1.はじめに
公務員試験の教養試験で最重要科目とされているのが数的処理です。他方、苦手とする受験生も大変多いのがこの科目です。
長年指導をしてきて、数的処理が得意という人はあまりいた記憶がありせん。しかし、数的処理はどこを受験するにしても出題数が多く、全分野を捨てることはできないといえます。是非とも得意分野を1つでも多く作って本試験に臨むことが求められます。
これは、言い換えますと、得意「科目」にまで昇華する必要はなく、あくまで「この単元はできる」という部分を積み増していけば、公務員試験には十分に合格することができます。本記事では、その心構えの大切さや具体的に得意分野を増やす方法についてお話します。
したがって、苦手な人の対策法として参考にして欲しいと思います。
なお、数的処理とは通常「数的推理」「判断推理」「資料解釈」の3つを言いますが、対策の部分については、前者2つについて触れています。
資料解釈については「資料解釈で確実に得点するための戦略について徹底解説」を参考にしていただければと思います。
2.公務員試験における数的処理の出題数
まず、いかに数的処理が重要な科目なのかを確認しておきましょう。以下の出題数をみると、多い試験種(国家一般職・国家専門職)では約47%、少ないところ(地方上級関東型)では30%となっています。
国家総合職 16問/40問(院卒向けは、令和6年以降30問中14問になる予定)
国家一般職 14問/30問の予定(令和5年度実施分までは40問中16問)
国家専門職 14問/30問の予定(令和5年度実施分までは40問中16問)
裁判所一般職 17問/40問
地方上級(全国型) 17問/50問
地方上級(関東型) 12問/40問
東京都Ⅰ類B 16問/40問
特別区 19問/40問
公務員試験の教養試験は、その年の倍率や試験種、専門試験がある場合はその成績にもよりますが、63~65%程度を取っていれば合格ライン到達となることが多いです。したがって、仮に数的処理以外が80%ほど正答できるとしても、出題数の多い試験種では45%ほどの解答を、少ない試験種でも、30%ほどの解答をしなければなりません。
(計算根拠)
国家一般職…数的処理以外16問中80%正答(=12.8問)+数的処理14問中45%正答(=6.3問)
=19.1問が正解しているので、30問中でいうと正答率63.6%
地方上級関東型…数的処理以外28問中80%正答(=22.4問)+数的処理12問中30%正答(=3.6問)
=26問が正解しているので、40問中でいうと正答率65%
ただ、正直、数的処理以外の問題で80%正答は苦しいといえます。
そのため、数的処理を苦手としている人でも出題の少ないところで40%程度、多いところで55%程度になるくらいの正答率があると望ましいでしょう。
3.苦手な人は「頻出分野に集中」しよう
「2」の議論から、数的処理については、教養試験の合格ライン(63~65%)を下回る水準で構わないものの、ある程度の正答率(40~55%)は確保しないといけないことが分かります。
では、この正答率を得るためにはどうしたら良いでしょうか。
結論から述べますと、頻出分野を丁寧に学習することが重要です。
理由は、頻出分野+資料解釈だけで、苦手な人が目標とする40~55%に届きやすいからです。
なお、頻出分野については、過去記事「直前期!数的処理の得点を伸ばす学習方法3選~数的・判断頻出単元ベスト10付き~」にあります。
そして、資料解釈については、「資料解釈で確実に得点するための戦略について徹底解説」を参照ください。
さて、頻出分野が分かって、その箇所を公務員試験対策本で取り組むだけでは「集中=丁寧に学習した」ことになりません。なぜなら、公務員試験対策本には、数的処理の全単元が掲載されている本がほとんどだからです。換言すると、頻出分野の単元における演習量が十分ではないということです。もちろん、数的推理・判断推理・資料解釈と分冊化はされていますが、それでも足りないです。
数的処理あるいは数学に抵抗がない人は、その掲載されている問題量から新規性のある問題にも対応できる力を養えるでしょう。しかし、苦手な人はその対応力をつけるまでに、もっと多くの問題に触れないといけません。
とはいえ、ただやみくもに、複数の公務員試験対策本を買い沢山問題にあたればいいわけでもありません。
