気をもつことも、直前期には意識したいですね。
4.まとめ
本記事では、特別区経験者採用における
・教養試験の位置づけ
・教養試験の内容や特徴
・確実かつ効率的な勉強法
これらを大づかみできるように解説してきました。
最後に大事な点のみ、まとめておきますね。
✓ 教養対策に時間をかけ過ぎてはいけない(時間をかけるべきは論文)
✓ 教養試験は1次試験の「足切り」判定のみに活用されている
✓「足切り」ラインは例年4割程度に過ぎず、安全圏(5割)を目指すとよい
✓ 「数的処理」と「社会事情」の出題が全体の6割以上を占めている
R5年度【事務職(1級職/2級職)】 | ||
大分類 | 問題数 | 小分類 |
文章理解 | (8問/10問) | 現代文、英文 |
数的処理 | (16問/16問) | 判断推理、数的処理、資料解釈、空間把握 |
社会事情 | (6問/6問) | (いわゆる時事問題) |
選択問題 | (5問/3問) | 人文科学、社会科学、自然科学 |
R5年度【ICT職】の出題傾向 | ||
大分類 | 問題数 | 小分類 |
文章理解 | 5問 | 現代文、英文 |
数的処理 | 9問 | 判断推理、数的処理、資料解釈、空間把握 |
社会事情 | 6問 | (いわゆる時事問題) |
✓ 教養試験は3ステップで効率よく対策する
①現在の得点力把握
・まず、自分で1年分の過去問を解いてみる
・自己採点してみて、安全圏(5割)にどれくらい足りないか確認する
②安全圏を目指して、得意を伸ばす&苦手を克服する
・ 自分にとって簡単な問題(分野)を1,2分で確実に得点する
・ 難しい、苦手な問題(分野)には4,5分で挑戦⇒無理なら「見切り」をつける
・問題数の多い「数的処理」(特に資料解釈)から対策する
・ 文系出身者は「文章理解」、理系出身者は「数的処理」を得点源にしやすい
・ 直前の1,2か月で集中して「社会事情」の対策をする
③本番を想定した”通し”の問題演習
・本番よりも5分短い100分で解く(5分余裕をもてるようにする)
・本番に近い環境で解く(家ではない場所で、鉛筆を使用する)
・わからない問題を「飛ばす練習」をする
以上です!
教養試験は、効率よく、確実に「足切り」を超えることが大切。
本稿の学習法を参考に、常に”タイパ”を意識して学習を進めて頂ければと思います。
くどいようですが、一次試験の合否を分けるのは「論文」です。
以下の記事も併せてお読み頂き、学習のヒントとされてください。
■【特別区経験者採用】サクッとわかる課題式論文の対策法 |
皆さんの頑張りを応援しています。
それではまた!