重要なのは、数的思考力が身につくように配列された教材を用いて学習することです。
具体例として、数的推理分野で出題数1位の「場合の数・確率」を取り上げましょう。この単元に取り組む際には、優しめの大学受験本などを用いて、きちんと「場合の数・確率」の考え方を思い出す(はじめて本格的に学習する人にとっては習得する)わけです。
優しめの大学受験本とは、例えば、沖田一希「数学I・Aをはじめからていねいに [場合の数と確率][データの分析][整数の性質]編」などです。大手予備校講師の講義調の本などを用いて、理解するわけですね。
当然、公務員試験の全単元をこのような学習していたら間に合わないでしょう。しかし、頻出単元だけを確実にものにし、数的処理を合格ライン到達の「足手まとい」にしないためには、大切にしたい戦略です。
こうした数的思考力が身につく教材を頻出単元分行った上で、公務員試験対策本のうちの過去問集(スーパー過去問など)に取り組みます。すると、この分野が完成されます。これを、数的推理と判断推理の頻出分野において多く行えば、資料解釈と組合せて求める得点ラインとなります。
4.苦手な人は「とにかく考える」ことを大事にしよう
「3」の対策方法は、数的推理のうちの「場合の数・確率」「数と計算」「約数・倍数」「方程式(速さ)」、判断推理のうちの「命題」「集合」、両科目にまたがる「平面図形(三角形含む)」「立体図形」などで使えるものです。なぜなら、中学校や高校の数学単元にあるからです。
対して、特に判断推理の頻出単元には、数学分野には存在しないものが多いです。例えば、「対応関係」「順序関係」「位置関係」などが挙げられます。
この分野はどうすればいいでしょうか。
実は、この分野は先に挙げたスーパー過去問などでも収録問題が大変多いです。そして、こうした分野には、覚えなければならない公式があるというわけでもありません。
したがって、いきなり問題集に取り組んでOKです。
ただ、このとき、重要な取り組み方があります。それは、いきなり解説などを読んで解き方を覚えるやり方を「しない」ということです。まずは、特段の公式がいらないわけなので、試行錯誤してみてくださいということです。
自分で考えて解いてみると、最初は1問20分かかるときもあると思います。それで良いのです。そうして時間をかけて取り組んだ後、じっくり解説を読みます。そこには、要領の良い解き方が載っていることでしょう。そのとき、「あぁ、なるほど、こう解くとスムーズなのか」と悔しい気持ちも混じった感じで納得すると思います。
その後(できれば次の日)に、今度は解説を思い出しながら要領の良い解き方で解いてみます。このように、「試行錯誤→要領の良い解き方」の習得をすると、いきなり要領の良い解き方に行くより、素早く考え解くコツが身につきやすくなります。
なぜなら、自分が問題に向き合った思考過程が何もないと、「自分がどう考えて遠回りしてしまったか」や「自分がどういう思考をしがちなのか」、「多少遠回りでも解ききるな経験」などが乏しいため、本試験でつまづくことが多くなるからです。
やはり、本試験は過去問を少しアレンジしてきますので、アレンジへの対応をする意味でも「考える」ことを大事にしましょう。
5.まとめ
本記事では、数的処理が苦手な人には、合格ラインと呼ばれる6割強を数的処理科目で取れなくても良いものの、4~5割強は取れるようにすることをまずお伝えしました。
その後、中学・高校の数学で扱う頻出単元については、その教材に立ち戻って(はじめての方は利用して)、きちんとその単元に相応しい思考力を身につけることを推奨しました。
最後に、扱われていない単元は、いきなり過去問をやって良いのですが、きちんと考えながら臨み、解説を有効活用することを述べました。
こうした学習を、頻出単元に対し丁寧に行いつつ、資料解釈をこつこつトレーニングすれば、必要とされる正答率を得られます。
参考にして、励んでみていただければ幸いです。
なお、「中学・高校の数学で扱う頻出単元については、その教材に立ち戻って(はじめての方は利用して)」の部分が、本の教材ではどうにも進まないという方には、個別指導という手もあります。究進塾ではこの手伝いができますので、悩まれている方は体験授業に一度ご参加ください。お待ちしています。